導入事例:学習院初等科 本物に触れることを大切にする伝統とICTをどう融合させていくか

新型コロナウイルスの影響により、急遽1人1台のタブレット導入を進め、わずか半年で実現させた学習院初等科。本物に触れることを大切にしている学校が、どのようにICT化を進めていったのか、事例を紹介します。

学習院初等科
導入事例

  • ICTを活用し 学校の精神に近づく『コラボレーション』を実現
    ICT を活用し
    学校の精神に近づく
    『コラボレーション』 を実現
    全員の意見を共有することで
    異なる視点を取り入れた
    協働学習を展開
  • 『本物に触れることを大切にする』ため アナログにデジタルの利点を効果的に取り入れる
    『本物に触れることを大切にする』 ため
    アナログに デジタルの利点 を効果的に取り入れる
    実験をノートにまとめるときに
    動画を撮影しておくことで
    体験したことをもう一度確認できる
  • 全員をフォローする体制を築き タブレットやアプリケーションの使い方を浸透
    全員をフォロー する体制を築き
    タブレットや アプリケーションの 使い方を浸透
    児童や教員がタブレットや
    アプリケーションを使いこなせるよう
    使い方を共有する体制を構築
導入サービス

学校プロフィール

学習院初等科

学習院初等科

https://www.gakushuin.ac.jp/prim/

東京都新宿区
私立 初等科 787名
(2021年12月31日時点)
1877年創立という長い歴史と伝統がある学習院。初等科では、18代安倍能成院長が教えてきた、自分の意見を正直に言うことを大事にし、お互いを敬い思いやる精神を表す言葉「自重互敬」を大切にしている。基礎基本を重視し、低学年から専科制を採用。2019年からは、海外の学校との交流をはじめるなど、伝統を自らの礎とし、国際社会に貢献できる人を育てることに力を注いでいる。

抱えていた課題を KDDI まとめてオフィスが解決

  • 双方向のオンライン授業ができる体制を早くとりたい

    短い準備期間でのタブレット導入をサポート

  • 学びに効果的なICTの使い方を見いだせていなかった

    意見の共有がしやすくなり、協働学習で効果を発揮した

  • 壊れた場合のトラブル対応が不安

    予備機を運用した修理交換プログラム安心

  • 児童たちにタブレットを安全に使わせたい

    インターネットフィルタリングサービスでブロック

豊富な導入事例があります。
まずは資料をお役立てください。​

導入と変化

ICTを活用し 学校の精神に近づく
『コラボレーション』を実現

授業風景
大澤隆之科長

大澤隆之科長

学習院初等科では、2022年度に1人1台のタブレットを導入する計画だったが、2020年の新型コロナウイルスの影響により急遽早めることとなった。2020年3月から約3カ月の臨時休校期間について大澤隆之科長は「本校はICT化がほとんどできていませんでした。そのため、時間をかけて授業用動画を作成し、配信することしかできませんでした」と当時を振り返る。再び起こり得る緊急事態に備え、2020年6月から双方向のオンライン授業ができるICT環境づくりをスタート。校外学習での利用や家庭のWi-Fi環境などを考慮し、セルラーモデルのタブレットにすることを決めた。しかし、大澤科長は「コロナによって計画より前倒しで導入することとなりましたが、ICTに対して何を求めていくかを模索していました」と話す。教育にICTを導入すると決断したものの、コロナ禍後の教育目的を絞り切れていなかったのだ。

課題となった教育目的を見出すことは、タブレット導入に向け本格的に動き始めると自ずと解決した。教員らがタブレットの使用体験を進めていたところ、授業支援アプリが持つ、意見を共有する機能の有効性に気付いた。クラス全員の意見を見ることができる共有機能を使うことで、今までにない活発な議論のコラボレーション(協働)が生まれると考えたのだ。大澤科長は「これまでの教育は、コミュニケーションが重要とされ、全員が同じ方向に向かっていく傾向だったと思います。しかし、これからはコラボレーションにより、自分の意見を堂々と述べ、相手が反対意見であっても謙虚に聞き、一緒によりよいものを創っていこうという姿勢が重要だと考えます」と話す。タブレットを使い児童がコラボレーションすることで、これまで以上の学びが期待でき、また、このコラボレーションは、学習院初等科の精神である『自重互敬』という言葉とも一致するものであった。こうして、教育にICTを導入する目的を『協働学習』と定め、2020年12月、5年生までにタブレットを配付した。

授業内で意見共有の時間を積極的に設けている金子範明教諭は「いい考えを持っているのに手を挙げなかった児童の意見を汲み取ることができるようになりました。意見がよかったとお互いに言えるようになり、児童の方から他の子の意見がいいから先生取り上げてくださいと、お願いされることもあります」と話す。従来は、クラス全員で意見を共有するためには10分以上掛かってしまうため、班ごとにノートを見合うことで留めていたという。タブレットを導入した現在は、ノートを写真に撮り、アプリケーションで共有するだけで、大型モニターや手元のタブレットで全員の意見を見ることができる。効率よくできるようになった分、コラボレーションする機会が増加している。

双方向のオンライン授業はもちろんだが、授業以外での使い方も生まれている。5・6年生が月に1時間行っている委員会活動のひとつである国際委員会は、児童が海外を訪問する計画がコロナ禍により延期となり、オーストラリアの小学校とオンラインで交流をすることになった。担当する永山淳一教諭は「最初は授業で使う想定で導入したタブレットでしたが、オーストラリアの学校とのオンライン交流を準備する中で、タブレットが有効活用できると気がつき、使っていく中でよさを実感しました」と話す。オンライン交流までの準備期間が短く、児童を集めて活動することができなかったが、授業支援アプリのロイロノート・スクール上で準備ができたという。日本語と英語の台本作成や日本に関連するクイズを作る時には、児童が作成したファイルを教員が添削し、英語の発音チェックは、児童が声を録音したファイルを送り英語の教員が添削していった。タブレット上での準備が順調に進み、オーストラリアの小学生に折り紙で兜の折り方を教えることや、日本の食べ物についてクイズ形式で伝え、交流することができた。困難な状況下でも、海外との交流というコラボレーションができ、学習院初等科が注力している国際社会に貢献できる人を育てる活動の一助となった。

授業風景
授業風景

国際委員会が行ったオーストラリアの小学校とのオンライン交流(学習院初等科提供)

『本物に触れることを大切にする』ため
アナログにデジタルの利点を効果的に取り入れる

授業風景

タブレットを導入したものの、初等科では、すべてをICTにシフトする訳ではない。本物に触れることを大切にする方針のもと、紙に文字を書き、植物の観察は写真だけではなく絵を描くことを続け、その文字や絵をタブレットで写真に撮り、ICTを活用している。大澤科長は「ICT化によって文字が下手になることや、観察力が育たないという弊害が出てくる可能性があります。失われるものをしっかり見つめ、どのようにバランスをとっていくかが大事だと思っています」と話す。

理科の授業では、実験の様子をカメラで記録しているが、この撮影した写真や動画は、実験後にノートにまとめるための記録として使われている。理科を教える麥島雄太教諭は「写真や動画を見返すことで、体験したことをもう一度確認でき、実験中に気づけなかった細かいところまで改めて見ることができるのがいいところです」と話す。本物の実験で発見することは、その場でしかできないことだったが、写真や動画で新たなことを発見する可能性が広がり、さらに理論を学んだあとに見返すことで充実した復習を促すことにもつながっていく。

授業風景

さらに、理科では、教員が選んだ便利なアプリケーションを活用している。目に見えない元素を拡大して見える化できるようなアプリケーションや、天候が悪くても星座の位置がわかるアプリケーションなど、実際に見ることができないものが補完できるようになった。また、今後、校外学習で山に行く際には、実際に見つけた植物を高画質な植物図鑑アプリで調べ、その場で見るだけでは分からないような情報を補完することで、より理解を深めることができるのではないかと期待している。

そして、残したデータの活用が簡単で便利なのもデジタル化の利点だ。授業支援アプリは、過去のデータがクラウド上に保存されるため、振り返りが手軽にできる。教員が、黒板を写真に残しておき、次回の授業の最初に、前回の黒板写真をモニターに映して振り返る。こうすることで、前回の授業からのつながりがスムーズになる。また、欠席者のフォローが簡単にできるようになった。教員が、黒板の写真と資料とともに授業で教えた内容を伝えるメモをつけ、欠席した児童にロイロノート・スクールで送る。次回の授業までに内容を確認できるため、児童が授業に復帰しやすい環境を作ることができるようになった。

欠席者のフォロー イメージ図

全員をフォローする体制を築き
タブレットやアプリケーションの使い方を浸透

授業風景
授業風景

コロナ禍でタブレットの導入が急遽早まり、十分な準備期間を確保できなかった学習院初等科だが、導入前から教員がしっかり使えるよう研修を行ってきた。導入に尽力した電算機部のメンバーらが授業支援アプリの会社などの講習を受け、そこで覚えたことを他の教員に広めることで基本的な使い方を共有した。導入後について大澤科長は「こちらが期待した以上に、個々の教員が工夫していろいろなことができています。その工夫を共有できるよう定期的に研修を行っているところです」と話す。教員が学年や教科ごとに集まる会や、学期に1回開かれる全教員が参加する情報交換会を使い、タブレットの効果的な使い方を全体で共有している。

また、電算機部員が中心となり、オンライン授業に向けた講習会の開催、Webカメラや三脚などの備品の準備、各種マニュアルの作成・配付を行った。その結果、2021年9月と2022年2月に、全教員が1人でオンライン授業を実施することができた。オンライン授業期間中は、授業を担当していない教員が、接続できないなど、保護者からの電話に対応するだけでなく、何かトラブルがあればフォローに入れるようにした。このように、学校全体でオンライン授業を行う体制を築いたことで、全教員が安心してオンライン授業を行うことができた。

同様に、児童のためにも、主に情報の授業を活用しタブレットやアプリケーションの使い方を教えている。情報科主任の安藤諭教諭は「情報の授業では、まずタブレットやアプリケーションの使い方という基本を教え、それが他教科で活用できるようにプラットフォームづくりをしています」と話す。3・4年生の「情報」、および5・6年生の「総合」の授業では、アプリケーションの使用方法や、インターネット上でのルールやモラルなどを教えている。取材した日、4年生の情報の授業では、使い始めたばかりの授業支援アプリMetaMoJi ClassRoomの共同編集を使い、1枚のシートにクラス全員で記入しながら、使い方を学んでいた。また、情報の授業がない1・2年生には、情報科の教員が生活科などの授業に必要に応じて参加し、児童や担任教員をフォローしている。安藤教諭は「担任の先生だけで指導できるものもあれば、情報科の教員が見て、自分だけでなく他の人の安全を守るためにきちんと指導しなければならないものもあります」と話す。情報科の教員が、適切な使い方を児童に浸透させ、他の授業でよりよい学びにつなげてもらうことを期待している。

そして、学校としてICTとの向き合い方を話し合うため、2021年にICT活用研究会が立ち上げられた。大澤科長は「技術も進歩し、いろいろなことができるようになっていく中で、我々は常にこれで本当によいのかと考え、修正しながら進んでいきたいと思います」と話す。ICTを有効に安全にどこまで活用していくのか、学習院初等科として相応しいバランスを検討する体制を整え、最良の教育を目指している。

ご担当者様の声

学習院初等科 電算機部のみなさま

学習院初等科 電算機部のみなさま

安心感やサポートの手厚さを感じた

契約前でしたが、授業支援アプリの体験会の際にタブレットを貸与していただき、使い方がわからない教員に対して、スタッフの方々が丁寧に教えてくれるなどのサポートまでしていただきました。営業の方々の誠実で迅速な対応によって、導入後を見据えた運用時の安心感やサポートの手厚さを感じることができました。予備機の準備がある修理交換プログラムやインターネットフィルタリングソフトなど、小学生でも安心して利用できるサービスがあるという点や、短い準備期間でもしっかり導入をサポートいただける点などから、学校全体ですぐにでも一斉スタートができるというイメージが湧きました。

導入した後も、定期的に学校にいらしていただき、現状困っていることや、今後ICTをよりよく活用していくための方法などを日々相談しています。また、急なトラブルが起こった場合にもすぐに対応してくださり、大変助かっています。

KDDI KDDI まとめてオフィス株式会社 学習院初等科電算機部のみなさまとKDDI まとめてオフィスのメンバー

KDDI まとめてオフィス株式会社

学習院初等科電算機部のみなさまとKDDI まとめてオフィスのメンバー

導入に向けたお打ち合わせ時には、常に電算機部のみなさま一人ひとりが主体となり、ICTの教育目的、ICTの役割、ICTでの創造、ICTのリスクなど、数多くの課題やテーマに対する熱い思いが伝わってきました。パートナー企業としての私たちの声に常に耳を傾けていただき、一緒に新しいものを『共創』している実感に楽しささえ覚えていました。その時が、まさに『自重互敬』の実践だったのだと、後にこのお言葉を知り、心の底から感動を覚えました。大きく変化し続ける社会環境下で、学習院初等科様にとって重要なパートナー企業となれるよう、全力でご支援させていただきます。

豊富な導入事例があります。
まずは資料をお役立てください。​

まとめ

  • 双方向のオンライン授業をするため1人1台のタブレット導入をわずか半年で進めた
  • 意見の共有を使って協働学習を促し多様な考えの中から解決策を導き出す
  • 電算機部・情報科の教員が中心となって学校全体をフォローし使い方などが浸透
  • 小学生にも安心な修理交換プログラムフィルタリングソフトがある