建築家が考える、これからのオフィスvol.1
オフィスづくりに外せない"3つのポイント"とは?
いま、ICT技術の進歩や価値観の変化などにより、世の中が大きく変わろうとしています。少子高齢化で働き手が減少し、働き方も多様化が求められている中、自らの魅力をアピールできていない会社では採用が難航しているケースも少なくありません。
そこで注目を集めるようになったのが、オフィス環境の改革。しかし一方では「オフィスを変えるだけで本当に働き方が変わるのか?」という意見もよく耳にします。そこで今回は、空間づくりのプロフェッショナルであり、最先端のオフィス空間デザインを手掛ける建築家に、これからのオフィス環境のあるべき姿について伺いました。そのポイントを全5回にわたってお届けします。
成瀬・猪熊建築設計事務所の建築家:成瀬友梨氏(右)と猪熊純氏(左)
目次
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オフィスをはじめ多種多様な空間を手掛けてきた、2人の建築家
今回お話を伺ったのは、 建築家の成瀬友梨氏と猪熊純氏。お2人とも成瀬・猪熊建築設計事務所にて、住宅やオフィス・シェアハウス・コワーキングスペース※ ・コミュニティカフェ・イノベーションセンター・子育て支援施設・公共施設・観光施設・ホテル・アートプロジェクトなど、さまざまな領域で人びとの新しい生活の場・活動の場のデザインを手掛けてきています。
※ コワーキングスペース(Coworking Space)...事務所スペース・打ち合わせスペースなどを共有しながら、独立した仕事を行うオフィス形態をとるスペース。
建築家は、空間が人に及ぼす影響力を熟知し、そこに住まう人・集う人・働く人にとって最適な環境を創り出すプロフェッショナル。オフィスにおいても、単に「デスクを〇個増やしたい」という画一的なニーズを満たすだけでなく、働き方や社員のマインド・モチベーションを変えたいと考える企業のオフィスデザインを数々手掛けてきた彼らの目線から『理想のオフィス』とは一体どのようなものなのか、環境を変えることでどんなメリットが生まれるのかを語っていただきました。
オフィスデザインの依頼は、ここ5年ほどで急増
――これまで複数のオフィスデザインを手掛けているお2人ですが、時代とともにオフィスが変わってきた実感はありますか?
猪熊純氏(以下、猪熊)
それはありますね。依頼の件数自体も、ここ5年ほどで急増している実感があります。かつては、ディベロッパーが事業を行うためにシェアオフィスやコワーキングスペースをつくるケースが目立っていましたが、現在は「自社のオフィスを変えたい」という意向が増えています。
成瀬友梨氏(以下、成瀬)
また、昨今はFacebook本社やGoogle本社などのオフィスがメディアにしばしば登場するようになりましたよね。それらを見て「こんなオフィスもアリなんだ」「自分たちもこのような環境で働きたい」という気運が高まったことも一因かもしれません。
――社会の移り変わりも、オフィスの在り方に影響を及ぼしている?
成瀬
近年ですと、少子高齢化などの影響もあって人材を確保することが難しいとのことで、「今よりもっと、多様な働き方ができるようなオフィスにしたい」「社員の定着率の向上やリクルーティングなどにつながるようにしたい」といった具体的な要望で依頼をいただくこともあります。
また、イノベーションの創出を経営課題として掲げ、その一環としてオフィスデザインを一新したいといった依頼もあります。コミュニケーションが活性化し、多くの人が交流し、さまざまな意見が交わされる空間を設けることで、新たな創造性が育まれるようにしたい、という意向ですね。
――そうした課題は環境を変えることによって解決しうるものでしょうか?
猪瀬
その可能性は大いにあると感じますね。建築もまた、かつての高度成長期には"量産"が最大の目的でした。それが、社会が成熟するにつれてニーズが変わってきた。コミュニケーションとイノベーションがビジネスチャンスをつくる時代において、新しいオフィスを求める動きもその一環です。その中で私たちは『シェアする場をつくること』をコンセプトとして掲げてデザインしています。オフィスもまた、社内外の複数の人間が集い、それぞれの知識やスキル、業務をシェアする場であるという前提のもと、クライアントと一緒になってオフィスづくりをしていますね。
オフィス改善で押さえておくべき3つのポイント
――オフィス改善のご依頼を受ける際に、建築家として気を付けている点はありますか?
猪熊
まずは『洗練されたオフィス』というフォーマットを、ただ判で押したように当てはめてしまっていいものだろうか、という想いがありますね。『洗練されたオフィス』は当然ながら好まれやすいですが、複数の人が集う空間である以上、『洗練』の捉え方も人それぞれです。業種や職種に即した機能性などをしっかり踏まえたデザインにしないといけないなと感じています。
成瀬
これまでさまざまな案件に関わる中で感じるのは、実際に話を聞き、要望を掘り下げてみると、企業や団体によって求めるものがかなり異なってくるな、ということでもあります。単に「社員が増えるから」といったきっかけであっても、よくよく伺ってみると『業務効率化』や『社員のモチベーション向上』など、さまざまな課題が浮き彫りになることも少なくありません。
――ではオフィスを変える際、企業はどのようなポイントを押さえておくべきですか?
成瀬
働く社員、ひいては会社にとって価値のあるオフィスづくりをするために大切になってくるのは、まず『オフィスの目的を定めて、そのために必要な手段(機能)を具体化すること』です。言い換えると、目指すオフィスをどうやって具体化していくか、ということになります。
利用者である社員と作り手がそれを共有することがとても大事です。ゴールがばらついてしまうと上手くいかないのは、建築に関わらずどのプロジェクトでも同じですね。デザインをアウトプットするのは、この作業の後の段階であることが理想だと考えています。
猪熊
そのうえで、『環境的多様性が確保できて、使いやすいものになるかどうか』を考えていくこと。環境的多様性とは、端的に言うとさまざまな質の空間があるということです。一般的な住宅に置き換えると、くつろげるリビングや一人の時間を過ごせる書斎、使い勝手の良い水回り、さらには子ども部屋など、意味合いが異なる空間がいくつもありますよね。一方でオフィスは『働く空間』にほかならないのですが、働くにしても皆と意見を出し合ったり、黙々と集中したり、あるいはリフレッシュするために休憩するなど、その時々によって行動は異なってきます。
成瀬
今までのオフィスは、フラットでオープンで綺麗。いわば監視の空間です。少なくとも空間構造においては、個々の自発性や互いのコミュニケーションというよりは、社の方針を効率良くリスクなく遂行することが求められているように思います。フラットでオープンで綺麗という形容詞のレベルでは、精密なプロダクトを量産する工場と似ているようにも思います。
しかし、実際にいま求められている社員の動きは、自発的に動き、アイディアを出し、成果につなげるスピードです。個人が自由に環境やコミュニケーションを選べる多様性が、空間には求められると思います。
業種によって具体的なデザインはさまざまでありますが、それぞれの行動に適した空間があることで、居心地や効率が改善すると考えています。
――ありがとうございます。『目指すオフィス(目的・機能)の具体化』と『環境的多様性と使いやすさ』のほかに、ポイントはありますか?
猪熊
今の話とも関連しますが、そこで働く社員や来社する取引先の『マインド』を動かすものになっているか、という観点もポイントのひとつです。社員の方々からすると、居心地がよいとか愛着が湧くという気持ちになることは"モチベーション向上"にもなるかもしれません。来社される取引先の方々にとっては、オフィスの在り方によって"企業イメージの向上"に繋がります。
とても単純ですが、社員が会社を好きになる気持ちを、オフィスデザインが少しでも後押しできるのならば、素敵なことですね。
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