デジタルトランスフォーメーションはなぜDXと略される?DXの意義や具体的事例まで紹介
デジタルトランスフォーメーションという言葉が注目を集めています。言葉を聞いたことはあっても、なぜ注目されているのか、なぜ「DX」と略すのかは分からないという人もいるのではないでしょうか。この記事では、そのような人に向けてデジタルトランスフォーメーションに関する疑問を解消していきます。
目次
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デジタルトランスフォーメーションはなぜDXと略されるのか?
デジタルトランスフォーメーションがなぜDXと略されるのかについて解説します。
DXはDigital Transformationの略
デジタルトランスフォーメーションは、「DX」と略して使用されています。デジタルトランスフォーメーションを英語で表すと「Digital Transformation」です。「Transformation」は「X-formation」と表記されるため、頭文字を取ってDXと略されるようになりました。
「Transformation」が「X-formation」と表記される理由は、「Trans」という言葉の由来にあります。この単語はラテン語の「trans」が由来で、「変える」や「超える」といった意味を持ちます。この場合の「trans」は、「cross」という言葉と同義です。「交差する」という意味の「cross」は省略して「X」と書かれ、同じ意味の「trans」も「X」で代用されるようになりました。
DTとは略さない
「Digital Transformation」の頭文字を単純に並べるとDTになります。「ならデジタルトランスフォーメーションはDTと略すのでは」と思う人もいるかと思いますが、デジタルトランスフォーメーションをDTとは略しません。デジタルトランスフォーメーションをDTと表現しても、意味が通じない可能性が高いため、注意してください。
なぜ今デジタルトランスフォーメーション(DX)は注目されているのか?
ここでは、近年デジタルトランスフォーメーションが注目されている理由について解説します。
2018年経済産業省より定義される
2018年、経済産業省が日本企業においてもデジタルトランスフォーメーションを進めるべきであるとして、「DX推進ガイドライン」を公開しました。その後、有識者の検討会を経て、「デジタルガバナンス・コード」と「DX推進ガイドライン」の両者を統合することが利用者視点から望ましいとして「デジタルガバナンス・コード2.0」と改め、令和4年9月に公表されました。この中で、DXは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義し、推奨しています。
このように経済産業省が推進を提言したため、国内でもデジタルトランスフォーメーションに対する注目度が高まりました。
※参考:デジタルガバナンス・コード2.0
企業は2025年の崖に備えなければならない
「DX推進ガイドライン」と同年に経済産業省が公表したレポートの中で、「2025年の崖」という問題が提起されています。2025年の崖とは、日本企業のシステムが抱える課題によって2025年以降に大きな経済損失が起きる可能性がある問題のことです。
日本企業のシステムは、部門ごとに独立したシステムが構築され、複雑なカスタマイズを重ねている傾向にあります。既存システムがブラックボックス化し、維持だけでコストがかさんでいる状況です。また、複雑な既存システムを保守運用できる人材の不足も懸念されており、経済産業省はこれらを解消するためにデジタルトランスフォーメーションを推進するべきであるとしています。
2025年の崖対策としてデジタルトランスフォーメーションを推進する企業が増える一方で、推進しない企業は競争力を失うのではないかと予想されています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)はなぜIT化と混同されるのか?
デジタルトランスフォーメーションはIT化と意味が混同されがちです。IT化は業務にIT技術を取り入れるため、一見するとデジタルトランスフォーメーションと同じだと感じるかもしれません。しかし、両者は大きく異なります。
IT化とはIT技術を取り入れるというだけの意味です。一方、デジタルトランスフォーメーションは「ITによって業務や生活を改革する」という意味を持っています。
デジタルトランスフォーメーションは、もともと「IT技術の進化によって人々の生活がよりよく変化する」という考え方として提唱されました。IT化を行っても生活により良い影響を与えなければ、デジタルトランスフォーメーションとはいえません。私生活まで向上させることを目指すのがデジタルトランスフォーメーションといえます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)における課題とは?
デジタルトランスフォーメーションを推進するうえで発生しうる課題について解説します。
高額な既存システムの維持費
日本企業において、IT関連費用の80%は既存システムの維持管理に使われています。2025年の崖として問題提起されているように、日本企業の既存システムは複雑にカスタマイズされ、維持費が高額です。そのため、新たなシステムの導入を先延ばしにして既存システムを使い続けた場合、長期的にみてかなりのコストがかかります。
デジタルトランスフォーメーションを推進するうえで、クラウドサービスやAIなどの新たな技術の導入は不可欠です。大きな改革を目指すほど初期費用は高額となるため、既存システムの維持費にかかるコストは、デジタルトランスフォーメーションの足かせとなっています。
※参考:経済産業省|デジタルトランスフォーメーションに向けた課題の検討
人材不足
日本では、IT人材の不足が深刻な問題となっています。少子高齢化による労働人口の減少などによって、2030年には需要の半分ほどしかIT人材が確保できなくなるという予測まで出ています。デジタルトランスフォーメーションを推進できる技術者が確保できない点は大きな課題でしょう。
また、既存システムを管理できる人材が高齢化しているという問題もあります。既存システムを使い続けていると担当者の高齢化によって保守運用を続けるのが難しくなるなどの問題が発生する可能性もあります。
日本文化がデジタルトランスフォーメーションにあわない
最新のIT技術を取り入れて業務を改革していくデジタルトランスフォーメーションは、日本文化にあわず、思ったように推進できないという課題もあります。例えば、実際に紙面に判を押して承認するはんこ文化が根付いています。本音と建前が違い、相手に遠慮をしてしまい物事がスピーディに進みにくいという点もあるでしょう。
また、勤勉で完璧主義な国民性は、少しでも懸念点があると導入に抵抗感を持ってしまい、新しい技術をすぐに受け入れにくいという側面もあります。このような日本独特の文化がある企業は、新しいことに挑戦しにくいかもしれません。
社内にデジタルトランスフォーメーションに対応できる人材がいない
デジタルトランスフォーメーションに関するツールの導入や運用は、ベンダーに頼り切りである企業も多いでしょう。また、ベンダー側も依頼されたままツールを提供するため、データ活用などに関するノウハウは企業側に伝えない場合も多いです。
デジタルトランスフォーメーションを成功させるためには、それぞれの企業の目的にあったIT技術を取り入れ、社員がそれを使いこなす必要があります。しかし、ベンダーに頼り切っていては、社員がIT技術について勉強する機会を得られず、デジタルトランスフォーメーションに対応できる人材が育ちにくいでしょう。
デジタルトランスフォーメーションの具体的事例
先述のような課題を乗り越え、デジタルトランスフォーメーションを推進している企業もあります。ここでは、デジタルトランスフォーメーションを成功させた企業について解説します。
株式会社三菱ケミカルホールディングス
株式会社三菱ケミカルホールディングスは、早期からデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいました。まず、同社では取り組みを進めるうえで、高い技術や知見を持つ精鋭を集めています。科学技術やビジネスサービスなど、IT分野だけでなく幅広い人材で構成された「デジタルトランスフォーメーショングループ」の発足が成功に大きく貢献しました。
専門家のアドバイスによって社内は大きく変わり、経営判断にAIを活用し、データの収集や分析にも活用されています。デジタルトランスフォーメーションの成果は社内に変化をもたらしただけでなく、業界そのものまで変えるほどの取り組みとなっています。
住友生命保険相互会社
住友生命保険相互会社では、デジタルトランスフォーメーションによって健康増進型保険を開発しました。健康な行動をすると保険料が安くなるという仕組みで、顧客のスマーフォンとリンクして料金設定を行います。この商品を開発するにあたり、人材発掘に力を入れ、デジタルトランスフォーメーション推進に適した人材を選出し、研修プログラムなどを行いました。
同社では、会社視点ではなく社会を意識した改革を行ってきました。社内の業務を効率化するだけでなく、顧客がどう感じるかを意識してデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいます。顧客の生活を向上させる保険商品の開発は、「ITが人々の生活をよりよくする」というデジタルトランスフォーメーションの本来の意味にも通じています。
まとめ
デジタルトランスフォーメーションはビジネスモデルを変革し社会を変えるものとして、国内でも注目されるようになりました。取り組む際の課題はありますが、進化していく社会に対応するためには積極的にデジタルトランスフォーメーションの推進が必要でしょう。
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