光熱費や通信費などの費用は、在宅勤務においても発生します。在宅勤務中に自宅で発生する費用は、私用分との線引きが難しいからと曖昧にしておくと、後々トラブルの原因になる可能性もあるため、注意が必要です。在宅勤務の諸経費の支払いには、企業独自のやり方で実施している場合があります。
この記事では、諸経費の支給の仕方と具体例を紹介していきます。在宅勤務の諸経費に関するルール作りに役立てください。
目次
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在宅勤務によって新たに発生する費用とは?
在宅勤務では、具体的にどのような費用が発生するのでしょうか。以下で解説をしていきます。
パソコン(PC)等の情報通信機器の費用
PCやスマートフォン、プリンタなど、業務で使用する情報通信機器を用意するための費用です。個人の所有の有無にかかわらず、会社が機器を支給する形で負担している場合があります。
ITツールの導入費
仕事環境が管理されている会社とは違い、在宅勤務では仕事環境にばらつきが出てきます。ITツールを導入することで仕事環整え、仕事の効率化を図ることが可能です。例をいくつかあげましょう。
たとえば、セキュリティリスクに対するツールです。情報漏洩やウイルス感染など、PCやスマホのセキュリティ対策ができるものがあります。
また、在宅勤務中のコミュニケーションをサポートするツールもあり、ビジネスチャットや社内SNS、ビデオ会議など、遠隔地同士でもスムーズにやりとりができます。社外から会社のデータやアプリにアクセスすることができる、リモートアクセスツールというものもあります。
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通信費
自宅にインターネット環境を新たに設置する必要があれば、回線の開通の工事費や契約手数料、ルーター代等が、また、回線工事をしない場合でも、モバイルWi-Fiルーターの機器代や契約料などの初期費用が発生します。そのほかに、インターネットの基本料金や利用料、携帯電話料金などが通信費として発生します。
通信環境を整えてしまえば、業務外のプラベートでも使うことができるので、通信費は私用分との線引きが難しいものです。
消耗品や配送にかかる費用
ペンやノート、ファイルなどの消耗品や、切手、レターパックなどの配送に関わる費用があります。一つひとつの値段が少額で細々としたものが多いため、在宅では個人で購入する傾向があります。しかし、会社での業務時に、消耗品も配送にかかる費用も会社が負担をしていたのであれば、在宅で働く時も会社が負担するべきものです。
光熱費
業務中に使用する、照明やPC、冷暖房などの電気代や、暖房や給湯にかかるガス代、冬のストーブなどの灯油代、トイレや飲用の水道代といった光熱費です。
これらは私生活との切り分けが難しいものですが、業務日数分の光熱費の半分を会社が負担したり、負担分として一定の金額を支給する形をとったり、社員の全負担にならないよう考えるべき費用です。
在宅勤務で発生する諸費用は誰が負担する?
光熱費や通信費など、在宅勤務で発生する費用は、業務分と私用分を明確に線引きするのが難しいものです。しかし、在宅勤務で発生する費用は経費として、会社が適切に負担するルールを作る必要があります。
ルール作りの必要性については、労働基準法第89条第1項第5号で記載があり、従業員が10人以上の企業は、労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合、その負担に関して就業規則で定めるよう述べられています。
さらに、就業規則の変更をする際は、労働契約法第9条で、労働者に不利益になる内容へ変更してはいけないと記述があります。
在宅勤務中に発生する費用について、どこまでの範囲をどのくらいの割合で会社負担にするのかは、各企業に委ねられていますが、上記の法律に注意をして、適切に在宅勤務分の費用を負担する方法を考える必要があります。そして、就業規則を新たに規定する、または労働条件通知書で改めて社員に通知する必要があります。
在宅勤務の諸経費の会社の負担方法は?
会社が、在宅勤務で発生する諸経費を負担する方法として、以下で解説をしていきます。
現物での支給
在宅勤務手当として、業務に必要となるものを現物で支給する場合があります。たとえば、ビデオ会議で必要となるマイクやウェブカメラなどを会社でまとめて購入して現物を支給する方法や、メーカーのカタログを渡して、必要なオフィス用品を社員各自に選ばせて、自宅に届くように手配するといった方法です。
現金での支給
在宅勤務手当として、現金で支給する方法もあります。やり方の例としては、月ごとに一律の金額を決めて支給する方法や、業務時間や日数などで按分して、実費を支給する方法などがあります。
在宅業務でかかる光熱費や通信費などの経費については、国税庁が、給与課税対象外にすると発表をし、光熱費、通信費等の業務中の使用分を計算する方法も定めました。在宅業務における経費の払い出しルールや目安が少しずつ作られてきています。
在宅勤務手当を導入している事例
在宅勤務手当を実際に導入している企業は、どのように運用しているのでしょうか。以下で紹介していきます。
現物支給の具体例
現物支給をしている企業3社の例を紹介します。
・株式会社grasys
コロナウイルスの感染者が、日本で初めて確認されてからまだ間もない2020年2月に、在宅勤務中の従業員に非常食を手配しました。さらに同年4月には全社員に、10万円の現金支給も行いました。
・note株式会社
希望者にオフィス用の椅子を自宅へ配送する形で支給しました。現金支給もしていて、正社員・契約社員に毎月1万円、アルバイトに毎月5千円の手当てを出しています。
・株式会社アジャイルウェア
在宅業務中の環境を整えるユニークなサポートを複数実施しています。現物支給としては、自宅用のサブディスプレイを配送支給しました。
また、社員の運動不足解消の目的で、スマートバンドを支給しました。運動量を測定でき、目標数値達成に応じてさらに手当てを支給しています。
さらに、リモートワーク環境改善手当として2万円の支給や、業務中のお菓子・飲み物代として1日200円の補助など、多様な現金支給も実施しています。
現金支給の具体例
現金支給をしている企業の例を4社紹介します。
・株式会社メルカリ
自宅での業務環境の整備や、オンラインでのコミュニケーション促進等のために、6カ月分の費用として、6万円のテレワーク手当を支給しました。
・株式会社カオナビ
机や椅子などをそろえるなどして、在宅勤務環境を各自で整えるのを主な目的として、「在宅勤務支援金」として、社員全員に一括で5万円を支給しました。
・さくらインターネット株式会社
自宅に在宅業務ができる環境を導入するための補助として、臨時手当1万円と通信費手当て3,000円を支給しました。
・株式会社サイバー・バズ
在宅業務で減りがちな社員同士のコミュニケーションの活性化を目的に、期間限定で、オンライン飲み会手当として月5,000円を支給しました。
在宅勤務における諸経費の払い出しをスムーズにするには
在宅勤務の諸経費の支払いの方針を、会社と従業員との間でわかりやすくし、スムーズに実施するための方法を紹介していきます。
在宅勤務の諸経費に関するルールを決める
在宅業務を実施するにあたっては、在宅勤務に関する費用をどこまで経費と認めるのか、その諸経費を、会社と従業員でどのように按分するのかといったルールを決め、就業規則や、労働条件通知書等で定めることが、推奨されています。
厚生労働省の公表している、テレワークにおける労務管理の留意点を示した「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」では、在宅業務に関する費用の扱いについて、以下のようにルールを決めることを勧めています。
「テレワークを行うことによって生じる費用については、通常の勤務と異なり、テレワークを行う労働者がその負担を負うことがあり得ることから、以下の事項については、あらかじめ労使で十分に話し合い、就業規則等において定めておくことが望ましい」
出典:テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン|厚生労働省
在宅勤務の諸経費を支給する
在宅勤務の諸経費の負担に関して、就業規則等でルールを定めたら、現物や現金といった補助の支給を実施しましょう。諸経費の払い出しには、業務に必要なものを物品で支給する現物支給や、現金で支給する方法があります。
現金で支払う場合は、在宅勤務手当として一定の金額を毎月支払う、在宅業務の環境を整えるための一時金を支払う、かかった費用を実費計算してその分を支払うといった方法が取れます。
業務で使うものを切り分ける
在宅業務での費用は業務用と私用の切り分けが難しく、諸経費の支払いにも頭を悩ませられますが、業務用と私用で切り離して精算できるものもあります。
たとえば、携帯電話は会社から支給し、業務中はこれを使用してもらうことで、費用をプライベート分と完全に切り分けることができます。出来る限り業務分と使用分とで切り分けるようにしましょう。
経費精算システムを導入する
経費精算システムを導入することで、在宅勤務の経費清算をスムーズに行うことが可能です。
紙の領収書やハンコが必要になる経費精算の場合、そのためだけに出社が必要です。また、会社でまとめて購入して、備品としていつでも従業員が使えるようにしてあったものは、在宅業務によって、それぞれが立替で購入すると精算処理が増えてしまいます。
そこで、紙ベースではなく、オンラインで経費精算をできるようなシステムを導入することで、領収書を画像データとして扱うことが可能です。領収書を提出するのも、精算処理をするのも、出社せずに処理が可能です。
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まとめ
在宅勤務中に発生する費用は、私用分との線引きが難しいですが、曖昧なままにしているとトラブルの原因にもなります。どこまで経費として会社が負担するか、ルールを決めて業務用の経費を切り分けることが必要です。また、オンラインで処理できる経費精算システムを取りいれ、在宅業務の諸経費の払い出しをスムーズに実施していきましょう。
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※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。