近年、サスティナビリティ・SDGsなどの言葉を、よく耳にするようになりました。サスティナビリティに取り組む企業が増えています。この記事では、自社でサスティナビリティの取り組みを検討している人に向けて、サスティナビリティの意味、普及の背景、測定方法などについて解説しています。企業の取り組み事例も紹介しているので、サスティナビリティに配慮した経営の実現に役立ててください。
目次
サスティナビリティとは?
サスティナビリティは、「持続可能性」を意味する言葉です。企業と環境・社会との関係が見直されるようになり、活動の一環として、サスティナビリティに取り組む企業が増えています。サスティナビリティの概念が広まり始めたのは、1992年にリオデジャネイロで開催された、地球サミットからです。持続可能な開発・発展を目指し、地球の未来を守るための概念といえます。
サスティナビリティの意味
サスティナビリティは、自然や社会に対して広く当てはまる概念ですが、特に環境・社会・経済という3つの観点から考えられることが多いです。国際的な取り決めとなった「SDGs」は、サスティナビリティの概念に基づいています。
企業のサスティナビリティでは、事業活動において環境・社会・経済に与える影響を考慮することが重要視されます。企業は利益を追い求めるだけではなく、世の中全体のことを長期的な視点で考え、事業活動を行うべきであるという考え方です。
CSRとの違い
サスティナビリティに関連してよく使われる言葉として、CSRがあります。CSRは「Corporation Social Responsibility」の頭文字を取ったもので、「企業の社会的責任」という意味があります。企業は利益だけを求めるのではなく、社会や消費者への責任を負うべきであるとするもので、法令順守や環境に配慮した商品の提供などが求められます。
CSRとサスティナビリティの違いは、CSRが企業を主体とした考え方であるのに対して、サスティナビリティは社会全体で取り組むべき問題であるという点です。
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サスティナビリティとSDGsの関係
サスティナビリティと同様に、よく耳にするようになったのがSDGsで、根底にサスティナビリティの考え方があります。ここでは、SDGsについて詳しく解説します。
SDGsとは何か
SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の頭文字を取ったものです。「持続可能な開発目標」と訳され、よりよい地球環境や国際社会を長く続けるための、ゴールやターゲットを定めた国際的な取り決めです。2015年の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年の15年間で達成するための目標として、17のゴールと169のターゲットで構成されています。
先進国や発展途上国といった区別なく取り組むべきであるとされており、日本でも取り組みが進められています。人間だけでなく地球上の生物すべてが対象で、「誰一人として取り残さない」という誓約です。貧困や飢餓の終息、ジェンダーの平等などの社会に関する課題から、クリーンなエネルギー利用、気候変動に対する緊急対策などの環境問題まで、あらゆる分野での目標が設定されています。
SDGsに取り組む意義
企業がSDGsに取り組むことは、CSR活動としても意義があることです。SDGsに関する取り組みを一切行わないでいると、世界規模で取り組むべき課題に対して関心のない企業であるというマイナスの企業イメージになる恐れがあります。
SDGsに取り組み、社会的責任を果たすことで、ステークホルダー(株主、顧客、取引先など)からの評価・関係性の向上が期待できるのです。企業イメージの向上で、ビジネスチャンスの拡大にもつながりやすくなります。
※参考:「SDGs経営ガイド」|経済産業省
サスティナビリティが普及し始めている背景
サスティナビリティが普及し始めている背景はどこにあるのでしょうか。ここでは、SDGs・CSRにも触れながら、サスティナビリティ普及の背景を解説します。
SDGsの採択による概念の拡張
サスティナビリティは、1987年開催の「環境と開発に関する世界委員会」にて、持続可能な開発のための課題として、始めて取り上げられました。その後も重要課題として議論されていましたが、2015年の国連サミットで、SDGsが採択されたことで、世界中にサスティナビリティの概念が広がることになりました。
サスティナビリティはマクロな概念、SDGsはより具体的(ミクロ)な概念であるため、両者は相互補完の関係にあるといえます。
CSRという概念の普及
サスティナビリティ普及の背景として、企業においてはCSRという概念が普及し、重視されている点があげられます。CSRは、企業の社会的責任として、サスティナビリティを行うものであり、狭義のサスティナビリティといえます。
企業が、環境に配慮した経営を行うことが重要になります。社会全体ではなく、企業としてのサスティナビリティを考える必要が生じたことで、サスティナビリティは世界に向けてさらなる広がりをみせています。
大企業・著名人たちの影響
著名人や企業の活動が、サスティナビリティの普及に大きな影響を及ぼしています。調査会社のサスティナビリティ社などが発表したランキングでは、ユニリーバが「サスティナビリティ企業」として1位に輝いています。
ユニリーバは、LUX・ダブ・リプトン・クノールなど、さまざまなブランドを展開する企業です。温室効果ガス排出量・水使用量・廃棄物量の削減などの取り組みをはじめ、環境負荷を減らしつつビジネスの規模を2倍にするという目標を設定しています。
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サスティナビリティ経営のメリット
サスティナビリティを意識した企業の経営を「サスティナビリティ経営」と言います。ここでは、サスティナビリティ経営を行うメリットについて解説します。
企業価値の上昇
サスティナビリティを意識した取り組みを推進することで、企業価値の上昇につながります。社会や環境に配慮した経済活動を行うことで、社会的役割を果たす企業であることが認識され、企業価値(ブランド力)の向上につながるのです。企業が環境に配慮した企業であると認められることで、ビジネスを拡大させられる可能性も生まれるでしょう。
事業の成長につながる
サスティナビリティ経営を行うことで事業の成長につながります。企業が率先して、サスティナビリティ経営をすることで時代の変化に対応する社内組織の体制が養われるため、より柔軟性のある企業へと成長しやすくなるのです。企業が柔軟性を持って環境問題をはじめとした社会問題に取り組むことで、ソーシャルビジネスなど新しい分野を開拓することが可能となります。
従業員にも良い影響を与える
サスティナビリティ経営を行うことは、従業員にも良い影響を与えます。具体的な例だと、従業員が働きやすくなるようにより良い職場環境を用意することです。サスティナビリティ活動の一環として、職場環境の改善を行えば、従業員の満足度やモチベーション向上につながるでしょう。社会的に意義のあるサスティナビリティ経営をすることで、従業員に「自分もこの企業の一員である」という自負と愛社精神を芽生えさせられます。
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サスティナビリティの測定指標
サスティナビリティの測定指標について2つ解説します。
GRIスタンダード
GRIスタンダードは、サスティナビリティの国際的な基準です。2016年10月に発表され、日本語版も2017年に公開されました。GRIスタンダードは、経済(7項目)・環境(8項目)・社会(19項目)で、全34項目を設定しています。
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DJSI(ダウ・ジョーンズ・サスティナビリティ・インデックス)
DJSI(ダウ・ジョーンズ・サスティナビリティ・インデックス)は、アメリカのS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社と、スイスのRobecoSAM社で共同開発された指標です。GRIスタンダードと同じく、経済・環境・社会の3つの視点から分析を行います。
世界に存在する3,000社以上の大手企業を対象にしており、3つの視点に基づく詳細な分析から、サスティナビリティに優れた企業が選ばれます。国際的にも高い信頼性を得ている測定指標です。
日本と海外のサスティナビリティの違い
日本と海外では、若干異なるサスティナビリティ事情を抱えています。ここでは、国内外でのサスティナビリティの違いについて解説します。
海外のサスティナビリティの特徴
海外では事業そのものを社会・環境と統合して考え、影響価値を長期的に高めていくのがサスティナビリティであると考えられています。
特にアメリカ・北欧などのヨーロッパ諸国では、サスティナビリティの意識が高いと言われています。例えば温室効果ガスの排出を抑えるため、カーボンニュートラル・脱炭素などについて、幅広く深い議論が行われており、持続可能な社会の実現を目指しているのです。
サスティナビリティの意識が高い国は、サスティナブル・ラベルも普及しています。サスティナブル・ラベルとは、環境に配慮した商品に付けられる、国際認証ラベルのことです。国によっては、サスティナブル・ラベルがついていない商品は店頭に並べられないところもあります。
日本のサスティナビリティの特徴
日本のサスティナビリティの特徴は、主に社会貢献や環境への配慮を行い企業価値を高めることをテーマにしている点です。社会的な環境問題も議論として取り上げられる機会は増えたものの、幅広く議論が行われている諸外国と比べて、やや後れをとっていると言えます。
サスティナブル・ラベルも、日本においてはあまり浸透していません。普及していない理由としては、持続可能な社会全体への意識の低さや、サスティナブル・ラベルの認知度が高くないことが挙げられます。
サスティナビリティ企業の取り組み事例
ここでは、実際のサスティナビリティ企業の取り組みを紹介します。今回の記事では、国内企業に限定してまとめています。
ユニクロ(ファーストリテイリング)
ユニクロ(ファーストリテイリング)は、日本を代表する衣料品メーカーです。ユニクロは、プラネット(Planet)・ピープル(People)・コミュニティ(Community)の3本の柱を中心に、サスティナビリティに取り組んでいます。
具体的な取り組みとしては、環境負荷の少ない服作りです。原材料調達から実際の生産に至るまで、社会・環境への配慮を欠かさず、持続可能なライフスタイルと商品の提案を行っています。
ユニリーバ
ユニリーバは、洗剤やヘアケア用品などの消費財を提供するメーカーです。「サスティナビリティを暮らしのあたりまえに」というスローガンを掲げ、SDGs採択前の2010年からサスティナビリティ推進に取り組んでいます。
重点課題として「すこやかな暮らし」「環境」「経済発展」の3つを取り上げ、衛生的な習慣のための支援や温室効果ガスの削減、小規模業者との積極的な取引などを行っています。
トヨタ自動車
トヨタ自動車は、日本の自動車メーカーで、国内の自動車業界を牽引する存在です。サスティナビリティの取り組みとしては、「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表し、2050年までの長期的な目標を掲げています。
CO2排出量ゼロのような取り組みから、メイン商品である車を使った、トヨタならではの取り組みも評価されています。例えば予備電源になる自動車の開発を行っており、災害時にも安心して過ごせる環境作りを目指しています。
キヤノン
キヤノンは、電気機器メーカーであり、国内メーカーの中でもサスティナビリティ企業として高い評価を受けています。国際社会の課題解決のために、社会的ニーズのある事業を強化したり、地球環境に優しい製品の開発をしたりしています。
キヤノンが特に評価されているのは、「環境」の分野です。キヤノンサスティナビリティレポートが、環境コミュニケーション大賞の環境報告書部門で数年連続「優良賞」を獲得した実績もあります。
大林組
大林組は、いわゆる大手ゼネコンであり、国内の代表的な総合建設会社として知られています。大林組は、「Obayashi Sustainability Vision 2050(OSV2050)」を策定しており、2050年までの長期目標を掲げています。
サスティナビリティの取り組みとしては、環境問題に限らず、人権問題など幅広い問題の解決に挑戦しています。企業倫理の徹底も行われており、CSRの主体として信頼を積み上げています。
エーザイ
エーザイは、国内の大手製薬会社です。サスティナビリティの取り組みとしては、中期経営計画「EWAY 2025」を策定し、諸問題の段階的な解決に取り組んでいます。医薬品メーカーということもあり、「必要な医薬品を必要とする人々に届ける」をスローガンに掲げています。
環境問題への取り組みもあり、2040年までにカーボンニュートラル実現を宣言しています。カーボンニュートラルとは、何かを行った際に発する二酸化炭素量と、吸収される二酸化炭素量が同じになるという概念です。
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まとめ
サスティナビリティは、誰にとっても住みやすい社会を作るために、欠かすことができない概念です。環境や社会だけでなく、従業員に対するコミットも重要になります。
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