医療業界におけるデジタルトランスフォーメーションとは | メリットと活用事例を紹介
この記事では、医療業界におけるデジタルトランスフォーメーションについて詳しく知りたい方に向けて以下の内容を解説します。
・デジタルトランスフォーメーションの意味
・医療業界におけるデジタルトランスフォーメーションの活用事例
上記について知りたい方はぜひご参考にお読みください。
目次
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医療業界におけるデジタルトランスフォーメーションとは
まずはデジタルトランスフォーメーションの意味と定義や、医療業界で注目されている背景や理由について解説します。
デジタルトランスフォーメーションの意味と定義
デジタルトランスフォーメーション(DX)はスウェーデンのウメオ大学に在籍していたエリック・ストルターマン教授の2004年に発表された論文の中で初めて提唱されました。論文中ではDXを「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と定義されました。
日本では2018年に経済産業省が取りまとめたガイドラインにおいて、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義した。
なお、「DX推進ガイドライン」は利用者視点から「デジタルガバナンス・コード」と統合することが望ましいとして、令和4年9月「デジタルガバナンス・コード2.0」と改め公表されました。
※参考:デジタルガバナンス・コード2.0
また、DXと似た言葉でIT化がありますが、IT化はDX実現のゴールへ導くための手段の一つだという違いがあります。
医療業界が抱える課題
医療業界において近年、デジタルトランスフォーメーションが注目されています。その背景と理由について解説します。
せまる2025年問題
2025年問題とは、団塊世代が75歳以上になることで超高齢化社会が到来し、さまざまな問題・課題を抱えることになるというものです。2025年には国民の4人中1人が高齢者になります。国民全体の割合の中で高齢者は増える一方で、医療従事者は減少傾向にあり、医療やそれらに付随するサービスの提供が行き届かない懸念があります。
また、高齢者が増えることで社会保険料があがり、若者や次世代の負担が大きくなってしまうことも問題視されています。
デジタルトランスフォーメーションが注目されている理由
医療業界では、人材不足の他にアナログな業務が多いという問題もあります。例えば、診察券や診断書、カルテなどは紙ベースで作成・保管している現場も多く、電子化が進んでいるとはあまり言えません。
しかし、デジタルトランスフォーメーション実現の過程の中でデジタル化や電子化が進めば、これらの問題や課題を解決に導くことができます。カルテや診断書などの書類等がデジタル化・電子化することで資料管理を効率化できれば、業務量や必要なリソースも削減でき人手不足の改善にもつながるでしょう。
デジタルトランスフォーメーションを実現するためのプロセス
ではどのようにしてデジタルトランスフォーメーションを実現すればよいのでしょうか。ここではDXを実現するための3つのプロセスについて解説します。
プロセス1.デジタイゼーション
デジタルトランスフォーメーションを実現するための最初のプロセスは、デジタイゼーションです。デジタイゼーションは業務のデジタル化を意味し、紙ベースのものを電子化する・顧客リストから顧客データベースを作成するなどが例としてあげられます。デジタイゼーションの目的は業務効率化やコストの削減を目指すことです。
プロセス2.デジタライゼーション
デジタライゼーションとは、デジタル技術を活用してビジネスモデルを変革し、新規事業の展開やサービスへの付加価値を付けることです。
例えば、自動車販売業を行う企業であれば、ビジネスを転換させてレンタカー事業やカーシェアリングの事業に進出することがあげられます。レンタルビデオ店がストリーミングサービスを提供するのものデジタライゼーションの一例です。
医療機関であれば、オンライン診療や服薬指導アプリの活用などがあげられます。
プロセス3.デジタルトランスフォーメーション
デジタイゼーションとデジタライゼーションのプロセスを追って実現できるのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)です。デジタルトランスフォーメーションが前述した2つのプロセスと違うのは、デジタル化・ビジネスモデルの変革を経て競争上の優位性を確立することです。
医療現場での例としては、まず電子カルテを導入することでデジタイゼーションを実現します。電子カルテによって情報共有をスムーズ化し、業務効率化につなげることで顧客・従業員への待遇を改善することがデジタライゼーションです。
最終的には、組織改善を持続することで地域の患者から選ばれるようになるなど、優位性を確立する段階がDXの実現です。
医療業界のデジタルトランスフォーメーションで期待できるメリット
医療業界でデジタルトランスフォーメーションの実現ができるとどのようなメリットがあるのかを紹介します。
非対面で診療ができる
デジタルトランスフォーメーションを進めることで、医師が患者の所に行かなくても診療ができるオンライン診療が可能です。非対面で行うオンライン診療には、以下のようなメリットがあります。
・医師の移動時間が削減できる
・訪問治療を効率化できる
・感染リスク防止につながる
とくに、医師の数が少ない地方や訪問治療を主として行なっている医療機関ではオンライン診療によるメリットは大きいでしょう。ただし、オンライン診療を実現するには医療機関側だけではなく、患者側にも対応の機器や設備の準備が必要です。
予約や受付の自動化
医療機関では、予約や受付を電話でとるなどまだまだアナログ対応が多いのが現実です。デジタルトランスフォーメーションを実現できれば、予約・受付の自動化が可能となるでしょう。インターネットを通して予約と受付をできるようにすれば、電話対応の業務はかなり軽減されると考えられます。
また、営業時間外でもインターネットから予約・受付をできるという点は利用者側にもメリットがあります。
一部書類の電子化
紙ベースの書類や資料を一部でも電子化できれば、編集・管理がしやすくなり、業務効率化が図れます。例えば、患者の診療内容や経過を記録したカルテの電子化を進めるだけでも多大なメリットがあります。カルテをデータとして扱えば、入力ミスや文字の読み間違いは起こりにくくなるでしょう。
また、紛失のリスクが避けられる・膨大な量のカルテを管理できるといった点も優れます。ただ、「カルテ = 紙」という根強い文化が日本にはあり、カルテの電子化はあまり進んでいないのが現状です。
BCPの強化
BCPとは、災害やテロ、その他の緊急事態の際であっても根幹となる事業は継続させていくための対応策を用意しておくことです。よく見られるBCPの例は、非常用発電機や燃料の準備、非常食の確保などです。
DXを進めることで、電子カルテのバックアップをとる・診療用の予備端末を用意しておくといったBCP強化の施策が取りやすくなります。
予防医療の発展
生活習慣病やその他の疾患などに対して、あらかじめ何らかの施策を行い、未然に防ぐことを予防医療と言います。DX実現によって、予防医療の発展が期待できます。予防医療の一例としては、コレステロール値をデータで管理し、高い数値を検出したときはその人に通知を鳴らして知らせるといったことがあげられます。
医療業界におけるデジタルトランスフォーメーションの活用事例
最後に医療業界におけるデジタルトランスフォーメーションを活用した具体的な事例をいくつか紹介します。
AIによる新薬の開発
新薬の開発は長期におよぶため、時間がかかるだけではなく人的コストも莫大となります。
某大手製薬会社の事例では、DXを進め、AIを活用した新薬開発を行うことで、前述した問題・課題を解決に導きました。AI技術の活用が新薬を生み出す成功率向上につながり、開発期間の短縮と人的コストの削減を実現。
新薬開発にAIを投入する製薬会社は少ないのが現状ですが、今後さらにDXが注目され、国全体として実現できれば、さらに発展していくでしょう。
AIによる画像解析診断
医療現場からは切り離せない業務の一つがCT検査です。CT検査はがんの検査にも使われます。CT検査後の写真や画像は医師が見るため、見落としなどのヒューマンエラーが課題でした。
ある事例では、CT検査後の画像解析にAIを用い、検知率が向上しました。画像解析をAIが行うことで、見落としが起こらない他に、診断業務自体が効率化されたメリットもあります。
クラウドサービスの導入
ビッグデータやその他重要なデータの管理にクラウドサービスを導入した事例もあります。クラウドサービスを導入する以前は、データを満足に蓄積できない・重要データが損失するかもしれないといった問題点がありました。
しかし、クラウドサービスを導入することで、蓄積したデータをAI開発に活用したり、煩雑化したデータの整備ができるようになりました。データをクラウド上に保存することで、BCPの強化にもつながっています。
まとめ
デジタルトランスフォーメーションの意味と定義、医療業界におけるDX実現のメリットと活用事例について解説しました。DXを進めたいという場合、まずは小さなことからでも取り組んでみることが大切です。紹介した事例を基に、取り掛かれそうなことを検討してみてください。
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