経理にDXが必要な理由とは!メリットから導入方法まで詳細解説
企業のDX推進は、全社一斉に開始することが難しいため、経理などのバックオフィスから徐々に始めることも多いです。経理にDXを導入する必要性・メリット、具体的な導入方法やポイントなどを解説します。
目次
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DXについて
この段落では、DXの基本的な部分についてご説明します。そもそも「DXとは何か?」を正しく理解することで、経理のDX推進の解説にスムーズに進めます。
DXとは
DXとは「Digital Transformation」をそのまま日本語で略語化したものであり、英語圏でTransを略すときにXが使われることから、「DX」と略されています。DXは、アナログからデジタルへの変換による業務改革の手段の1つです。
企業においては、デジタル技術を活用し、企業競争のなかで自社の優位性を確立することがゴールとなります。社会全体においては、デジタル化やIT技術によって人々の生活をよりよく変革することがDXの考え方とされています。
DXのガイドライン
DXのガイドラインについては、2018年に経済産業省が公表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」が基本となります。その後、経済産業省ではDX推進施策体系を踏まえて、利用者視点から「デジタルガバナンス・コード」と「DX推進ガイドライン」を統合することが望ましいとし、令和3年1月から8月にかけて実施した有識者による検討会の議論を経て、両者を統合。「デジタルガバナンス・コード2.0」として令和4年9月に公表しました。この中で、DXは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」※1と定義付けしています。DXという言葉自体はとても広義なもので、使う人や場所や状況により、さまざまに変化することがしばしばありますが、本記事でお伝えする「経理におけるDXの実現」とはすなわち、日々の雑務から解放され、本来取り組むべきコア業務に専念する環境を実現することと言い換えられます。経理本来の業務を円滑に進めることにより、会社の意思決定へ影響を与えるような、価値ある役割を果たせるようになるのです。そのためには、デジタル技術を活用した組織変革が重要です。
※1 出典:デジタルガバナンス・コード2.0
経理におけるDX推進の現状
経理におけるDXを実現するためには、経理業務全体の現状を知ることが大切です。経理に関するデジタル化について、400社を対象に行われたある調査では、「会計外システムから会計システムへの自動連携」に関して55%が「デジタル化している」と回答しています。
また、「決算処理」では43%がデジタル化していますが、「外部監査対応」においては15%程度のデジタル化に留まっています※2。このことから、経理に関連する業務全体におけるデジタル化はまだまだ進んでいない実態が見えてきます。
※2 出典:経理・財務部門のデジタル化、400社調査で判明した課題と解決策|ITmedia
経理にDXが必要な理由
企業の経理には、DXの実現が必要とされています。ここではその理由と、経理のDX推進が難しい理由について解説します。
安定した業務が不可欠
経理におけるDXの実現が必要な理由は、企業のお金の流れに関わる要所であり、金銭に関わる重要な業務だからです。経理業務がストップすれば、取引先の支払いや給料振込ができないため、社内外の信用を落とすことになります。信用失墜防止のためにも、可能な限り迅速にデジタル技術による効率的で安定した業務を定着させ、DXを実現させることが重要です。
経理のDX推進が難しいと感じる理由
経理はバックオフィスの中でも、DXの推進が難しいと考えられています。経理のDX化が難しく感じられる大きな要因は、業務の属人性の強さです。また、紙文化が定着している企業も多いため、紙に直接押印する、重要な記録は紙で残す、という習慣が根強く残っています。
まずは経理業務を細かく洗い出して見える化しマニュアルを作成することや、重要度の低い書類から電子印鑑に変えていくなどの施策で属人的な状態からの脱却とペーパーレス化の推進を図っていくと良いでしょう。
経理でDXを推進するメリット
経理でDXを推進する過程には、たくさんのメリットがあります。代表的な5つのメリットを紹介します。
DX推進で業務効率が向上
経理業務は週ごとや月ごとなど、繰り返しの定型業務が多いことが特徴です。期限の厳守と正確性も求められます。デジタル技術は繰り返しの定型業務に適しているため、デジタル化により業務効率が飛躍的に向上する可能性があります。
手入力による人的ミスをなくすことができ、集計業務や帳簿の作成なども自動化できます。業務を自動化すれば、人の手によって行う作業の時間を大幅に削減できるため、人でなければできないコアな業務に専念できるでしょう。
ペーパーレス化の実現
経理のDXを推進する過程では、ペーパーレス化も実現できます。ペーパーレス化は、テレワークの推進にとっても必要不可欠です。成功すれば、経理部門のテレワーク導入も可能となります。機密事項に触れない部分の経理業務であれば、外部への業務委託もできるでしょう。
DXが進めばコストも削減できる
経理のDX推進では、コストも削減できます。繰り返しになりますが、経理業務の自動化により、人的リソースの削減が可能となります。また、ペーパーレス化の成功により、書類作成にかかっていた用紙代や印刷代、郵送代などが不要となります。大量にあった紙ベースの資料を保管するスペースも不要となり、管理に費やす時間や人員も減らせるでしょう。
バックオフィスの問題点である属人化を解消
前述したように業務の属人化は、経理を含めたバックオフィスの大きな問題点です。経理のDX実現に向けた活動が進めば、ペーパーレス化によって情報の共有がよりスムーズに行えるようになります。デジタル化された情報をクラウド上や社内イントラ上で、必要な人が必要な時に確認できる、いわゆる「見える化」された状態になれば、属人的とされていた経理業務からも脱却できるでしょう。併せて、業務フローなどのマニュアルもデータ化して社内に公開すれば、担当者のなかから退職者が出てもスムーズな引き継ぎが可能となります。
SDGsの活動にもつながる
SDGsとは、2015年の国連サミットで採択された持続可能な開発目標です。DX推進の手段であるペーパーレス化が実現すれば、紙やインク、印刷にかかる電気の使用などを抑えることができます。また、郵送や廃棄などで発生する二酸化炭素排出量の削減も可能です。地球環境に配慮したSDGs活動を、企業で取り組むことは社会へのアピールとなり、環境マネジメントシステムに関する国際規格が取得しやすくなる、企業評価が上がる、といった可能性もあります。
経理のDX推進が遅れるデメリット
経理のDX推進が遅れると、どのようなデメリットが起こるのでしょうか?さっそく見ていきましょう。
属人的な働き方を解消できない
経理のDX化が遅れると、課題とされる属人化した業務の改善もできず、経理人材の負担を軽減できないままとなってしまいます。また、経理のDXが遅延している状態であれば、テレワークの推進や働き方改革も進まないでしょう。
仮にテレワーク中の従業員がいたとしても、押印などのために出社しなければなりません。属人化されている経理業務は、個人への依存度が高いため、経理担当者がいなくなると業務が回らないリスクも高いままとなります。
売上損失の可能性も
経理のDX推進が遅れれば、「2025年の崖」に直面する可能性もあります。2025年の崖とは、経済産業省が2018年9月に公表したDXレポートに登場した言葉であり、「DXへの課題を克服できない場合、DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性」※3があるとされています。
2025年の崖は、古いシステムが生み出すブラックボックス化などにより発生します。既存の管理状態で使い続けることにより、大きな経済的損失を招き、近い将来会社の存亡が危ぶまれる事態に陥るかもしれません。
※3 出典:DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~|経済産業省
従業員のモチベーション低下を招く
経理のDX推進が遅れることにより、経理に携わる従業員のモチベーションを低下させるかもしれません。定型業務の自動化の遅れにより、経理のコアな業務に集中し切れない状態が続けば、モチベーションを保つことが難しいからです。古い業務を踏襲しているだけでは社内外と足並みが揃わず、DX実現のような発展的変化を望んでいる従業員は、最悪、離職する可能性もはらんでいます。
経理でDXを推進する方法
経理でDXを推進する主な方法は、ペーパーレス化・データ連携・システムデータ管理の3つです。それぞれについて解説します。
ペーパーレス化を目指す
経理でのDX推進ではまず、ペーパーレス化を目指します。紙の書類や資料をすべてスキャンしてデジタル化し、経費精算の際のレシートや領収書を電子化しましょう。デバイスで作成した書類などもデータ化し保管します。データ入力から承認まですべて業務をデータ化できれば、経理のペーパーレス化が実現できます。
社内の経理システムから手を付けていき、社外の取引先などには、ペーパーレス化の推進を説明し、理解を得ながら進めるとよいでしょう。
データ連携の自動化
ペーパーレス化によりデジタル化されたデータが、自動的に連携できるようにシステムを構築します。複数のシステム連携を実現し、自動化させることにより可能となるのです。経理のシステムは、給与システム、受注・販売システム、購買システムなどがありますが、すべてを連携できれば決算作業の自動化を目指せます。決算作業の自動化は、経理の属人化という大きな課題の解消にもつながります。
システムによるデータ管理
システムによりデータ管理を行い、見たい数字をいつでも取り出せる状態にします。部門を横断したシステム連携を行うことで、会計管理データがリアルタイムで把握できるようになるのです。経営陣に必要なデータが、経理を通さず取り出すことができて、月次決算を待たずに経営状況を把握できるため、迅速かつ的確に経営判断が可能となります。
経理でDXを推進する際の注意ポイント
業務の見える化を図る
経理でDXを実施するには目的を理解し、自社の経理の課題を洗い出すことから始めましょう。各従業員の業務を整理して業務フローを作成し、業務を見える化することが大切です。この作業により、どの業務がデジタル化できて、どの部分が自動化できるのかを知ることができます。業務の効率化が望めない業務については、デジタル化の必要はありません。
部署や取引先に周知
経理のDX推進のためには、経理以外の部署との連携が欠かせません。経理は、他部署との関わりが多く、ミスが許されない業務のため、経理のDX推進を全社的に周知し理解を獲得する必要があります。取引先についても、DX推進の目的やお互いのメリットなどを説明し、理解と協力を求めるようにしましょう。
属人化させずに共有する
経理業務フローの見える化により、従業員に情報共有が適切に行われることで属人化の防止は一定程度の効果があります。DXが推進され、業務改革が実現できても、再び経理業務が属人化しては意味がありません。経理の業務は属人化しやすい傾向がありますが、経理のDX実現とともに、経理業務をマニュアル化し、データを共有して属人化を防ぐようにしましょう。
経理のDX推進は支援サービスも検討
企業によって、DXに必要なデジタル技術は異なります。DXの推進には、クラウドを筆頭にさまざまなデジタル技術が必要です。自社の人的リソースだけでは、DXの実現は難しいかもしれません。DXを支援するサービスを提供している事業者を活用することも大切です。事業者は、DX実現のためのあらゆるリソースやツールが準備できている事業者を選びましょう。
まとめ
経理でのDX実現は、2025年の崖を克服するためにも不可欠な要素です。経理業務は属人化しやすい傾向があります。しかし、デジタル化を前提とした業務フローやマニュアルなどを作成し業務を見える化させ、情報共有を円滑に行うことで属人的な業務体制を改善できます。
ワークフローを改善する各種サービスやツールを導入するためには、基盤となる通信環境の整備、受け皿となるデバイスの準備やセキュリティ面での対策が必要です。
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