働き方改革で変わる年次有給休暇の取り扱いとは?ルールや罰則・推進の方法を紹介
働き方改革の推進によって、年次有給休暇の取り扱いが変わりました。そのため、雇用主は年次有給休暇に関する内容をしっかりと把握しておかなければ、法律違反によって罰則を科せられる可能性もあるため注意が必要です。この記事では、働き方改革によって変わった年次有給休暇の取り扱いについて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
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働き方改革とは
働き方改革とは、労働者が自分のライフスタイルなどにあわせて、働き方を選べる社会を実現するための取り組みのことです。政府は「一億総活躍社会」と題し、一人ひとりが自分の意思やスキルなどにあわせた働き方を見つけることができ、すべての労働者が幸福になることを目指しています。
働き方改革の目的は、労働者の増員や出生率の上昇、労働生産性の向上などが挙げられます。2019年4月から「働き方改革関連法」が施行されました。
参考:働き方改革~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~|厚生労働省
働き方改革で課題となっている年次有給休暇の取得促進とは
厚生労働省の調べによると、2016年の有給休暇の取得率は47.4%でした。2017年、2019年はどちらも46.6%と過去最低の取得率を記録しています。従来は年次有給休暇を取得するためには労働者が自ら申請をする必要があり、「同僚に気兼ねする」「申請を出しにくい」などの理由から、取得率は低迷したままでした。
そこで年次有給休暇の取得を促進するために、雇用者に対して労働者に年5日間の有給休暇を取得させることが義務化されました。
参考:働き方改革~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~|厚生労働省
年次有給休暇の基礎知識
ここでは、年次有給休暇の発生条件や付与に関するルールなどの基礎知識について、詳しく解説します。
年次有給休暇の発生条件
年次有給休暇は、6カ月以上雇用された労働者のうち、全労働日の8割以上出勤した労働者にのみ10日発生します。パートタイムの労働者などを雇用している場合は、所定労働日数によって付与する年次有給休暇は異なります。
たとえば、所定労働時間が週30時間未満のパートタイマーの労働者のうち、週所定労働日数が4日以下もしくは、年間所定労働日数が216日を下回る場合は年次有給休暇が比例付与されます。
年次有給休暇の付与ルール
雇用主は、労働者から請求されたタイミングで、年次有給休暇を取得させることが義務付けられています。年次有給休暇の請求権は時効が2年と決められているため、前年度に取得されず残った年次有給休暇は翌年度に与えなければなりません。また、雇用主は、年次有給休暇を取得した労働者の賃金の減額や、社内で不利益な取り扱いを受けることがないように努めましょう。
働き方改革による年5日の年次有給休暇の確実な取得とは
年次有給休暇の請求権を持つすべての労働者が、確実に年5日は年次有給休暇を取得できるようにするため、働き方改革は2019年4月から順次施行されています。働き方改革によって変わったことは、年次有給休暇の取得に関する義務付けです。
従来は、雇用主に対して年次有給休暇に関する義務付けはありませんでした。しかし、働き方改革の施行後は年次有給休暇の日数のうち、年5日は労働者に取得させることが雇用主に義務付けられました。
参考:年5日の年次有給休暇の確実な取得わかりやすい解説|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
働き方改革による年5日の年次有給休暇の確実な取得ルール
雇用主が労働者に対し、年5日の年次有給休暇を確実に取得させるためのルールについて解説します。
参考:年5日の年次有給休暇の確実な取得わかりやすい解説|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
対象となる労働者の条件
年5日の年次有給休暇を取得できる対象は、年間10日以上の年次有給休暇を付与されている労働者のみです。また、管理監督者や有期雇用労働者なども、年5日の年次有給休暇を取得できる労働者の対象に入っているため、雇用主は対象者を確認する際は注意しましょう。
取得時季の条件
年次有給休暇を取得させるタイミングについても条件が定められています。対象となる労働者に対し、年次有給休暇を付与した日を基準日とします。この基準日から1年以内に5日間の年次有給休暇を指定した時期に取得させることが、雇用主の義務です。
年次有給休暇の取得時季を指定する際は、労働者の希望や意見をヒアリングした上で決めることが原則です。すでに年次有給休暇を5日以上請求・取得済みの労働者については、時季指定する必要はありません。
年次有給休暇管理簿の作成
雇用主は労働者がいつ、何日の年次有給休暇を取得したのかを管理しなければなりません。年次有給休暇を管理する際は、年次有給休暇管理簿を作成しましょう。年次有給休暇管理簿には、年次有給休暇の基準日をはじめ、取得した時季や日数を記録し、労働者ごとに情報を整理しておく必要があります。さらに、年次有給休暇管理簿は、3年間の保管が義務付けられています。
就業規則への記載
年次有給休暇の時季指定は、雇用者が決めることも可能です。ただし、雇用主が年次有給休暇の時季指定を行う場合は、就業規則に時季指定に関する詳細を記載しておかなければなりません。具体的には、雇用主による時季指定の対象となる労働者の条件や、雇用主が時季を指定する方法などを明記しておきましょう。
働き方改革による年5日の年次有給休暇の確実な取得における罰則
働き方改革の施行によって義務付けられたことを守らなかった場合、雇用主に罰則が科せられる場合があります。
年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合
雇用主が対象の労働者に対し、年5日の年次有給休暇を取得させないという行為を行った場合は、労働基準法第39条第7項に背くことになります。さらに、労働基準法第120条の罰則規定により、違反した雇用主に30万円以下の罰金が科せられることもあります。
違反行為は、労働者1人に対して1罪で取り扱われることが原則です。たとえば、年次有給休暇の取得の対象になる労働者のうち、10人が取得していなかった場合は300万円の罰金が科せられます。
雇用者における時季指定に関して就業規則に記載していなかった場合
上述したとおり、雇用主が年次有給休暇の時季指定をする場合は、就業規則に詳細を記載しておかなければなりません。就業規則に対象となる労働者の条件や、時季を指定する方法などが明記されていないにもかかわらず、雇用主が労働者の年次有給休暇の取得時季を指定した場合は、労働基準法第89条に違反します。労働基準法第120条の罰則規定によって、30万円以下の罰金が科せられます。
労働者の請求時季に年次有給休暇を与えなかった場合
対象となるすべての労働者は年次有給休暇の請求権を持っており、年次有給休暇を請求し、取得する権利があります。労働者が取得の請求を行ったものの、請求時季に年次有給休暇を取得できなかった場合は、雇用主は労働基準法第39条に違反します。
労働基準法第119条の罰則規定によって6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられるため、雇用主は請求のあった時季に年次有給休暇を与えなければなりません。
働き方改革による年5日の年次有給休暇の確実な取得を遂行する4つのポイント
雇用主が労働者に対して、年5日の年次有給休暇の取得を確実に遂行する際に、以下の4点が重要なポイントとなります。
1.基準日を統一する
年次有給休暇の基準日が労働者一人ひとりで違う場合、年次有給休暇を取得しているのは誰なのか、取得していない日数は何日あるのかを把握する際に手間がかかります。年次有給休暇の基準日を統一することで、労働者の年次有給休暇の取得率の管理がしやすくなります。たとえば、月初や年始、年度始めなどがおすすめです。中途採用の場合は月初に統一するとよいでしょう。
2.年次有給休暇取得計画表を作る
基準日を定めた後は、年次有給休暇取得計画表の作成を行いましょう。年次有給休暇取得計画表には、労働者の有給休暇の取得予定を明記し、誰が見てもすぐに分かるようにしておきます。年次有給休暇取得計画表の作成だけでなく、計画表のとおりに労働者が年次有給休暇を取得できるように、社内の業務体制を整備しておくことも大切です。
3.計画年休を行う
次に、計画年休を実施します。計画年休は、企業・事業場全体の休業や、班・グループごとの交代制の休業などを指します。計画年収を実施するメリットは、企業側は労務管理をスムーズに行える、労働者側は同僚などに気兼ねせずに年次有給休暇を取得しやすくなることです。
計画年休を自社に導入する際は、夏季休暇や年末年始などの休暇を大型連休にする、土日と祝日の間を休業するブリッジホリデーにする、誕生日などに休暇が取れるアニバーサリーホリデーを導入するなど、さまざまな方法があります。
4.半日単位年休を行う
年次有給休暇は1日で取得することが原則です。ただし、労働者が半日単位での取得を希望する場合は、1日単位ではなく半日単位での年次有給休暇の取得を認めることができます。労働者が半日単位で年次有給休暇を取得する場合は、正午を基準に午前と午後で半日を分けるようにしましょう。
まとめ
働き方改革の施行によって、雇用主は労働者の年次有給休暇の取得が義務付けられるようになりました。労働基準法の定められたルールに違反した場合は、30万円以下の罰金などの罰則が科せられる場合があるため注意が必要です。
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