BCP訓練とは?必要性やシナリオの作成方法、実施する際のポイントも解説
BCP訓練は、事業を継続させるために欠かせない重要な訓練です。近年は地球温暖化や新型コロナウイルスの流行といったさまざまな問題が発生しており、BCP訓練の重要性が特に高まっています。この記事では、BCP訓練の必要性とともに、実施する際のポイントを解説します。BCP訓練を実施するためにぜひ参考にしてください。
目次
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BCP訓練とは
BCPとは「Business Continuity Plan」の頭文字をとった言葉であり、日本語に訳すと「事業継続計画」です。具体的には、自然災害や緊急事態が発生した場合に企業の経営に対する被害を小さく抑え、事業を継続できるようにするための計画を意味しています。
BCP訓練とは、自社が定めるBCPに沿って、万が一の事態に備えて訓練することです。経営陣はもちろん、従業員も実際に訓練を行います。
BCP訓練の必要性
近年、BCP訓練の必要性が増しているのは、自然災害が原因となって発生する被害が多くなっているためです。地球温暖化が進んでおり、日本国内でも自然災害は増加しています。また、もともと日本は地震が多く、大地震も発生しやすいです。過去30年を振り返ってみると、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震といった大地震が発生しています。
このような状況を考慮すれば、自然災害や緊急事態の発生によって企業が被害を受ける事態は避けられません。しかし、BCP訓練を行っている場合、どのような状況でも事業を継続させられる可能性が高くなります。万が一の事態に備え、日頃からBCP訓練を行うことが重要です。
BCP訓練の目的
BCP訓練にはどのような目的があるのでしょうか。ここでは、BCP訓練の目的について具体的に解説します。
BCPの重要性を経営陣や従業員に周知徹底する
日本の場合、災害が発生したときに身を守る方法は、普段から意識している人が多いです。しかし、災害発生時に事業を守る方法について認識している人は、それほど多くないでしょう。
どのような状況でも事業を継続させるには、経営陣が瞬時に判断して指示を出す必要があります。BCP訓練を日常的に実施して疑似体験を重ねれば、事業継続の重要性や方針を確認できます。また、従業員とともにBCP訓練を行うと、非常事態が発生した際の考え方や行動などを浸透させることも可能です。
BCPの実効性を検証する
BCP訓練を実施すると、自社のBCPの実効性を試せます。また、定期的に訓練を行えば、普段は利用しない代替拠点、非常用電源、バックアップシステムなどの運用にも従業員が慣れます。訓練の様子を検証し、結果を精査してBCPそのものを見直すことも可能です。
BCPの4つの訓練
BCP訓練は、4つに大別できます。ここでは、4つの訓練の概要をそれぞれ解説します。
1.机上訓練
作成したBCPをもとに部署やメンバーごとに役割を確認し、自然災害や緊急事態が発生した際に計画に沿って行動できるかどうか検討します。具体的には、BCPの内容を共有し、経営陣と従業員のそれぞれが行うべきことを時系列に確認して意識を揃えます。
議論しながら改めてBCPに目を通すため、計画に矛盾がないかチェックしたり、優先順位が適切か検討したりすることが可能です。関係者全員でBCPの計画を確認することが大切です。
2.電話連絡網や緊急時通報の検証訓練
BCP訓練では、自然災害や緊急事態が発生した際に、連絡をとることができるかどうかも検証します。あらかじめ作成しておいた連絡網を利用し、実際に従業員と連絡をとって検証を行います。万が一の事態では連絡をとりにくくなると想定されるため、事前に連絡の手段やルールをよく確認しておくことが大切です。
連絡網の整備は、いざというときに従業員の安否を確認するための手段としても役に立ちます。また、この訓練を行うことで、すべての従業員に漏れなく連絡できるか、登録されている連絡が古くなっていないかなどもチェックすることができます。
3.移動訓練
移動訓練は、システムやインフラにオンプレミスを採用している企業が実施します。自然災害や緊急事態の発生により普段使用しているものが利用できなくなった場合、代替手段へ速やかに移行できるかチェックします。また、事業所や工場が使用できなくなった際に、代替施設を利用するための訓練も実施可能です。復旧に対応する従業員を実際に代替拠点に移動させ、計画に沿って対応できるかどうか確認します。
なお、クラウドを採用している企業は、避難場所でインターネットを利用してクラウドを利用できるかどうか試してみます。
4.総合的なBCP訓練
BCPを実行する際の全体の流れをチェックする訓練も重要です。自然災害や緊急事態が発生してから復旧するまでの一連の流れを実際に進め、確認する必要があります。近隣の企業や自治体と連携して訓練すれば、より効果的です。
また、総合的なBCP訓練を実施すると、有事の際にスムーズに対応できるだけでなく、BCPに対する取り組みを通じて関係際を強化する効果も期待できます。
BCP訓練を進める方法
BCP訓練はどのように進めたら良いのでしょうか。ここでは、BCP訓練を進める方法について解説します。
【準備】訓練の概要を決める
どのような災害や危機に対する訓練を実行するのか決めましょう。また、訓練を通して対象者に何を身につけてほしいか検討します。訓練のテーマを決定したら、訓練の運営体制、対象者、協力者、オブザーバー、訓練の実施日時、場所、訓練方法などの詳細を決めてください。
【準備】訓練シナリオなどの作成
訓練の流れをシナリオにまとめます。シナリオは、災害の種類、規模、発生日時、被害などを想定して設定しましょう。シナリオの詳細については後述します。
訓練シナリオを作成したら、いつどのような情報を参加者へ与えるのか検討します。その内容は、状況付与票を作成してまとめましょう。
BCP訓練の実施
BCP訓練を実施する前にオリエンテーションを実施し、訓練の開始を宣言します。オリエンテーションでは参加者に対して全体の流れを示し、使用するツールや訓練のルールなどを説明しましょう。訓練を始めたら訓練シナリオに沿って進めていきます。対象者へ状況付与票を渡し、具体的にどのように対応すべきか検討してもらいます。
訓練中は、参加者が対応した内容を記録に残しましょう。テキストではなく、写真や録画などで記録する方法もあります。
BCP訓練の評価
訓練が終わったら、参加者全員が訓練の内容を改めて振り返る時間を設けましょう。それぞれの感想を共有したり、訓練を通して気が付いた課題を報告し合ったりします。また、オブザーバーによる講評や経営陣によるコメントをその場で伝えると、BCP訓練の効果をさらに高めることが可能です。
参加者にアンケートを実施し、課題や今後の対策なども検討しましょう。その結果をもとにしてBCPの見直しや改善を進めることができます。
BCP訓練のシナリオを作成する方法
BCP訓練のシナリオはどのように作成すれば良いのでしょうか。ここでは、BCP訓練のシナリオの作成方法について解説します。
BCP訓練のシナリオとは
BCP訓練のシナリオとは、自然災害や緊急事態が発生してから、どのように状況が変わっていくかまとめたものです。時系列に沿って状況をまとめます。BCP訓練のシナリオを作成すれば、実際の状況を明確に意識しながら訓練を実施することが可能です。訓練の効果をより確かなものにできます。
シナリオの作り方
骨子作成
シナリオの骨子を作成しましょう。そのためには、訓練の目的や従業員にしてほしい行動を明らかにする必要があります。訓練を通してどのような内容を学ばせたいかについても決めてください。
登場人物を設定する
シナリオにおける登場人物は、自然災害や緊急事態が発生した際に連携すべき社内外の人です。幅広い視点でさまざまな関係者を想定しておけば、いざというときに行動の選択肢を増やせます。さまざまな選択肢があると、各従業員も適切に判断しやすくなります。
発災日時を決める
実際の状況を意識してBCP訓練を実施するために、想定している災害が発生する曜日、時刻、季節なども決めましょう。必要な対応や実現可能な対応は発災日時によっても異なるため、シナリオに必ず落とし込んでおくことが大切です。
被害状況を想定する
シナリオでは、想定している被害状況も明確にしておきましょう。オフィス、工場、データセンターなどがどのような被害を受けるのか決める必要があります。被害状況をはっきりさせれば、それぞれにあわせて最適な対応ができるよう訓練できます。
BCP訓練を実施する際のポイント
BCP訓練を行ううえでは、意識したいポイントがあります。ここでは、BCP訓練のポイントについて解説します。
全従業員にBCP訓練の目的を周知する
BCP訓練はあくまでも訓練であり、緊張感をもって対応できない従業員や、訓練そのものに対して必要性を感じない従業員も存在する可能性があります。しかし、BCP訓練はいつ発生するかわからない緊急事態に対して備えるためのものです。その重要性を従業員にきちんと理解してもらいましょう。事業の存続は、従業員の生活を守ることにもつながると認識してもらう必要があります。
被害状況を細かく設定する
BCP訓練では、訓練したい被害状況を細かく設定するとリアリティが増します。被害状況がはっきりしていれば、個別の問題に対して冷静に対応するスキルを磨くことが可能です。さまざまなシチュエーションでの被害状況を想定し、BCP訓練の意義を高めましょう。
日常業務からBCP対策を意識する
定期的にBCP訓練を実施するだけでなく、日々の業務においてもBCPを意識することが重要です。たとえば、有事の際もスムーズに連絡できるよう、連絡手段を強化する必要があります。具体的には、メールや電話以外にもチャットで連絡をとるようにしたり、従業員にそれぞれスマートフォンを配布したりする方法があります。日常的に代替手段となる連絡方法を活用していれば、いつでも円滑にやり取りできるでしょう。
まとめ
さまざまな自然災害や緊急事態に見舞われても事業を存続させるには、日常的なBCP訓練が重要な意味をもちます。詳しい状況を想定した訓練シナリオを作成し、従業員に周知しながら訓練を実施しましょう。訓練を通して見つかった課題をBCP対策に盛り込むことも大切です。
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