世の中全体でICT化が促進されている現在、医療業界でもICT化が進んでいます。ICTは医療業界において、人材不足や感染症対策の一環としても注目されている技術です。本記事では、医療ICTの概要や導入するメリット、注意点などを解説します。また、具体的な導入事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
医療におけるICTとは
そもそもICTとは「Information and Communication Technology」の略で、日本語では「情報伝達技術」のことです。具体的には、インターネットなどを経由して人とのコミュニケーションを行う役割のある技術や、その活用のことをいいます。
身近なところでは、SNSでのやり取りやメール送信、音声による電子機器の操作などもICTに含まれます。医療におけるICTのポイントは、オンライン診療や電子処方箋、電子カルテなどです。こうした最新の技術は、医療業界が抱える課題解決に活用できます。
ICTとITの違い
ICTと並んでよく使われる言葉がITです。ITは「Information Technology」の略で、日本語で「情報技術」と訳します。ソフトウェアやハードウェアなど、データ通信を利用した技術のことを指すものです。
これに対してICTは、技術そのものではなく、情報伝達技術を活用したコミュニケーションを重視する言葉です。とりわけ医療業界においては、医療側と患者側のコミュニケーションに活かすための技術という意味で使われています。
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医療業界でICTの導入が必要とされる理由
日本では超高齢社会に突入し、医療を必要とする人口に対して医療従事者が不足しています。同時に少子化も非常に早いスピードで進んでいるため、人材不足の状況は今後ますます深刻化することが予想されます。
人材が不足していると、1人当たりの作業負担も増加してしまうため、作業効率を向上させることが必要です。こうした高齢社会に伴う課題解決のために、ICTの導入に注目が集まっています。ICTを活かせば医療従事者と患者、あるいは医療従事者同士が効率よくコミュニケーションを取れるようになります。コミュニケーションの質を向上させつつ、手間は省くことで、人手不足を解消しつつ良質の医療を提供することに繋げる試みです。
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医療のICT化による4つのメリット
医療のICT化には大きなメリットがあります。そのメリットを大きく4つに分けて解説します。
1.状況に応じた最適な医療を提供できる
ICTの導入によって、状況に応じた最適な医療が提供できるようになります。たとえば、遠方にいる専門医師に診てもらえるオンライン診療はICTのひとつです。
また、ICT化によって医者と薬剤師が患者の情報をスムーズに連携できます。過去の治療内容に応じた適切な提案もできるなど、ICTの充実によって状況に応じた最適な医療を迅速に提供することが可能です。精度の高い情報の共有により、検査や投薬を減らせる可能性もでてきます。
2.新しい治療法や新薬の開発に役立つ
ICT化によって、効率的に臨床情報を収集できるようになります。集められた大量のデータは、難病やがんなどの研究・新薬開発を進めるために役立つ情報です。
治療法や新薬の開発において、大きな問題のひとつがコスト面です。ICTを有効活用することでデータ収集などにかかるコストを減らすことが可能になります。迅速にデータが集まることで開発期間が短くなれば、コスト削減にもつながると言えるでしょう。
3.医療業務の効率化に繋がる
予約管理やカルテ入力・検索などの医療業務は、これまでのアナログな方法では時間がかかるほか負担も大きいのが難点です。ICT化を進めることによって、現在の複数の作業を1つにまとめることができる、院内での連絡事項が迅速かつ手間なくおこなわれるなど、受付業務や事務作業などの負担が軽減できます。
人材不足の深刻な医療業界では、作業負担の軽減が必要です。ICTの導入によって事務作業が軽減されれば、人材不足を補うことができるのがメリットです。
4.医療の地域差を埋められる
超高齢社会の影響は、地域医療にも出ています。都会に比べて病院が少なく、高齢者が多いにも関わらず適切な医療が受けられなくなる地域も少なくありません。
医療のICT化は、病院が少ない地域や専門医のいない地域の住民をフォローできる可能性を持ちます。遠隔による診察や医師間の連携、生体情報のモニタリングなど、人が足りていない部分へ適切にICTを利用できれば、必要な医療を医療サービスの網からとりこぼすことなく届けられるでしょう。
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医療におけるICTの導入事例
医療現場で実際にどのような形でICTが導入されているのか、具体的な導入事例を解説します。
1.電子カルテ
電子カルテは、医療のICTでは欠かせないツールです。そもそも電子カルテとは、これまで紙に記入・保管していた医療データを電子データにしたものを指します。
電子カルテが整備されるとスタッフ間で情報共有が容易になるほか、ICT化で導入するほかのシステムとの連携もしやすくなります。また紙のカルテは保管スペースが必要で、年を追うごとに増えるのも難点でしたが、電子カルテなら保管スペースも必要ありません。
厚生労働省の調査によると、令和2年時点で一般病棟の57.2%、一般診療所の49.9%が電子カルテを導入しており、400床以上の大きな病院では導入率が91.2%にのぼります。電子カルテは見たいデータの検索も簡単で、さまざまな医療データを連携できるため、業務効率化に繋がっています。
2.オンライン診療
オンライン診療システムが整っていると、遠隔で診察や服薬指導が可能になります。オンラインなので、遠い場所でも問題ありません。実際に、愛知県の離島で、オンライン診療による活用例も報告されています。
これまで離島などの患者は、遠方の病院に通わなければならず、通院負担も大きいため適切な間隔で診療ができないという課題がありました。オンライン診療なら、遠方でも時間と場所を気にせず診察が受けられます。
初診からのオンライン診療は原則できないことになっていましたが、新型コロナウイルスの流行をきっかけに、特例として認められたことで、利便性の高さが浮き彫りになりました。今後さまざまな場面で必要性が予測される分野でもあり、恒久化が検討されています。
3.電子版のお薬手帳
電子版お薬手帳は、服薬履歴を確認できるお薬手帳を電子データとして管理できるものです。紙のお薬手帳は、持ってくるのを忘れてしまうこともよくありますが、電子版はスマートフォンなどで確認できるため、忘れることが少ないというメリットもあります。
電子版のお薬手帳では健康管理はもちろん、医師と薬剤師が同時にお薬手帳を確認できるため、副作用回避や相互作用防止にも役立ちます。運動の記録や健診履歴に連携できる機能がついたものもあり、健康に関する情報を総合的に管理できる可能性もあるでしょう。容量が大きいため長期的にデータを保管できるのもメリットです。
厚生労働省が平成30年に行った報告「かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査報告書」によると、電子版お薬手帳を導入している薬局は全体の34.9%で、今後の普及が期待されています。
4.地域医療情報連携ネットワーク
地域医療情報連携ネットワークは、厚生労働省が推進するICTを活用した情報共有システムのひとつです。電子化された患者の医療データを患者の同意を得たうえで、さまざまな医療機関が共有・閲覧できるものとなっています。
このネットワークは地域医療の質を向上するために構築されたもので、大規模病院と地域診療所同士の紹介や、転院時にスムーズな情報共有が期待されています。
ただし2020年10月の調査報告で、システムが利用されていない場合があることや、都道府県による指導が不十分であったことが判明しました。公的には今後フォローアップ体制を整えるとされていますが、普及にはまだ時間がかかりそうです。
参考:地域医療情報連携ネットワークの現状について|厚生労働省
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医療にICTを導入する際の注意点
医療にICTを導入する際は、以下のような注意点に気をつけなければなりません。
高いレベルのセキュリティ対策が必要
ICTの導入は、さまざまな情報をインターネット上に接続することを意味しているため、不正アクセスなどの脅威がともないます。したがってICTの導入にあたり、セキュリティシステム・ツールの導入は不可欠です。
セキュリティの高いシステムは高価だというイメージがあるかもしれませんが、情報漏えいによる信用低下などのリスクを考えると費用対効果は大きいと言えます。
個人情報を保護するルールを作る
セキュリティシステムの導入以外に、運用に関するルール作りも必要です。たとえばWebサイトの閲覧、USBやパスワードの取り扱いなどのルールを明確にします。
ルールを周知するためにはセミナーなどの開催が効果的です。院内で勉強会を開催し、適切でない取り扱いにともなうリスクもあわせて解説し、理解を求めましょう。
→こちらも併せて読みたい「必要なセキュリティ対策をまとめて解決できる『UTM』とは?」
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まとめ
医療業界における人手不足は今後も解消の見込みが薄いものの、ICTを取り入れることで院内外のコミュニケーションを活発にし、事務処理や相互連絡などの負担を軽減できます。また、オンライン診療、地方医療への貢献など、医療のICT化にはさまざまな可能性があります。
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