医療におけるIT化の現状|IT化するメリットや課題、導入事例などを解説
近年、医療業界でのIT化の必要性が高まっており、多くの医療現場でITシステムの導入が進んでいます。一方で、IT化の導入がなかなか進まない企業もたくさんあります。そこで本記事では、医療業界におけるIT化の現状や、IT化のメリット、導入事例などを解説します。IT化の遅れに悩んでいる経営層や、ITシステムの導入を検討している担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
医療のIT化が必要な理由
近年、医療に関する情報量が大幅に増え、人間の処理能力では対応できなくなっており、病院業務の効率化が求められている現状があります。医療のIT化を進めるため、政府はさまざまな対策を講じています。
たとえば、医療のIT化促進のため、厚生労働省主導の支援措置が受けられるようになりました。詳細は後述しますが、医療のIT化が進むと医療従事者と患者の両方にメリットがあります。
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医療業界でのIT化の現状
医療のIT化は、どのような現状に直面しているのでしょうか。医療業界でのIT化の現状を解説します。
新型コロナウイルス流行による医療現場の状況
新型コロナウイルスの流行により、今まであまりIT化が進んでいなかった日本の医療現場は、医療崩壊の危機に直面しました。IT化の遅れによって患者の感染状況の把握も難航し、医療現場の混乱を招いたことが医療のIT化のニーズをさらに加速させています。
たとえば、今まで主要な連絡手段だったFAXから、オンラインによる連絡へと切り替える病院が増えました。また、オンライン診断や学会のオンライン化なども広まり、医療業界のIT化への対応が不可欠になりつつあります。
電子カルテシステムの普及状況
令和2年時点での電子カルテシステムの普及率は、一般病院では57.2%、一般診療所で49.9%となっており、病院での電子カルテシステムは、年々増加しています。病院規模別で見てみると、400床以上の病院における普及率は91.2%となっていることから、規模の大きな病院のほとんどは電子カルテシステムを導入しているのが現状です。
今までは紙のカルテでやり取りしていましたが、カルテがデジタル化したことで、業務の効率化が進んでいます。
地域医療情報連携ネットワークの活用状況
地域医療情報連携ネットワークとは、地域の病院や診療所、薬局、介護施設などで保存されている情報を、ネットワークを通じて閲覧できるようにするシステムです。このネットワークは、過剰医療の防止や地域医療の質向上を目的に構築されました。
しかし現状では、都道府県からの説明が不十分で、システムを有効に活用できていないことが問題視されています。普及には都道府県との連携が不可欠です。十分に活用できるまでには、まだ時間がかかるでしょう。
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医療業界IT化における3つの課題
医療業界のIT化には、現状でどのような課題があるのでしょうか。ここでは、医療業界のIT化を遅らせている3つの課題を解説します。
1.ITリテラシーが低い現場の存在
医療に関する知識はあっても、ITリテラシーは低い医療現場は少なくありません。人材のITリテラシーが育っていない現状でIT化を進めても、システムを有効に使いこなせない可能性があります。
また、医療現場がIT化のメリットを理解できないと、システム導入の同意も得られにくくなり、IT化が浸透しない原因になります。医療現場のIT化を進めるためには、誰でも使用できるシステムの導入や使用方法に関するしっかりとした説明・サポートが必要です。
2.人材不足の深刻化
少子高齢化による労働力の減少や、プライベートの多様化などによって医療現場では人手不足が深刻化している現況があります。人の生死にかかわる過酷な労働環境になりがちな医療現場では、医療従事者が特に足りません。
医療現場での人手不足の深刻化は、医療従事者1人あたりの負担が増加し、人材が定着しない要因となります。今後も少子高齢化の影響により、人材不足がますます深刻化すると予想されているため、IT化による医療業務の効率化が重要です。
3.データセキュリティの問題
個々のヘルスデータは、患者の生命に関わる重要な個人情報なため、特にセキュリティ性の確保が大事といわれています。医療がIT化されるとヘルスデータが容易に共有できるため、患者のなかにはデータ共有の同意に心理的抵抗がある人もいます。
情報が漏れれば、個人情報の漏えいにつながりかねません。患者に同意が得られるような十分な説明はもちろん、安心・安全にデータを管理できるようなセキュリティ対策も重要な課題です。
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医療業界のIT化で期待される4つのメリット
医療のIT化は医療業界にどのようなメリットがあるのでしょうか。医療業界のIT化で期待される、4つのメリットを解説します。
1.業務効率化につながる
医療のIT化は、業務の無駄や個人差などを省くことにつながります。人手不足が深刻な医療業界において、業務効率化は最大のメリットです。たとえば、電子カルテや予約システムの導入などにより、毎日の作業工数を軽減できます。
人件費や残業代などを削減できるため、結果的に病院経営上の課題解決にも寄与します。また、デジタル化や機械化によって非接触でのやり取りが可能になり、院内感染の予防に役立つ点もメリットです。
2.研究・開発分野にも活用できる
医療のIT化は多くの臨床情報を共有できるため、新薬の研究や開発、再生医療の分野などで情報を活用できます。AIやビッグデータを活用すれば、まだ解明されていない病気の原因や治療法の発見が可能です。
また、膨大な患者の医療データや検査データを集約して分析できると、研究・開発のスピードが飛躍的に上がります。よりよい研究や開発ができれば、医療費の抑制や人々が健康に過ごせる環境づくりの構築につながるでしょう。
3.最適な医療が提供できる
医療のIT化が進めば、過去の受診歴や治療内容、使用薬剤の種類などの情報を一元化できます。患者それぞれの現状を過去にさかのぼって共有できることは、最適な医療の提供につながるでしょう。
IT化されたデータは、1つの医療機関に集約されるのではなく、複数の医療機関で共有されます。医師や薬剤師が別々の場所にいても、同じ内容を確認でき、診療内容の確認や副作用の回避が可能です。
4.BCP対策につながる
BCPとは、Business Continuity Planの略称で、システム障害や不祥事などによって危機的状況におかれた場合でも、重要な業務を継続するための事業継続計画です。日本国内では、地震や台風などの自然災害のリスク対策としてもBCP対策が重要視されています。
有事の際には迅速な医療機関の復旧が必要となるため、BCP対策も必要です。医療のIT化が進めば、病院が崩壊してもインターネットやバックアップによって、今までよりも復旧が早まる可能性が期待されています。
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医療業界におけるIT化の事例
医療業界では、具体的にどのようにIT化が進んでいるのでしょうか。医療業界におけるIT化の事例を解説します。
1.電子カルテの活用
電子カルテは、医療業界のIT化に欠かせない技術であり、医療業界のIT化の一歩です。前述したとおり、この電子カルテは日本全国で普及率が向上しつつあり、医療現場にさまざまな革新をもたらしています。
たとえば、カルテのデジタル化によって、医療情報の共有が瞬時にできるようになり、データの閲覧や検索などが迅速かつ容易にできるようになりました。多くの医療機関で電子カルテはすでに採用されており、予約システムや画像データなど、ほかのシステムのとの連携も進められています。
2.オンライン診療の開始
オンライン診療とは、スマートフォンやパソコン(PC)などの通信技術を介し、診療や薬の処方が受けられる新しい診療形式です。一般的には、映像を見ながらリアルタイムに会話できる、ビデオチャットを用いたオンライン診断が導入されています。
患者は自宅や外出先から診療が受けられるため、通院の負担が軽減される点がメリットです。また、医療サービスの質の地域差を減らすうえでも、オンライン診療は役立ちます。現状では、術後ケアや在宅診療、妊婦健診など、幅広い分野で導入されています。
3.AIシステムの導入
AIの最新技術を搭載した、医療機器や診察支援の製品・サービスなども、医療業界では導入されつつあります。たとえば、AI搭載の画像診断補助ツールは、レントゲンやMRIなど画像内のリスク領域を検出し、病気の見逃し防止や早期発見、医師の作業削減などを目的として導入されています。
医師の診断サポートとしてAIシステムを活用すれば、診断時間の短縮や誤診・見落としの防止に役立てることも可能です。
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今後の医療業界におけるIT化の動向
今後、少子高齢化が進むと人手不足による医療の質の低下や、労働環境の悪化などが懸念されており、医療のIT化の必要性はさらに高まるといわれています。一方、医療のIT化にともなって懸念されるのが、患者の個人情報の漏えいや改ざんです。そこで、厚生労働省では医療情報システムの安全管理に関するガイドラインの整備を進めています。
また、医療の質の向上やアクセシビリティの確保を目的とした規制の緩和も進められています。たとえば、2020年4月には、オンライン診療の特例的な取り扱いを厚生労働省が認めました。医療業務のシステム化は、医療従事者の働き方改革の推進にとっても待ったなしの状況です。医療崩壊のリスク回避のため、医療業界のIT化はますます重要視されるでしょう。
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まとめ
少子高齢化や感染症の拡大により、医療のIT化の必要性は増しています。しかし、人材の不足やデータセキュリティの問題に対し、対応しきれていない現状もあります。
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