2022年から、高等学校で「探究学習」の授業が本格的に始まりました。教育に携わる方であれば、すでに聞き馴染みがある言葉かと思います。しかし、なかには従来の教科学習と比較して何が違うの? 探究学習の特徴が実はよく分からない...という方も、いらっしゃるかもしれません。ここでは、探究学習の基本や教科学習との違い、探求学習の進め方や事例などをご紹介します。生徒にとって有意義な探究学習を実行するための、ご参考になれば幸いです。
目次
ICT教育のお悩みは、KDDI まとめてオフィスにご相談ください
探究学習とは
探究学習とは、生徒自身が設定した課題を調査・分析し、周囲の生徒と話しあったり協力しあったりしながら、解を導き出す学習方法です。教師が用意した課題ではなく、自分が見つけた課題を解決することが探究学習のポイントです。
2022年から、高等学校で「総合的な学習の時間」を「総合的な探究の時間」に変更し、新たに実施することが、新学習指導要領で規定されました。2019~2021年は、新学習指導要領への移行期間として扱われます。また「古典探究」「地理探究」「日本史探究」「世界史探究」「理数探究基礎」「理数探究」の、6つの探究学習科目が新設されました。総合的な探求の時間と、新設された6つの探求科目は「探求」の違いを踏まえて取り組む必要があります。
文部科学省は、小学校・中学校でも探究学習に取り組むよう求めています。小学校・中学校の探究学習は「総合的な学習の時間」という科目名で実施されています。
参考:【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説
探究学習の課題(テーマ)
多くの学校では、課題(テーマ)があらかじめ決められています。生徒は、学校ごとの課題に沿う「自分なりの課題」を設定したうえで、探究学習に取り組みます。学校ごとの課題は「職業」「国際理解」などです。
自分なりの課題は、教師が用意したいくつかの課題の中から選ぶ場合もあります。探究学習に不慣れな小学生のうちは、教師が用意した課題から始めるケースも少なくありません。
総合的な学習の時間と総合的な探求の時間の違い
高等学校における総合的な探求の時間では、それまでの総合的な学習の時間と比較し、より生徒の探求の質の向上が求められます。質の向上のためには、具体的に以下の2つのポイントで考えることが必要だと定められています。
<高度化した探求>
- 整合性:目的と解決方法に矛盾がない
- 効果性:資質・能力の適切な活用
- 鋭角性:焦点化し深堀をする
- 広角性:広い視野で可能性を考慮する
<自律的な探求>
- 自己課題:自身と関わり深い課題になる
- 運用:過程を見据え自身の力で推進する
- 社会参画:得られた知見を生かした社会参画
総合的な探求の時間と6つの探求科目の違い
新設された6つの科目は、各科目の理解をより深めるために、探求を重視するように見直しが図られたものです。対して総合的な探求の時間は、以下の3つの点で異なります。
1 学習の対象・地域
特定の科目や教科に留まらない。
自身が関わりを持つ実社会・実生活などを対象とした、横断的で総合的な探求。
2 見方・考え方
複数の教科や科目の見方・考え方を取り入れ、実社会・実生活のなかにある
さまざまな問題を多角的、かつ俯瞰して捉える。
3 唯一の正解が存在しない
総合的な探求の時間は、唯一の解が存在しない課題に時間をかけて取り組み、
生徒なりの最適解や納得解を見出すことを重視する。
探求学習を助けるICTツールの導入は、KDDI まとめてオフィスにおまかせください
探究学習の実施状況
2019年の「探究学習白書」で実施された調査の結果、約7割の高等学校が「今のところ実施予定はない、わからない」と回答しました。探究学習の準備が進まない理由として、以下が挙げられます。
・学習範囲が広く、教師の理解が追いつかない
・学習スケジュールの立案が難しい
・どのように成果を評価してよいかわからない
・探究学習に関して保護者の理解を得られない
・探究学習に協力してくれる機関が見つからない
・探究学習への準備にあてる時間がない
参考:2019年度、高校における探究学習科目の実施状況 - 一般社団法人 英語4技能・探究学習推進協会 (ESIBLA)
探究学習と教科学習の相違点
探究学習と教科学習の相違点について、スキルや能力の面から解説します。
探究学習で養うスキルや能力
探究学習では、各科目の枠を超えた課題解決能力が身につきます。探究学習の課題設定・情報収集・まとめ・発表という体験を通じて、主体性や実行力を養うことが可能です。グループで探究学習に取り組むことで、コミュニケーション能力も養われると期待されています。
教科学習で養うスキルや能力
教科学習は、詳細な学習内容があらかじめ決められており、教師が主体となって進める学習方法です。教科学習では、各科目の専門的な知識やスキルが身につきます。また、各科目の特徴に基づく課題解決能力も得られます。
探究学習が始まった背景と必要性
探究学習が始まった背景は、主体性や実行力のある人材を育てることを、社会が期待しているためです。不確実性が高く、目まぐるしく変化する今の世の中では、自分なりに状況を読み取り、考えて、自律した行動をとれる人材が求められています。その傾向は今後ますます高まっていくことでしょう。
新しい技術の登場や国際化など、子どもたちを取り巻く環境が多様化する時代に、教科学習で得られる課題解決能力だけでは、うまく対応できないケースが増えていくと予想されています。
探求学習を助けるICTツールの導入は、KDDI まとめてオフィスにおまかせください
探究学習を導入するメリット
探究学習を導入すると以下のメリットが得られます。
・学習へのモチベーションアップ
・学力向上
・進路について考える機会の増加
・豊かな心の育み
探究学習では、生徒自身が興味のある課題に取り組むため、探求のモチベーションがアップします。学ぶ楽しさを知ることで、従来の教科学習における学力の向上も期待されています。学校ごとの課題に「職業」がありました。職業について深掘りできると、進路について考えるきっかけにもつながります。
さらに、グループで課題に取り組み、成果を発表し合うなかで、さまざまな視点や考え方に触れ、生徒は「多様性」を意識するようになります。
探究学習の4つのステップ
文部科学省の資料の「第2節 探究的な学習における学習指導」に基づき、探究学習の4つのステップについて解説します。
参考:今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開(高等学校編) 第1編第2章-1
1.課題の設定
多くの場合、生徒自身が課題を決めます。体験学習・統計などのデータの閲覧・ブレインストーミングなどの経験を基に、生徒は課題を考えます。課題に求められる条件は以下のとおりです。
・生徒の日常や将来に関係する
・さまざまな結論が予想される
探究学習に不慣れな小中学生には「身の回りのことで興味があることを探してみましょう」など、教師の誘導が求められます。
2.情報の収集
正しい情報を適切に得ることも、探究学習の狙いのひとつです。情報収集の例を以下に示しました。
・街頭で不特定多数にインタビューする
・電話で専門家や関係者にヒアリングする
・図書館や図書室を利用する
・インターネットで検索する
・講演会やセミナーに参加する
・実験や実習に参加する
情報を収集する際は基本的なスキルが必要です。たとえば、インタビューする際の他者へのマナーや、収集した情報を蓄積する方法などについて、事前に生徒に教えておく必要があります。
3.整理・分析
グラフや図形などを使い、収集した情報を生徒に整理させます。手法をよく理解していないと、整理・分析に時間を取られすぎて結論に至らない場合もあります。あらかじめ整理・分析のやり方を生徒に教えておきましょう。
整理・分析を実施すると、情報の傾向や規則性を導き出せます。課題解決に向けて不足している情報があれば、追加の情報収集も検討しましょう。
4.まとめ
まとめでは、探究学習の一連の流れをまとめて発表します。新聞やポスター、Webサイトの作成などまとめ方はさまざまです。
意見交換すると課題に対する新たな観点に気がつき、多様性への理解につながります。また、発表を通じて論理的に話をくみ上げる技術や表現力も養われます。
まとめ・発表・意見交換まで時間を取れるように、探究学習全体を通じて時間配分に気をつけてください。特に情報収集や整理・分析には時間がかかるため、あらかじめ時間配分を決めておきましょう。
探求学習を助けるICTツールの導入は、KDDI まとめてオフィスにおまかせください
探究学習における教師の3つの役割
探究学習における教師の役割について、コーチング・ティーチング・ファシリテーションの3つを解説します。
1.コーチング
コーチングでは、教師は生徒の自発的な活動を促します。答えそのものを教えず、生徒自身が無意識に考えている内容に気づかせることがコーチングの狙いです。適切なコーチングは生徒の主体性を促し、モチベーションを高めます。たとえば、課題設定の際にコーチングすると、生徒は自然に課題を決められます。
2.ティーチング
探究学習におけるティーチングとは、探究学習の進め方を指導することです。教科学習のティーチングとは異なり、専門的な内容を教える訳ではないと理解しておきましょう。生徒が基本的な進め方を理解していないと探究学習が進みません。
3.ファシリテーション
ファシリテーションとは、グループワークや発表の場を取りまとめる役割です。教師は中立の立場で生徒に意見を求め、話が脱線しないようにサポートしましょう。ファシリテーションなしでは、学習の進行が遅れてまとめまで到達しなかったり、まとめが思うようにできなかったりする恐れがあります。
探求学習を助けるICTツールの導入なら、KDDI まとめてオフィスにおまかせください
探究学習の4つのコツ
探究学習の4つのコツを紹介します。探究学習におすすめのICT教材についても解説します。
1.教師が探究学習のステップを理解する
教師自身が、探究学習と教科学習の違いを理解しましょう。教師には、コーチング・ティーチング・ファシリテーションの3つの役割があります。役割を理解したうえで探究学習をサポートすると、質のよい学びにつながります。
2.探究学習のサイクルを繰り返す
「探究学習の4つのステップ」を繰り返すと、新たな課題の発見と探究につながります。また、探究学習の繰り返しは、成功体験の蓄積に欠かせません。自分なりの取り組みで課題解決できたと自信をもてると、主体性のある行動を取れるようになります。
3.体験活動を重視する
課題設定や情報収集のステップでは、体験活動を重視しましょう。体験活動では、教室では得られない気づきを得られる可能性があるためです。体験活動には、ボランティア活動・農業などの自然体験・就業体験・伝統工芸など文化や芸術に関する体験が挙げられます。
4.ICT教材を活用する
まとめまで完了してこそ、探究学習が成功したと言えます。効率よく質の高い探究学習には、ICT教材が役立ちます。
タブレットやノートパソコンなどのICT教材の活用は、情報収集や思考の整理におすすめです。たとえば、ICT教材があればインターネットを使って情報収集ができます。端末で写真撮影をしたり、動画機能を使うと、そのままの情報を残せます。思考の可視化や整理には、マインドマップツールも便利です。
「学校×KDDI まとめてオフィス」の探究学習の事例
学校法人 神村学園は、探究学習にタブレットとICT教材を活用しています。学園の近くには大きな図書館はありませんが、タブレットがあればインターネットを使って情報収集ができます。データのグラフ化や、まとめ用の資料作成にもタブレットは便利です。
探究学習だけではなく、ペーパーレス化や、データを活用した授業などにも、タブレットやパソコンといったICT教材が役立っています。
詳しくは以下をご確認ください。
【導入事例】「タブレットを導入し生徒に変化が現れ始めた」学校法人 神村学園
まとめ
2022年から高等学校で始まった探究学習は、生徒の主体性を促すだけではなく、他の科目を学ぶモチベーションも高めることが期待されています。質の高い探究学習の実現に向けて、タブレットの活用やICT教材の導入を検討してはいかがでしょうか。
KDDI まとめてオフィスでは、探究学習に役立つタブレットやパソコン、ICT教材をご提供しています。選定から導入、その後の活用までをワンストップでサポートします。KDDIが長年培った高品質でセキュアな通信を軸に、クラウド・セキュリティなどのITソリューションや、学校に必要な什器・備品まで、豊富なラインアップをご用意。課題を抱えた学校様は、ぜひお気軽にご相談ください。
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。