STEAM教育を意識した科目を取り入れる教育機関が増えてきました。文部科学省は、STEAM教育を推進する取り組みを数多く実施しています。しかし、学習指導要領の改訂ポイントなど、施策内容が今ひとつ分からない人も多いのではないでしょうか。ここでは、文部科学省がSTEAM教育に注力する理由を踏まえ、文部科学省の施策・取り組みを解説します。質の高いSTEAM教育に向けて参考にしてください。
目次
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文部科学省が重視するSTEAM教育とは
STEAM教育の目的は、急速に発展する技術や多様化する社会に対応できる人材を育成することです。文部科学省のサイトでは、STEAM教育の目的について以下のように記載されています。
「AIやIoTなどの急速な技術の進展により社会が激しく変化し、多様な課題が生じている今日、文系・理系といった枠にとらわれず、各教科等の学びを基盤としつつ、さまざまな情報を活用しながらそれを統合し、課題の発見・解決や社会的な価値の創造に結び付けていく資質・能力の育成が求められています。」
引用:STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進:文部科学省
STEAM教育の5つの要素
STEAM教育は、5つの科目の頭文字から名付けられました。
・S(Science):科学
・T(Technology):技術
・E(Engineering):工学
・A(Art):芸術や教養
・M(Mathematics):数学
Scienceでは、光の屈折や反射、熱の伝搬などの自然現象の法則を学びます。Technologyでは、ものづくりに関する技術を学びます。ものづくりからステップアップした機械設計や機械工作に関する内容は、Engineeringの学習範囲です。
Artは芸術的な範囲に限定される場合もあれば、政治や経済のような文化的な教養が含まれる場合もあります。Mathematicsでは、数量や空間図形の性質、プログラミング教育などを学びます。
STEM教育とSTEAM教育との違い
STEM教育は、STEAM教育の前身となる概念です。STEM教育とSTEAM教育との違いは、Artがあるかないかです。
「柔軟にものごとを進めるには、学術的な知識に加え芸術的な考えも必要である」との考えに基づき、STEAM教育ではArtが取り入れられました。また、課題に気がつくためには、文化的な教養も必要であると認識され、Artのなかには教養も含まれています。
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文部科学省がSTEAM教育を推進する理由
文部科学省がSTEAM教育を推進する理由は、AIやIoTが普及する時代で活躍できる人材を育てるためです。STEAM教育では、少子高齢化や地方の過疎化などの社会問題を解決するために役立つ内容を学びます。また、グローバル化する社会で活躍するためには、創造性やチャレンジする意欲も大切です。STEAM教育では、科目の枠を横断して考える力や、新しい視点で課題を探し解決へ導く力を重視します。
STEAM教育に関する文部科学省の取り組み
以下では、STEAM教育に関する文部科学省の取り組みの一部をご紹介します。
学習指導要領の改訂
近年改訂された学習指導要領には、総合的な学習(探究)の時間の導入のように、STEAM教育を反映した内容が見られます。
→こちらも併せて読みたい「探究学習と教科学習の違いとは?探究学習を進める4つのステップ・学習のコツを解説」
総合的な学習(探究)の時間の導入
小学校・中学校では「総合的な学習の時間」、高校では「総合的な探究の時間」として、探求学習が実施されています。
探求学習が必修化された背景には、生徒の主体性と課題解決能力を鍛えることがあります。生徒は自分で設定した課題について情報を収集・調査した上で、調査結果の分析とまとめ、発表や意見交換までを実施します。課題設定・調査・分析・まとめ・発表などの過程を通じて、社会へ出てからも自ら課題を発見し、考え行動できる人材が育てることが狙いです。
理数教育の強化
「Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」では、小学生から理数関連の好奇心を養い、高校生からは本格的な学習を実施する流れが示されました。
例えば、改訂された学習指導要領では、小学生の「プログラミング教育」や、高校生の「情報Ⅰ」が必修化されています。情報Ⅰでは、プログラミングの実践に加え、基本的なネットワークやITリテラシー、ビッグデータの活用方法なども学びます。
参考:Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ
SSH・SGHの指定
SSH(スーパーサイエンスハイスクール)は、科学技術系に秀でた人材育成を目的としています。SGH(スーパーグローバルハイスクール)の目的は、グローバルな人材の育成です。SSH・SGHとも、大学や研究機関と連携して最先端の学びを得られます。全国の高校からの応募に対し、文部科学省は申請計画に基づく審査により指定校を決定します。
WWL コンソーシアム構築支援事業の実施
WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業の目的は、イノベーティブでグローバルな人材の育成です。
事業では、高校と国内外の大学・企業、国際機関などのネットワークが構築されます。ネットワークの形成により、高校生への有意義な学びの提供が可能です。文部科学省は、オンライン・オフラインを通じて、すべての高校生が高度な学びを受けられる環境の実現を目指しています。
STEAMに関する情報の発信・情報の見える化
文部科学省は各機関と連携して、以下のようなサイトでSTEAM教育に関する情報を発信しています。
・子供の学び応援サイト
・学校と地域でつくる学びの未来
・SSH卒業生 活躍事例集
・みらプロ
・経済産業省STEAMライブラリー
・NHKドスルコスル
例えば、経済産業省が提供する「STEAMライブラリー」では、STEAM教育に役立つ情報を検索できます。「STEAMライブラリー」の情報を活用すると、資料を準備する教員の負担を減らせるだけではなく、生徒も幅広く情報を閲覧できます。
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世界に後れをとる日本のSTEAM教育
日本ではSTEAM教育に対する理解が後れているという事実があります。また、中学生に対して実施された「国際数学・理科教育動向調査」によると、日本では理数科目に興味を示さない生徒の割合が高いという結果が出ています。
調査では各国の中学生にアンケートを採り、「数学を使うことが含まれる職業につきたい」「理科を使うことが含まれる職業につきたい」と回答した生徒の割合をそれぞれ算出しました。具体的には、2019年時点のデータを確認すると、「数学を使うことが含まれる職業につきたい」の割合は、日本が23%、国際平均が49%でした。また、「理科を使うことが含まれる職業につきたい」の割合は、日本が27%、国際平均が57%となっており、中学校の国際平均と比べると、日本では理数系の仕事を希望する生徒が少ない傾向にあることが分かります。
世界のSTEAM教育の状況
上述したように、世界と比べると日本のSTEAM教育は後れていると言わざるを得ません。例えばアメリカでは、国家戦略とするほどSTEAM教育が重視されています。
ドイツでは対面型の授業から個人に対応した授業にシフトし、プロジェクト方式の学習も展開されました。また、韓国では2009年から小・中・高校で「創造的な体験活動」の時間が始まっています。
日本においても、今後ますますSTEAM教育の認知拡大と、推進がされていくことが予想されます。
参考:新学習指導要領の趣旨の実現とSTEAM教育について-「総合的な探究の時間」と「理数探究」を中心に-
日本におけるSTEAM教育の2つの課題
日本でSTEAM教育を推進するためには、STEAM教育に対する教員の理解と、ICTツールの普及が望まれます。
課題1.STEAM教育に対し教員が理解を深める時間が足りない
生徒や保護者だけではなく、教員自身もSTEAM教育への理解が進んでいない状況です。理解が進まない理由の1つが、日々の授業やその他の業務に時間を取られ、STEAM教育にまで手が回らない教員が多くいるということです。教員不足も教員一人あたりの業務量増加に拍車をかけています。教員がSTEAM教育への理解を深めるには、「STEAMに関する情報の発信・情報の見える化」でご紹介した、「STEAMライブラリー」などが役立ちます。ただし、理解を深めるための時間をいかに生み出すかという点は引き続き課題となります。
課題2.ICTツールが活用されていない
創造的な表現や論理的な思考を養う活動において、タブレットなどのICTツールを活用することで学びの手法を広げることが可能です。しかし、ICTツールが十分に足りない、教員がICTツールを活用できない、などの問題を抱える現場もあります。必要十分なICTツールを導入できたとしても、教員一人ひとりのICTツールに対するスキルと、リテラシーを向上させなければ、効果的な利用につながりません。STEAM教育を推進し、目的を果たすためには、教員の利活用を促進するための工夫が求められます。
KDDI まとめてオフィスでは、2022年9月に「まなびのミライ~学校交流会~」を開催しました。経済産業省にて『未来の教室』プロジェクトを推進された浅野氏にご登壇いただき、ICTの活用についてご講演いただきました。
→こちらも併せて読みたい「【前編】「まなびのミライ」セミナーイベント開催リポート ~現場の視点からICT教育の目指すべき姿と教育改革を考える~」
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STEAM教育の成り立ち
STEAM教育の成り立ちを、前身となるSTEM教育を踏まえて解説します。
STEM教育への注目
STEM教育の目的は、科学技術の発展を目的にアメリカで提唱されました。STEMとは、Science(科学)・Technology(技術)・Engineering(工学)・Mathematics(数学)の4つの言葉の頭文字を示しています。オバマ元大統領がSTEM教育の重要性を演説したことで、STEM教育に注目が集まりました。
STEAM教育の提唱
2006年~2008年、アメリカでSTEM教育にArtを加えた「STEAM教育」という用語が、G・ヤークマン氏によって提唱されました。G・ヤークマン氏が、STEMとリベラルアーツ(Arts)を統合したピラミッドのフレームワークを開発し、提唱したSTEAM教育によると、Artは芸術に限らず、文化や哲学などの教養全般を示しています。従来、STEMと「Arts」は対極にあるものと考えられてきましたが、「意味を昇華させる」「体を使って知覚する」など、芸術的スキルがSTEM領域の学びに有効であると指摘されるようになり、「STEAM教育」は広く認知され、浸透していきました。
参考:STEAM教育の展望~超スマート社会を生き抜く「人材5.0」になるために~
日本でもSTEAM教育に対する取り組み開始
2018年に文部科学省が発表した「Society5.0に向けた人材育成 ~社会が変わる、学びが変わる~」において、STEAM教育に対する取り組みが発表されました。
また、学習指導要領が改訂されました。2022年現在、すでに全国の小学校・中学校・高校では新学習指導要領に基づく学習に切り替わっています。
まとめ
文部科学省は不確定要素の多い現代を生き抜く人材を育成するため、STEAM教育を推進しています。STEAM教育の推進には、教員の理解を深めることに加え、ICTツールの導入・活用が必要です。
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※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。