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電子帳簿保存法の猶予期間とは?猶予を受ける方法や必要な準備・手順などを解説

電子帳簿保存法の猶予期間とは?猶予を受ける方法や必要な準備・手順などを解説

2023年01月30日掲載(2024年08月15日更新)
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。

電子 帳簿 保存 法 猶予

電子帳簿保存法では「2年間の猶予」が設けられています。しかし、何のために猶予期間があり、猶予期間のあいだに何をしたらよいのかわからないと、悩んでいる方も多いかもしれません。本記事では、電子帳簿保存法の概要や2年間の猶予について解説するとともに、猶予期間が設けられた理由などをご紹介します。あわせて、猶予を受ける方法や猶予期間中に企業が準備すべきこと、対応手順なども解説していきます

目次

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電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法は略称であり、正式には「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」と言います。令和3年度に税制が改正され、2022年(令和4年)1月から施行されました。

国税関係帳簿書類とは、税法により書面として保存することが定められている書類です。たとえば、現金出納帳などの帳簿、帳簿作成のために必要な請求書などが挙げられます。これらの帳簿や書類をデータとして保存することを認めている法律が電子帳簿保存法です。

改正により電子データの保存が義務化

法律の改正前は電子データの保存は義務ではなく、電子データで作成した帳簿などを国税関係帳簿書類として認めるという内容でした。しかし、電子帳簿保存法の改正によって電子データでの保存が義務化されています。

改正前は、電子取引について電子データの書類を出力、紙ベースで保存していれば国税関係帳簿書類の保存要件を満たしていました。改正後は、電子取引におけるすべての取引データを、「電子データ」として保存することが義務付けられています。

電子帳簿保存法の「2年間の猶予」

電子帳簿保存法には2年間の猶予が設けられています。2年間の猶予が何を意味するのか、具体的に解説します。

「2年間の猶予」は電子化の準備期間

電子帳簿保存法の改正によって、以下の4つの保存要件を満たした状態で電子データを保存する必要があります。

1.システム概要に関する書類の備え付け
2.見読可能措置の備え付け
3.検索機能の確保
4.データの真実性を担保する措置

たとえば、取引年月日・取引金額・取引先を付して検索できるようにする、タイムスタンプを付与するなどの対策を講じなければなりません。書類の電子化には準備期間を要するのが一般的であり、場合によっては要件を満たすための新しい機器やシステムの導入が必要となるケースもあります。

「2年間の猶予」の内容

「2年間の猶予」を含む宥恕(ゆうじょ)措置の内容は以下のとおりです。

・電子保存できない場合は書面での保存を容認する
・書面は規則性があり、文字を識別できること
・書面は税務調査などで提示できること
・電子保存できない事情を説明できること
・猶予期間は2022年1月1日~2023年12月31日の2年間

簡単に解説すると、「2022年1月1日から2年間は、電子取引の保存要件を満たせない止むを得ない事情がある場合には、今までどおり書面での保存を認める」という内容となっています。電子帳簿保存法の改正自体はスケジュールに沿って行われますが、電子保存に対する準備が整わない企業にも配慮した内容となっています

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電子帳簿保存法の「2年間の猶予」の理由

電子帳簿保存法の改正時に、なぜ「2年間の猶予」が盛り込まれたのでしょうか。ここでは、2つの理由を解説します。

電子化未対応の企業への配慮

2年間の猶予が行われた1つ目の理由は、電子取引のデータ保存について、電子化が間に合わない企業が多くあるためです。前述したように、電子取引データを電子データとして保存するためには、新しいシステムや機器を導入する必要があるなど、準備に一定の期間を要します。しかし、企業では電子データ保存の準備が進んでおらず、システムが導入できず準備期間が足りないという指摘が多くありました。

そこで、2021年12月の財務省令で「電子取引における電子保存の義務化」に宥恕措置が認められました。電子化に対応するための準備期間として「2年間の猶予」が設けられ、2023年12月末まで実質延長されています。

インボイス制度に向けた整備

2023年10月1日からインボイス制度が始まります。インボイス制度に向けた整備を進めることも「2年間の猶予」が設けられた理由の1つです。インボイス制度とは、仕入額控除を受けるための制度のことで、正式名称は「適格請求書保存方式」と言います。

インボイス(適格請求書)を発行、もしくは保存することで消費税の仕入額控除が受けられるようになる制度です。インボイスとは、売手が買手に対して正確な適用税率や消費税額などを伝える書類やデータのことで、請求書やレシートなど一定の事項が記載されていれば種類は問いません。

インボイス制度の開始によって従来の税額計算方法と違いが出てくるほか、免税事業者と課税事業者を分けて処理する必要もあり、経理業務の負担が増えることが予想されています。そのため、経理業務が煩雑化することを念頭に、電子帳簿保存法が改正されたという側面もあると言えます。

電子帳簿保存法で「2年間の猶予」を受ける方法

電子帳簿保存法で「2年間の猶予」を受ける場合、どうすればよいのでしょうか。「2年間の猶予」を受ける方法について解説します。

「2年間の猶予」は届出が不要

電子保存義務化を実施できない場合、原則として届出は不要です。当初は「電子保存できない止むを得ない理由」について、税務署へ届け出た場合に「2年間の猶予」を認めるという方針でした。

しかし、令和4年度における税制改正大綱での「引き続き手続きを要せずに、出力書面などによる保存を可能とする」という但し書きによって届出の必要がなくなり、特別な手続きをすることなく「2年間の猶予」が認められるようになっています。

参考:令和4年度税制改正大綱|国税庁

書面での保存が求められる

「2年間の猶予」では「止むを得ない理由」がある場合には、書類を電子保存しなくてもよいとされています。前述したとおり、猶予を受けるために届け出をする必要はないものの、従来どおり紙ベースによる保存が求められる点には注意しましょう。

ただし、猶予期間中に電子取引を紙ベースで保存していると、猶予期間終了後に経理業務の手間が増加すると考えられるため、できるだけ早めにシステムやサービスを導入して電子保存への対応を進めることが大切です。

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電子帳簿保存法の猶予期間に企業が準備すべきこと

電子帳簿保存法の猶予期間中に企業が準備すべきことは、経理業務の電子化とペーパーレス化の2つです。

経理業務の電子化推進

猶予期間の終了後には、電子取引の電子データ保存が義務化されます。その際には、電子データ・紙のそれぞれについて要件ごとの対応が必要です。経理業務の複雑化が予想されるため、猶予期間中に経理業務の電子化を進めるとよいでしょう。猶予期間の終了時には、電子化への移行が完了した状態になっていることが望ましいとされています。

ペーパーレス化を進める

国税関係書類にあたる取引関係書類には、請求書や領収書、契約書、見積書、注文書、納品書などがあります。紙ベースによる保存は、火災や自然災害などによる被災時の紛失をはじめ、書類を持ち出した際の盗難被害などのトラブルが考えられますが、ペーパーレス化によってこのようなトラブルは防げます。

また、ペーパーレス化は書類を管理する担当者の負担軽減にも効果的です。ペーパーレス化によってテレワーク化も可能となり、結果として業務効率化・生産性向上の実現に近づけます。

電子帳簿保存法やインボイス制度に対応する手順

電子帳簿保存法やインボイス制度に対応するためには、どうすればよいのでしょうか。電子帳簿保存法などへの対応手順を解説します。

電子取引の電子化を完了

電子取引の電子化に対応するには、電子保存のために必要な機器やシステムなどを揃えましょう。また、機器などを揃える以外に、電子化に対応した業務フローへの変化が必要なケースもあります。

猶予期間が終わる2024年1月からは、電子取引情報保存が義務化されます。完全義務化のあとに、電子保存に対応しなかった場合には罰則があるため注意しましょう。たとえば、青色申告の承認取り消し、電子データの改ざんなどが判明した場合には追徴課税に10%の加重、不備がある場合は推計課税などが科されます。また、会社法により過料が科せられるケースもあります。

ペーパーレス化を拡大

電子取引の電子化についての対応を行ったあとは、ペーパーレス化を進めていきましょう。電子取引の電子保存をきっかけとして、ほかの分野や区分についても電子化を進めることが重要です。ペーパーレス化を進めることで、電子保存の基盤が整備されていきます。紙ベースで帳簿のやりとりをしているとペーパーレス化が進みにくいので、帳簿の受け渡しをオンライン上で行う仕組み作りも進めましょう。

インボイス制度に向けた整備

2023年10月からはインボイス制度が開始されるため、最終的にはインボイス制度に向けた整備を進めていきましょう。インボイス制度の開始により、経理業務の負担が大きくなると考えられます。インボイス制度の対応には期間を要すると考えられるため、3カ月以上の期間を確保することがおすすめです。制度の開始3カ月前までを目安として対応を開始しておくとよいでしょう。

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まとめ

電子帳簿保存法により、電子取引の電子データ保存が義務付けられます。2年間は猶予期間が設けられていますが、それ以降は義務化されるため、電子取引の電子化やペーパーレス化などの対応を進めていきましょう。

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