勤怠のクラウド化が事業成長DXにつながる理由とは?―260万人以上が利用する勤怠管理システムベンダーが語る
今や多くの企業が取り組んでいるDX(デジタルトランスフォーメーション)。デジタル化の波に乗り遅れた日本企業も「2025年の崖」や新型コロナウイルスに端を発する経済危機によって、本腰を入れた経営改革を余儀なくされました。そして、どの業界・企業でも共通して改革が必要になるのがバックオフィスのDXです。
「バックオフィスのDXは、事業の成長に直結します」
そう語るのはクラウド型勤怠管理システム(以下、勤怠管理クラウド) 「KING OF TIME」を提供する株式会社ヒューマンテクノロジーズの池上氏。そして、バックオフィスのDXの第一歩として着手する取組こそが勤怠管理のクラウド化だといいます。
勤怠管理をクラウド化することで、経営にどのようなメリットがあるのか、働き方はどう変わるのか。今回は池上氏に勤怠管理クラウドとDXの関係性について伺いました。
株式会社ヒューマンテクノロジーズ 池上 昌彦 氏
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組織の基盤となるデータを、効果的・効率的に収集できる勤怠管理クラウド
―まずは勤怠管理クラウドが国内でどの層に普及しているのか教えてください。
今や大企業はもちろん、従業員100名以下の中小企業層も勤怠管理クラウドを活用しています。私たちのお客さまにも従業員100名以下の中小企業さまが多数いらっしゃいます。フリーランスや個人事業主でもない限り、組織を持つ企業なら私たちのお客さまになりえますし、実際に3名の組織で導入いただいているお客さまもいらっしゃいます。
業界別に見ると、建設業や運送業といった働き方改革法案の規制が2024年まで先延ばしになっていた業界が、来年に向けて勤怠管理のシステム化を急ピッチで進めている印象です。また、働き方改革だけでなく、DXの第一歩として勤怠管理クラウドに注目している企業も少なくありません。
―なぜ勤怠管理クラウドがDXの第一歩になりうるのでしょうか。
DXの第一歩はデータの収集です。そして、勤怠データは組織の基盤となる総務・人事・労務などバックオフィス業務と密接に関わるデータになります。つまり、勤怠データは組織の構成や経営の戦略を立てる際のベースになり、組織全体の下地になるためDXに欠かせないのです。
また、勤怠というのは雇用形態にかかわらず、全社員が関わるものですよね。そのため、勤怠データをもとにした改革は効果が実感しやすいのも特徴です。加えて定型業務の多いバックオフィスの業務は、システム化することでコスト削減や効率化を実感しやすいのもDXの第一歩にふさわしいといえる要因です。
―収集した勤怠データをどのように活用できるのか教えてください。
従業員の勤怠がリアルタイムで可視化されるため、例えば残業時間が多い社員がいればすぐに気づくことができ、業務負荷の分散や働き方の改善策を提示できます。もしも残業時間の多い部署があれば、働き方の課題が浮き彫りになるため、組織全体の働き方改革にもつながるでしょう。
また、勤怠データというのは業務を可視化したものです。非効率な業務があれば一目瞭然になりますし、経営戦略を立てる際の判断材料になります。勤怠管理クラウドを導入することで、DXのために今後とるべきアクションが自ずと見えてくるでしょう。
現場の働き方が変わる勤怠管理クラウドのメリットとは
―勤怠管理クラウドを導入することで、現場が実感できるメリットを聞かせてください。
最大のメリットは、勤怠管理の業務効率化です。勤怠管理クラウドを導入することで、手書きやタイムカードで勤怠を管理するのに比べ、格段に集計作業や管理の手間が省けることです。スマートフォンやパソコンから簡単に打刻できるため、手書きによる記入ミスが防げるだけでなく、プッシュ通知で従業員の打刻忘れも防げます。後から確認や修正をする必要もありません。
従業員にとっては、スマートフォンから打刻できるので、わざわざ出先から帰社する必要もなくなります。作業現場や営業先から直帰できますので、働き方も大きく変わるはずです。
―効率化以外のメリットもあるのでしょうか。
労働時間を適正に管理することで、従業員の過重労働やトラブルを未然に防げるため、最終的に会社を守ることにつながります。長時間労働や残業代の未払いといったトラブルが発生してしまうと、労基署の監督指導が入ったり、訴えられてしまうケースも少なくありません。さらに今後は労働人口が減少していくことも見込まれているため、より従業員が働きやすい環境を作ることが大切です。
従業員もシステムを利用すれば自身で残業時間や有休の残日数も確認でき、簡単に申請できるため、自分の働き方を見直せるのもメリットといえるのではないでしょうか
また、システム上で残業代や有給の残日数も確認できるため、自分の働き方を見直せるのもメリットといえるのではないでしょうか。
導入がゴールじゃない。新しいシステムを社内で浸透させるコツとは
―勤怠管理クラウドを導入しても、社内で活用されずに苦労している企業も多いのではないでしょうか。システムを浸透させるために何が必要なのか教えてください。
最も重要なのは経営者と推進担当者のコミットです。デジタル化に対し経営者が否定的だとうまく進まないですし、担当者が「社長に言われたから」と仕方なく進めても、うまくいきません。
勤怠管理クラウドを浸透させることで、経営層にも担当者にもメリットがあるという共通認識をつくり、しっかり社内でコミットすることが重要です。業務が効率化することで社員の負担が減り、より生産性の高い仕事に集中できれば、会社全体の効率化につながるでしょう。
―コミットをした上で、勤怠管理クラウドを導入する際の注意点はありますか?
まずは勤怠管理クラウドを使って実現したいことを、一つに決めることです。当社の「KING OF TIME」含め、現在の勤怠管理クラウドは多様な機能を搭載しており、様々な改革が可能になります。しかし、手広く取組を始めることで全てが中途半端になり「結局何がしたかったんだっけ」と最初の目的を見失うケースも少なくありません。
クラウドを導入する際に、まずは実現したいことを一つに決めて、それを達成できたら次の目標を決める。そのようにステップを踏むことで、目標を達成するごとに自信にもつながり、スムーズに導入が進み、その先のDXへとつながると思います。
―システムに抵抗のある従業員から理解を得るコツもあれば教えてください。
勤怠管理クラウドを使うことで、それを利用する従業員にどんなメリットがあるか伝えることが重要です。先ほどもお伝えしたように、スマートフォンのアプリから簡単に打刻できるため、出先からわざわざ帰社しなくていいなど、従業員目線でのメリットを伝えてください。メリットを実感できれば、システムに不慣れな方でも抵抗なく始められると思います。
また、いきなり全社で始めるのではなく、若い人が多い部署でスモールスタートするのもおすすめです。いくつか部署があるなら、年齢が若くシステムに抵抗のない部署から導入してみてください。一部のチームでメリットを感じてもらえば、それを見た他の部署にもスムーズに浸透するはずです。
―隣で便利なシステムを使っていたら、自分たちも使いたくなりますね。
はい。他にも勤怠管理システムと一緒に、チャットツールを導入するのもおすすめです。新しいシステムに抵抗を感じるのは「使い方が分からなかったらどうしよう」と不安になっているケースも少なくありません。分からないことがあった時に、電話よりもチャットで気軽に聞ける体制を整えておくのがいいと思います。
近年の勤怠管理システムは使いやすいUIになっているため、実際に触ってみれば簡単に使えると思いますが、気軽に聞ける環境があるだけで安心できるはずです。
他のシステムと連携することで広がる勤怠データの可能性
―使いやすいシステムにするために、意識していることがあれば教えてください。
できる限り今までのアクションの中でスムーズに勤怠管理ができるように工夫しています。これまでにやったことのないアクションが発生してしまうと、従業員の方も抵抗を感じてしまうと思うので。
例えばLINE WORKSと連携しているのもその一つです。LINEであればプライベートで使っている方も多いので、社用のスマートフォンを支給し、LINE WORKSを社内コミュニケーションツールとして使用していれば、使い慣れたUIで打刻もでき、抵抗なく操作してもらえるはずです。セキュリティを高めつつ、ツール導入のハードルをぐっと下げることができるのではないでしょうか。社用のスマートフォンを支給し、LINE WORKSと連携すればセキュリティを高めつつ、従業員のメリットも高まるでしょう。
当社では、APIを公開しているので、普段利用しているツールと連携することで、社内でも浸透しやすくなると思います。
―LINE WORKSの他にAPI連携し、活用している事例はありますか?
お客さまの中にはチャットツールや温度検知のツールと連携している企業もあります。チャットツールで「おはようございます」と挨拶するだけで打刻するケースや、店舗やオフィスの入り口にある体温を測るカメラを使って自動で打刻するケースなどです。他にも給与システムと連携して、自動で勤務時間を入力して給与計算できるようにしている企業も少なくありません。
今後も多くのシステムと連携して、勤怠データをより企業経営に活用してもらえるとうれしいですね。例えばカウンセリングツールなどと連携して、夜遅くまで仕事している人にメンタルケアをすることで離職防止につなげるなど、幅広いAPI連携ができればと思っています。
―最後にDXを考えている会社に向けてメッセージをお願いします。
勤怠管理クラウドを入り口にバックオフィスはもちろん、本業のDXにつなげていってほしいと思っています。
今はテレワークも普及して、パソコンさえあればどこでも仕事ができる時代ですし、スマートフォンだけでも多くのことが完結できます。DXに向けてデジタル化を考えていく際は、従業員の多くが利用し、メリットを享受することができる部分からデジタル化に着手すること。そして、スマートフォンなどの従業員が持ち歩けるツールで効果を最大化することが重要です。
勤怠管理クラウドによってバックオフィスのDXが進めば、事業の成長にも必ず貢献してくれるでしょう。
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