テレワークを廃止する企業が増えている?デメリットと解決策を解説
近年、大企業の中ではテレワークを継続する企業が増えていますが、一方で企業規模によってはテレワークを廃止するところも出てきています。2024年1月時点における、テレワーカーを対象とした調査によると、週あたり3日以上出勤すると回答したテレワーカーの割合は、2023年7月の調査結果と比較して微増しています。また、年代別のテレワーク実施率の調査によれば、40代以上が微増したものの、20代や30代の実施率は変わらないか減少している、という結果でした。
(出典:公益財団法人 日本生産性本部 「第14回 働く人の意識に関する調査 調査結果レポート」)
当記事では、テレワークを廃止する企業が実際に増えているのかどうかや、テレワーク廃止のデメリットについて、実際のデータに基づきながら解説します。
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1.テレワークを廃止する企業は増えている
2024年1月時点でのテレワーク実施率は14.8%に減少し、特に中小企業では実施率の低下が目立っています。
100名以下の企業では前回(2023年7月の調査)の12.8%から9.4%に、101~1,000名の企業では15.5%から13.4%に減少しました。一方で、1,001名以上の大規模企業では22.7%から29.4%へと増加しました。中規模および小規模企業の減少率が高く、その影響により全体としてのテレワーク実施率は上昇していません。
(出典:公益財団法人 日本生産性本部 「第14回 働く人の意識に関する調査 調査結果レポート」)
1-1.企業がテレワークを廃止する理由
特に規模が小さい企業がテレワークを廃止する主な理由として、以下の2点が挙げられます。
・コミュニケーションが難しくなるため
テレワークは、対面でのコミュニケーションが減少することで、情報共有や意思決定がスムーズに進みにくいという課題があります。特に、非言語情報や微妙なニュアンスが伝わりにくいことから、誤解が生じやすくなり、チームワークが低下したり、業務が遅滞したりする懸念があります。
・コロナの分類変更(5類移行)に伴い措置を解除するため
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に移行されたことにより、企業は感染防止措置としてのテレワーク実施を義務付けられなくなりました。そのため、従来のオフィスワークに戻す企業が増えています。
これらの理由に加えて、セキュリティリスクの懸念、生産性の低下、人事評価の複雑さなども、中小規模の企業がテレワークを廃止する理由として挙げられます。
2.テレワーク廃止により企業が被るデメリット
新型コロナウイルスの蔓延防止のためにテレワークを開始した企業の中には、テレワークを廃止すれば過去と同様の状態に戻れると考えるところもあります。しかし、コロナウイルスが感染症法上の5類に移行した後も、従業員の意識や考え方はひきつづき変化しています。この状況を考慮せず安易にテレワークを廃止すれば、従業員満足度の低下を招く可能性があり、離職率の増加や新規人材採用の難易度上昇といったデメリットにつながるリスクがあります。
テレワーク廃止により企業が被る主なデメリットは以下のとおりです。
2-1.従業員エンゲージメントの低下
テレワークの廃止は、従業員の満足度と企業の競争力の両方に悪影響を及ぼすことが懸念されます。
2024年1月の時点で、テレワークを望む従業員の割合は78.5%に上ります。
(出典:公益財団法人 日本生産性本部 「第14回 働く人の意識に関する調査 調査結果レポート」)
加えて、厚生労働省が提供する調査によれば、テレワークが従業員の自律性、仕事のパフォーマンス、職務満足度を向上させるなど、エンゲージメントに肯定的な影響を与えていることも示されています。
(出典:厚生労働省「テレワークとエンゲージメントをもとに新しい働き方を構想・展望する視点を得る:分化と統合の枠組みを切り口に」)
したがって、原則出社への移行は従業員のエンゲージメント低下を招くリスクが高いと言えるでしょう。
また、テレワークで仕事ができる環境は、採用活動において転職者が魅力を感じるポイントです。テレワークの廃止は柔軟な働き方を求める優秀な人材の確保においても不利になる可能性があります。
2-2.離職者・時短勤務者の増加
テレワーク廃止による働き方の変化は約4割の従業員に影響を及ぼし、退職や時短勤務希望者の増加を招きます。
日本生産性本部の調査では、テレワークを望む従業員がテレワークの廃止を受けて退職を考える割合は16.4%、時短など勤務形態の変更を望む割合が24.9%です。この傾向は管理職も例外ではなく、9.6%が退職を、26.3%が勤務形態の変更を検討しています。
(出典:公益財団法人 日本生産性本部「テレワークに関する意識調査 結果概要」)
また、テレワーカーは職場の生産性向上に対する意欲が高く、テレワーク廃止によって企業の生産性が低下する可能性が高まる点もデメリットです。日本生産性本部の調査では、テレワーカーはオフィスワーカーに比べて生産性向上への取り組み実施率が20%以上高く、「業務の進め方の効率化」は30.7%高い結果が出ています。このような従業員の離職は企業の生産性への悪影響が懸念されるでしょう。
(出典:公益財団法人 日本生産性本部 「第14回 働く人の意識に関する調査 調査結果レポート」)
さらに、テレワークの廃止は、女性の活躍促進や男性の育児参加など、育児と仕事の両立のしやすさにも影響を与えます。ノーベル経済学賞を受賞したクラウディア・ゴールディンは、職場に長時間拘束され、両親の片方しか育児に参加できない社会が男女格差を生んでいると指摘しています。テレワークの廃止には、ワークライフバランスの推進・実現が難しくなるだけでなく、社会の変化に対応できない企業というイメージを持たれるリスクもあるでしょう。
(出典:NHK「ノーベル経済学賞に男女間の格差是正など研究のゴールディン氏」)
2-3.オフィスコストの増加
テレワークを廃止する前に、企業はオフィスコスト増加というデメリットを考慮する必要があります。具体的には、以下のコストが考えられます。
- オフィス賃料
- 設備費(オフィス家具やOA機器など)
- 維持管理費(清掃費や警備費、アメニティ費など)
- 光熱費
すべての従業員がオフィスに戻ることで、以前よりも多くのスペースが必要になり、結果として賃貸料の増加や、オフィス環境を再整備するための初期投資が必要になることが予想されます。
2-4.BCP対策の阻害
BCPとは、Business Continuity Planの略称で、企業が通常通り事業を継続することが難しくなるような、社会的影響が強い事態の発生時に事業を継続するための計画です。BCP対策が必要となる事態の例として、大地震や火災、戦争、疫病などが挙げられます。テレワークは、BCP対策の有効な手段の1つとして注目されており、BCPの観点でもテレワークを廃止することでいくつかのデメリットが生じます。
・出勤困難時の事業継続が難しくなる
地震や台風などの災害発生時に、従業員が出勤困難になる場合があります。テレワークを導入していれば、従業員は自宅など安全な場所から業務を継続できます。
・オフィス機能の集中によるリスク増加
すべての従業員がオフィスに出勤するとなると、オフィス機能が集中し、地震などの災害でオフィスが被災した場合、事業継続が難しくなるリスクがあります。テレワークを導入していると、オフィス機能の分散が容易になり、災害リスクを軽減できます。
例えば、オフィスビルが地震や台風などの自然災害により使用不可能になった場合はもちろん、パンデミックを自然災害の一つと捉えた場合、従業員が集まることでクラスター化のリスクが高まるため、これを避けなければいけませんが、テレワーク体制が整っていないと業務の継続が困難になります。
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3.テレワークに失敗する企業の特徴と解決策
近年、多くの企業がテレワークを導入していますが、中にはうまく運用できていない企業も存在します。テレワークに失敗する企業には、主に以下の3つの特徴があります。
適切なセキュリティ管理ができていない |
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テレワークでは、従業員が自宅などの社外環境で業務を行うため、情報漏洩やサイバー攻撃などのセキュリティリスクが高まります。適切なセキュリティ対策を講じなければ、企業にとって大きなリスクとなります。 【対策】
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従業員のコミュニケーションが不足している |
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リモートワークでは、顔を合わせる機会が減少するため、チーム間のコミュニケーションが不足しやすくなる点が問題です。これにより、仕事の進捗やチームの結束力が低下する可能性があります。 【対策】
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テレワーク用のインフラが整備できていない |
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リモートワークを効果的に行うためには、安定したインターネット接続や適切なハードウェア、共有可能なクラウドベースのドキュメント管理システムなどのインフラが必要です。これらが不足していると、作業効率が大幅に低下します。 【対策】
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このように、テレワークを成功させるためには、企業による事前準備と継続的な改善努力が不可欠です。
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4.テレワークを廃止する前にハイブリッドワークへの転換が必要
テレワークの完全な廃止は、企業にとって少なからずデメリットをもたらす可能性があります。そのため、完全なオフィス勤務への回帰よりも、ハイブリッドワークへの転換を検討することをおすすめします。
ハイブリッドワークは、オフィスでの勤務とリモートワークを柔軟に組み合わせる形式で、これによりコミュニケーションと生産性のバランスを取ることが可能になります。また、企業のオペレーショナルコストを抑制しつつ、BCP対策も強化できます。従業員はハイブリッドワークによって、自身のライフスタイルにあわせた働き方を選択できるため、従業員エンゲージメントの向上にもつながるでしょう。
まとめ
近年、一部の企業ではテレワークの廃止とオフィス勤務への回帰が見られますが、いくつかのデメリットを伴います。テレワーク廃止の主な弊害として、従業員エンゲージメントの低下、オフィスコストの増加、BCP対策の阻害、離職率の上昇懸念などが挙げられます。
オフィス勤務とテレワーク、それぞれのデメリットを補完するためには、ハイブリッドワークモデルへの転換も1つの手段です。ハイブリッドワークは、オフィス勤務とリモートワークのメリットを組み合わせた柔軟な働き方であり、従業員のワークライフバランス最適化の実現、生産性の維持と向上、企業の運営コストの適正化につながります。
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