2050年。カーボンニュートラルに向けての日本の現状
2024年2月20日、群馬県高崎市の最高気温は25.7度でした。島嶼部を除き、2月の夏日は観測史上初のことだといいます。これに限らず、気温をはじめとした気候の変動を肌で感じることが増えてきています。
2024年1月に発表された「グローバルリスク報告書2024年版(注1)」では、この先10年間で地球が直面する最大の危機として「異常気象」が挙げられています。
直近では日本でも、気候変動への関心や取組は高まりをみせており、2020年10月26日の所信表明演説で当時の菅首相が、日本が2050年までにカーボンニュートラルを目指す方針を表明しました。その中では、「2030年度には温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指し、さらに、50%に向けて挑戦を続けていく」とも述べられています。
しかし、国連環境計画(UNEP)の「Emissions Gap Report 2022」では、世界的に見ても、まだパリ協定(注2)で掲げる世界平均気温上昇1.5℃の目標達成には及んでおらず、ネットゼロ(注3)に向けた信頼性の高い経路に乗れていないと結論付けられています。
注1)出典:https://jp.weforum.org/publications/global-risks-report-2024/in-full/
注2)2015年の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択された気候変動問題に関する国際的な枠組み
注3)大気中へ排出される温室効果ガスと大気中から除去される温室効果ガスの量が均衡し、実質ゼロになった状態
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日本は2013年と比較すると減少しているが、21年は20年比で増加
2020年の宣言以降、日本でもCO2(温室効果ガス)削減への取組が各所で検討され、実施され始めているものの、実情としてCO2排出量が減少しているとは言い難い状況です。
下図のとおり、2013年以降のCO2排出量は減少傾向にありますが、21年は20年比で2%増加しています。背景には、コロナ禍で落ち込んでいた経済の回復によるエネルギー使用量の増加などの要因があると言われています。それでも、ニュースなどでの見聞きするカーボンニュートラルへの関心の高さから考えると、企業などの取組はまだまだここからの状態と言えるかもしれません。
一方で、「GX 実現に向けた基本方針」が2023年2月に閣議決定され、官民で連携することで、経済、社会、産業、地域の大変革(GX)に挑戦していくとされています。国際公約達成、日本の産業競争力強化・経済成長を同時に実現するために必要となるさまざまな分野での投資資金は、金融機関と連携し整備していく内容も公表されているため、2030年に向けてGXが一気に進んでいく可能性もあるでしょう。
CO2排出量削減の鍵を握るのは「企業」
日本のCO2排出量の現状を、部門別に排出量(電気・熱配分後排出量を参照 注4)を見ていきます。
部門別のCO2排出量は、第一次・二次産業で構成される産業部門(38%)が最も多く、ついで業務その他部門(19%)、運輸部門(19%)と続いています。ここから、CO2の排出量削減の鍵を握っているのは、企業であるといえるでしょう。
注4)発電および熱発生に伴うエネルギー起源のCO2排出量を、電力および熱の消費量に応じて、消費者側の各部門に配分した排出量
出典:環境省「2021年度(令和3年度) 温室効果ガス排出量(確報値)について」を元に作成
産業部門の中では鉄鋼、化学工業、機械製造などが多い
産業部門の詳細を見ていくと、鉄鋼業が一番多く40%近くを占めており、化学工業(15%)、機械製造業(11%)と続いていきます。第一次・二次産業で構成される産業部門の中でも、いわゆる「装置産業」から多くのCO2が排出されているのが見て取れます。装置産業は、生産のために大量のエネルギーを消費するため、生産工程でのエネルギー効率化(省エネ化)や排熱の回収(熱リサイクル)、リサイクル材の利活用などによって、排出量を削減することが求められます。
出典:環境省「2021年度(令和3年度) 温室効果ガス排出量(確報値)について」を元に作成
このような状況の中で、東証の再編を機に、プライム上場企業はTCFDレポートが事実上義務化されました。これにより、サプライチェーン全体を通してCO2削減の取組が求められるようになりました。
CO2排出量の削減は大企業だけの課題ではないのです。次回の記事では、サプライチェーン排出量の詳細に焦点を当てていきます。
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。