ホームThink with magazineDX・デジタル化
2024年問題の建設業への影響は?働き方改革の進め方も解説

2024年問題の建設業への影響は?働き方改革の進め方も解説

2024年07月31日掲載
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。
2024年問題の建設業への影響は?働き方改革の進め方も解説

2024年より、働き方改革に基づく労働時間の上限規制が建設業界にも適用されます。残業時間に厳しい上限が設けられ、違反時には罰則が科されるようになるので、建設業界全体での労働環境の改善は急務です。

当記事では、2024年問題の概要と背景、具体的な対策について詳しく解説します。建設業界の将来のためにも、働き方改革や長時間労働の見直し、生産性の向上などを目指すことが必要とされています。

DX実現に向けたデジタル化なら、KDDI まとめてオフィスにご相談ください

1. 建設業の2024年問題とは?

建設業における2024年問題とは、働き方改革によって、建設業の現場に残業の上限規制が適用されることを指します。2019年4月1日に施行された「働き方改革関連法」により、大企業には2019年4月から、中小企業には2020年4月から時間外労働の上限規制が設けられています。建設業においては、深刻な人材不足や長時間労働の常態化を背景として、上限規制に5年間の猶予期間が設けられ、2024年4月から適用されています。

建設業に限らず、労働者は労働基準法により1日8時間、1週40時間以内の法定労働時間を守り、最低週1回の法定休日を取得することが義務付けられています。ただし従来は、36(サブロク)協定という労使協定を結ぶことにより、法律の基準を超過した労働をしても罰則はありませんでした。

しかし2024年4月以降は、残業時間に上限が設けられ、違反時には罰則が課されるため、建設業の現場でも長時間労働の解消や働きやすい環境整備が求められます。

出典:厚生労働省「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」

1-1. 働き方改革で何が変わる?

働き方改革で何が変わる?

2024年4月以降、建設業に従事する労働者は、時間外労働に関して「原則として月45時間以内、年360時間以内」という規制にしたがう必要があります。また、やむを得ず上記の残業規制を超えて働く必要がある場合は、以下のルールを守らなくてはなりません。

  • 1カ月の残業が45時間を超えるのは年間6回まで
  • 残業時間の上限は1年で720時間まで
  • 残業時間と休日労働の合計は1カ月100時間未満、2~6カ月間で平均80時間以内に抑えること

出典:厚生労働省「建設業・ドライバー・医師の時間外労働の上限規制 特設サイト」

ルールに違反した場合、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられます。

出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」

ただし、災害の復旧・復興事業に従事する場合、「残業時間と休日労働の合計が1カ月100時間未満、2~6カ月間で平均80時間以内」のルールは適用されません。

2. 建設業界で働き方改革が必要な理由

建設業界で働き方改革が必要な理由

働き方改革により、建設業界の事業者や労働者は変化を迫られています。中には、ルールの変更により不都合を感じる方もいるかもしれませんが、業界全体のためにも、働き方改革は必要です。

ここでは、建設業界で働き方改革を行うべき理由を詳しく解説します。

2-1. 長時間労働が常態化している

国土交通省の「建設業における働き方改革」によると、2016年度の建設業における年間実労働時間は2,056時間で、年間出勤日数は251日です。一方、同年の製造業における年間実労働時間は1,951時間、年間出勤日数は234日で、調査産業計の年間実労働時間は1,720時間、年間出勤日数は222日でした。他の産業と比較しても、建設業は群を抜いて実労働時間が長く、年間出勤日数も多いことが分かります。

さらに、休日の状況に関する調査では、建設業全体の約65%が4週4休以下で就業していることが報告されています。4週4休とは4週間の間に4日間休日を取る働き方であり、建設業では休日数が少なく、長時間労働が常態化していることが問題視されています。

出典:国土交通省「建設業における働き方改革」

2-2. 人手不足が進行している

人手不足の進行も、建設業における深刻な問題です。国土交通省の「最近の建設業を巡る状況について」によると、1997年のピーク時に685万人いた建設業就業者数は、2021年には約29%減少しました。

出典:国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」

また、就業者数には地域差があり、災害による復旧・復興事業が高まる東北では、近年建設業への就業者数が増加しています。一方、中国、四国、九州、沖縄では建設業への就業者数が顕著な減少傾向にあることが特徴です。

出典:国土交通省「建設産業の現状と課題」

人手不足の原因としては、日本の少子高齢化による労働人口の減少や、円安による外国人労働者の減少が挙げられます。加えて建設業の場合、長時間労働が常態化している影響で、労働環境が「過酷」「厳しい」といったマイナスのイメージを持たれているケースもあります。若年入職者を確保、育成するには、働き方改革や待遇改善といった変革が必須と言えるでしょう。

2-3. 高齢化が進行している

就労者の高齢化も無視できない問題です。国土交通省の「最近の建設業を巡る状況について」によると、建設業の就業者数のうち、2021年時点で60歳以上の労働者は79.5万人で、全体の25.7%を占めます。一方、29歳以下の労働者は37.2万人で、全体の約12%です。60歳以上の就業者は10年後には大半が引退すると見込まれており、建設業の将来的な担い手不足、事業の後継者不足、技術継承の困難さなどが懸念されます。

出典:国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」

3. 2024年問題への対策として建設業ができることは?

2024年問題への対策として建設業ができることは?

2024年問題の概要を踏まえ、対応方法として具体的に何をすればいいか分からない建設業関係者の方も多いのではないでしょうか。最後に、2024年問題への対策として建設業全体に求められる改革について、より詳しく解説します。

3-1. 長時間労働の是正

まず、2024年4月から建設業が適用対象となっている「働き方改革関連法」にしたがって、長時間労働の是正に取り組むことは必須です。

不当に短い工期で建設工事を受発注すると、長時間労働の原因となります。週休2日を確保し、長時間労働を防止するために、工事を受発注する管理者の方は、適切な工期設定を心がけましょう。万が一予定の工期に間に合わない場合も、長時間労働で解決するのではなく、発注者と受注者が協議し、スケジュール調整や契約変更を行うことが大切です。

また、長時間労働の是正に向けた取り組みの例として、元請、下請間で定期的に工程調整会議を開催し、より入念に施工管理を行うケースもあります。建設ディレクターを採用して、従来は現場監督が行っていた書類作成業務を振り分け、現場監督が本来の業務に集中できる職場環境を整えることも工夫の1つです。

出典:国土交通省「建設業働き方改革加速化プログラム」

出典:国土交通省「時間外労働の上限規制」

3-2. 待遇改善

就業者の待遇を改善することも重要です。就業者の経験や技能を客観的に評価し、ふさわしい待遇や給与を実現しましょう。建設キャリアアップシステムを活用して就業者の事業者情報や技能者情報、現場情報などをデータ化すれば、公正な技能評価や作業の品質向上に役立ちます。

また、従業員が社会保険に加入できる体制を整えることもポイントです。厚生労働省でも、社会保険未加入の建設企業に建設業の許可や更新を認めないなど、社会保険加入を就業者のミニマム・スタンダードにするための取り組みを推進しています。

出典:国土交通省「建設業働き方改革加速化プログラム」

3-3. 生産性の向上

ICTを導入し、生産性の向上を図りましょう。ICT(Information and Communication Technology)とは、情報通信技術を意味する言葉です。情報通信技術を搭載した建設用機器を導入することで、調査、設計、施工など建設の幅広い工程の作業負担を軽減し、生産性を上げる効果が期待できます。

出典:国土交通省「建設業働き方改革加速化プログラム」

人材不足の問題が解消しないまま無理に長時間労働を是正すると、品質低下や工期の遅れといったトラブルの元になりかねません。しかし長時間労働の是正とあわせてICT建機の導入で業務効率化を進めれば、建設現場での負担や混乱を減らせる可能性があります。

また、書類のペーパーレス化やウェアラブルカメラの活用など、ICTの導入によって生産性の向上につながるケースもあります。改善できる点はないか、日々の業務を見直すことも大切です。

まとめ

働き方改革により、建築業においても残業時間の上限規制が設けられる「2024年問題」に対応するためには、建設業界全体が長時間労働の是正、待遇改善、生産性の向上に取り組む必要があります。労働環境を改善することで、若年層の確保や技能継承の促進につながり、業界の持続的な発展が期待できます。

適切な工期設定や効率的な施工管理、ICT技術の導入などが働き方改革を進める鍵です。ICT機器やスマートデバイスの導入、ペーパーレス化を進めることで、生産性を高め、業務効率化にもつながるでしょう。

KDDIまとめてオフィスでは、建設業の課題を解決するICTソリューションを提供しておりますので、お悩みのことがありましたらぜひ一度お気軽にご相談ください。

※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。