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VPN接続とは?特徴や仕組みとメリット・デメリットを解説

VPN接続とは?特徴や仕組みとメリット・デメリットを解説

2024年08月29日掲載
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。
VPN接続とは?特徴や仕組みとメリット・デメリットを解説

VPN(Virtual Private Network)接続は、インターネット上で安全かつプライベートな通信を確保するための技術です。VPNを利用することで、物理的な専用回線を用いずに仮想的な専用ネットワークを構築し、通信データの暗号化や認証を行います。

VPN接続は、セキュリティやプライバシーの保護が求められる企業や個人にとって重要なツールです。公衆Wi-Fiの利用時やリモートワークなど、さまざまなシーンで利用されています。当記事では、VPN接続の概要や種類ごとの特徴について解説するとともに、VPN接続の仕組みやメリット・デメリットなどを解説します。

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1. VPN接続とは?

VPN接続とは?

VPN接続とは、Virtual Private Network(仮想専用通信網)の略で、安全で暗号化された通信を行う方法です。インターネット上に仮想的な専用ネットワークを構築するため、物理的な専用回線を必要としません。

VPN接続では、許可を得たユーザーしかネットワークにアクセスできない上、情報が暗号化されるため、第三者からの盗聴や改ざんのリスクを低減します。また、ユーザーのIPアドレスを隠し、匿名性を高めることも可能です。VPN接続は、特にセキュリティやプライバシーの保護が求められる場面で有効です。

1-1. VPN接続の必要性・利用シーン

VPN接続は、インターネットのセキュリティ向上が求められる現代において、重要性が高まっています。公衆回線であるインターネットは、通信内容が盗み見られたり改ざんされたりするリスクが常に存在します。特に企業秘密や個人情報の保護が必要な場合、早急に対策を講じなければなりません。

VPN接続はさまざまなシーンで活用されます。例えば、公衆Wi-Fi利用時に第三者によるデータ傍受を防ぐためにVPNは有効です。インターネットショッピングやブラウジング時にもVPNを使用することで個人情報の漏洩や追跡を防げます。また、リモートワークやテレワークの普及により、遠隔地から本社のネットワークに安全にアクセスするために企業での利用が進んでいます。さらに、海外に出張中の社員が国内のリソースを利用する場合、地理的な制約を超えてアクセスできるVPNは非常に便利です。

このように、VPNはインターネットの安全性を高め、多様なシーンでの利用を可能にする技術として広く認知されるようになりました。企業・個人ユーザーともに、セキュリティの向上を図るためにもVPNの導入を検討することをおすすめします。

2. VPN接続の仕組み

VPN接続の仕組み

VPN接続は、インターネット上で仮想的な専用ネットワークを構築します。VPN接続は主に「トンネリング」「カプセル化」「認証」「暗号化」の4つの技術で成り立つ仕組みです。

以下では、VPN接続を構成する4つの要素について解説します。

2-1. トンネリング

トンネリングはVPNのセキュリティを支える重要な要素であり、専用回線に近いセキュリティを提供します。トンネリングとは、2つの拠点間に仮想的な専用線(トンネル)を構築する技術です。

インターネットは通常、公衆回線を通じて利用されるため、不特定多数の人がアクセス可能です。しかし、トンネリングを使用すると、データは仮想的に隔絶された専用回線でしか送受信されません。データの経路は基本的に外部からアクセスされないため、やり取りが盗み見られるリスクを低減し、データの機密性を保護します。例えば、SSHもトンネリングの1種です。

2-2. カプセル化

カプセル化とは、通信データ(パケット)を別の通信プロトコルのデータに包み込み、その内容を隠す技術です。VPNのカプセル化により、企業の社内ネットワークにリモートでアクセスする際にも、データの安全性が確保されます。

データパケットをカプセルのように密閉容器に入れるイメージです。カプセル化されたデータは、仮想トンネル内を通過して目的地に到達するまで開封されず、中身を確認できません。これにより、データの秘匿性が保たれ、不正アクセスやデータ改ざんのリスクが大幅に低減され、信頼性の高い通信が可能になります。

2-3. 認証

認証は、VPN接続において正当なユーザーだけがアクセスできるようにするための、重要な仕組みです。仮想トンネルを構築してあっても、悪意のある第三者がアクセスできてしまうと、セキュリティの意味がありません。認証技術は、VPNに接続するユーザーの身元を確認し、不正なアクセスを防ぐ役割を果たします。

認証方法には「シングルサインオン(SSO)」と「二段階認証」があります。シングルサインオンは、1組のIDとパスワードで複数のアプリケーションやサービスにアクセスできるようにする仕組みです。パスワード漏えいのリスクを減らし、ユーザーの利便性も向上します。

二段階認証は、パスワードに加えて、スマートフォン(スマホ)に送られるワンタイムパスワードなど、追加の認証情報を要求する方法です。これにより、たとえパスワードが盗まれた場合でも、不正アクセスを防げます。

2-4. 暗号化

暗号化は、VPN接続における最終的なセキュリティ対策として、通信データを保護するための技術です。カプセルに入れられるデータを、意味のない文字列へと変換して保護します。たとえ認証が突破されたりデータが漏洩したりした場合でも、暗号化されたデータは解読が困難です。通信が暗号化されていれば、重要なデータを扱う社員でも安心してリモートワークを選べます。

VPNで一般的に使用される暗号化技術には、SSL-VPNとIPsecがあります。SSL-VPNは、主にブラウザーを通じた通信の暗号化に用いられ、簡単に導入できるのが特徴です。IPsec-VPNは、ネットワーク層で通信を暗号化し、より高いセキュリティを提供します。これにより、複数の拠点間での安全なデータ通信が可能になります。

3. VPN接続の種類ごとの特徴

VPN接続の種類ごとの特徴

VPN接続には、利用する通信回線や技術に応じていくつかの種類があります。いずれも特徴や利便性が異なるため、用途に応じて選ぶことが重要です。以下では、代表的な4つのVPN接続の特徴を解説します。

3-1. インターネットVPN

インターネットVPNは、既存のインターネット回線を活用したVPN接続です。インターネットに接続できれば利用可能であり、低コストで導入できる点が魅力です。インターネットVPNは、スマホやパソコン(PC)などのクライアントとインターネット上のVPNサーバー間で暗号化されたトンネルを構築し、安全な通信を実現します。多くの無料VPNサービスや個人向けの有料VPNサービスが該当する形式です。

ただし、通信速度や品質は利用するインターネット環境に左右されるため、混雑時にはパフォーマンスが低下するケースがあります。また、セキュリティレベルはほかのVPN形式と比較すると低めです。

3-2. エントリーVPN

エントリーVPNは、通常のインターネット回線を介しません。安価な光ブロードバンド回線と、特定のユーザーだけが接続できる閉域網を使用して構築するVPNです。事前に許可したユーザー以外はアクセスできないため、データの盗聴や改ざんのリスクが低くなります。

しかし、利用するブロードバンド回線の品質に依存するため、通信速度や帯域の保証はありません。ネットワーク速度が遅くなる場合もありますが、低コストで導入できるため、小規模な企業や個人ユーザーには利用しやすいVPNです。

3-3. IP-VPN

IP-VPNは、通信事業者が提供する閉域網を利用したVPNです。インターネットを経由せず、通信事業者と契約者のみが利用できる専用ネットワークを使用するため、外部からは容易に侵入できません。また、通信事業者が提供する専用線を利用することから、通信速度や帯域の保証があり、安定した接続が可能です。

導入・運用にかかるコストはほかのVPN形式よりも高くなるものの、その分セキュリティと安定性が大きく向上します。IP-VPNは、機密性の高い情報を扱う企業や、信頼性の高い通信環境を必要とする企業に適した形式と言えるでしょう。

3-4. 広域イーサネット

広域イーサネットは、通信事業者が提供するイーサネット網を利用したVPNです。IPレベルよりも下層のデータリンク層(レイヤ2)で接続を行う形式のため、ネットワークの自由度が高く、多拠点間接続に適しています。企業が自社に最適なネットワークを、柔軟に構築できる点が特徴です。

しかし、広域イーサネットの導入・運用コストは高く、専門的な知識を持った担当者を配置しなければなりません。また、提供業者によっては、通信帯域の範囲が限られている場合もあります。それでも、広域イーサネットは、大規模なネットワーク環境を構築したい企業にとって有力な選択肢と言えるでしょう。

4. VPNプロトコルの種類ごとの特徴

VPN接続にはさまざまなプロトコルがあり、それぞれに特徴があります。使用するプロトコルによってセキュリティや速度、互換性に違いがあるため、目的によって使い分けが必要です。以下では、代表的な5つのVPNプロトコルの特徴を解説します。

4-1. OpenVPN

OpenVPNはオープンソースのVPNプロトコルで、高いセキュリティと柔軟性を提供します。多くのOSや暗号化に対応しており、TCPとUDPの両方で動作可能です。そのため、通信速度とセキュリティのバランスが非常に優れています。

また、オープンソースであるため、広範なコミュニティによる継続的なアップデートが行われているのも特徴です。ただし、設定にはコマンドラインインターフェース(CLI)が必要であり、導入と運用には技術的な知識が欠かせません。

4-2. IKEv2/IPSec

IKEv2(Internet Key Exchange version 2)は、IPSecと組みあわせて使用されるプロトコルです。IKEv2自体には暗号化機能がなく、IPSecがその役割を担います。CiscoとMicrosoftが共同開発したもので、高速で安定した通信を提供します。

移動中の接続維持に優れており、モバイル環境でも安定したパフォーマンスを発揮するのが特徴です。多くのOSに対応しているため広範なデバイスで利用可能ですが、一部のプロバイダーやルーターでは利用できません。

4-3. L2TP/IPSec

L2TP(Layer 2 Tunneling Protocol)は、IPSecと組みあわせて使用されるプロトコルです。L2TP自体には暗号化機能がないため、IPSecがデータの暗号化と認証を行い、非常に高いセキュリティを確保します。

ただし、二重カプセル化のため処理が複雑になり、通信速度が低下することがあります。また、ファイアウォールに引っかかりやすいのも欠点です。しかしながら互換性が高く、多くのデバイスで利用できます。

4-4. SSTP

SSTP(Secure Socket Tunneling Protocol)は、Microsoftが開発したVPNプロトコルです。主にWindowsに対応しています。SSL/TLSを使用して通信を暗号化するため、高いセキュリティを提供します。

また、ファイアウォールを通過しやすくWindows環境での利用が容易で、設定も比較的簡単です。ただし、ほかのOSへの互換性が低いのはデメリットと言えるでしょう。

4-5. PPTP

PPTP(Point-to-Point Tunneling Protocol)は、VPNが普及し始めた初期から利用されているプロトコルです。設定が簡単で互換性も高く、通信速度が速いのが特徴です。

しかし、セキュリティ面ではほかのプロトコルに劣るため、現在はあまり利用されていません。現在では、より高度なセキュリティを提供するプロトコルに置き換えているところが大半です。

5. VPN接続のメリット

VPN接続の主なメリットは、以下の3つです。

コストを抑えて通信セキュリティを強化できる
VPNはトンネリングと暗号化技術を組み合わせることで、専用線に匹敵するセキュリティを提供します。専用線は高額な初期費用と維持費がかかりますが、インターネット回線を利用するVPNでは、これらのコストを抑えられます。特に中小企業にとって、専用線と比較し低コストでセキュアな通信環境を構築できる点は非常に魅力的です。また、安価なルーターを使用すれば、さらに初期費用を削減できます。
自宅や外出先から社内ネットワークに安全にアクセスできる
VPN接続を利用することで、どこからでもセキュアに社内ネットワークにアクセスできます。これは、リモートワークやテレワークが普及する中で非常に重要です。社外からでも、業務メールの確認やファイルの共有など、オフィスと同じように作業ができます。フリーWi-Fiなどの公共ネットワークを利用しても、VPNによる暗号化通信によりデータの漏洩や改ざんのリスクを大幅に低減できるでしょう。
専用線よりも低コストで拠点間接続ができる
先述のとおり、専用線を設置する場合、VPNと比較し初期費用と維持費が高額になります。さらに、専用線は距離によってコストが増加します。VPNでは距離の制約がありません。そのため、複数の拠点を持つ企業でも低コストでネットワークを構築できます。また、サービスによっては、VPNサーバーの構築により離れた拠点でも仮想的に同一LANを構築できるため、高速で安定した通信が可能です。

VPN接続は、トラッキング防止や地理的制限の回避といった点でも役立ちます。VPNの導入により、企業や個人はセキュリティを強化しつつ、柔軟なネットワーク環境を構築できるでしょう。

6. VPN接続のデメリット

VPN接続には多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットも存在します。

通信速度が低下する場合がある
VPN接続のデメリットの1つは、通信速度が低下する点です。特に、既存のインターネット回線を利用するインターネットVPNは、多くのユーザーが同時にアクセスすると回線の帯域幅が不足し、通信速度が低下することがあります。また、暗号化やデータカプセル化の処理によって速度が低下する場合もあります。このため、安定した通信速度を求める場合は、専用線や高品質なタイプのVPNプロトコルの利用が必要です。
情報漏えいのリスクは残る
VPNは高いセキュリティを誇るものの、情報漏えいのリスクが完全になくなるわけではありません。例えば、VPNの設定ミスや脆弱性を狙った攻撃が発生する場合があります。そのため、信頼性の高いVPNプロバイダーを選ぶことが重要です。さらに、セキュリティ意識を高めるために、定期的なシステム更新や適切な設定が欠かせません。
機能を重視するとコストがかかる
VPNの導入と運用にはコストがかかります。特に、セキュリティとパフォーマンスを重視する場合、高品質なVPNサービスや専用のハードウェアが必要となり、コストが高くなる傾向にあります。無料のVPNサービスも存在しますが、セキュリティリスクや信頼性の問題があるため、ビジネス用途には適していません。また、一部の国や地域ではVPNの利用が制限されている場合もあり、対応するために追加料金が発生する可能性もあります。

VPN接続の導入前にデメリットを十分に理解し、対策を講じることが重要です。リスクを最小限に抑えつつ、VPNのメリットを最大限に活用しましょう。

まとめ

VPN接続は、インターネットを通じて安全かつプライベートな通信環境を提供するための重要な技術です。さまざまなプロトコルや種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。自社の目的や利用シーンに応じて最適なVPNを選ぶことが重要です。

VPNは、コストを抑えつつ通信のセキュリティを強化できます。リモートワークやテレワークの普及に伴い、その重要性はますます高まっています。VPNの導入により、企業や個人はセキュリティとプライバシーを確保しながら、柔軟で安全なネットワーク環境を構築できます。VPNの利点とデメリットを十分に理解し、適切な対策を講じれば、最大限の効果を得ることができるでしょう。テレワーク対応やBCP対策の一環として、VPNの導入をご検討中であれば、ぜひお気軽にKDDI まとめてオフィスにご相談ください。

※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。