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介護業界でBCPは2024年に義務化!策定の手順やポイントを解説

介護業界でBCPは2024年に義務化!策定の手順やポイントを解説

2024年08月29日掲載
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。
介護業界でBCPは2024年に義務化!策定の手順やポイントを解説

BCP(事業継続計画)とは、世界的な感染症蔓延などの緊急事態や、地震・津波などの自然災害が発生した際に、事業を継続し早期復旧を図るために立てられる計画のことです。

介護業界では、2024年4月1日よりBCPの策定が義務化され、感染症と災害の双方に対策し、緊急事態が起きてもサービスを復旧・継続する体制が求められています。介護サービスは施設利用者の健康・生命を守る場であり、利用者への影響を最小限にとどめるのはサービス提供側の義務と言えるでしょう。

この記事では、介護業界におけるBCP策定の手順や、策定にあたって押さえておきたいポイントを解説します。

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1. 介護事業者に義務化されたBCP(事業継続計画)とは

介護事業者に義務化されたBCP(事業継続計画)とは

介護事業者におけるBCP(事業継続計画)の策定は、3年の猶予期間を経て2024年4月1日より義務化されました。

そもそもBCPとは、企業が自然災害などの緊急事態による被害を受けた際、中核となる事業の継続や早期復旧ができるように具体的な方針・指針を定めた計画のことです。「Business Continuity Planning」の頭文字を取った略語であり、日本語名称では「事業継続計画」と呼ばれます。

介護事業者におけるBCPは、緊急事態が発生したときにも介護サービスを継続して提供できるよう、あらかじめ指針や計画を整備する行為を指します。

出典:厚生労働省「業務継続に向けた取組の強化等(改定の方向性)」

1-1. BCPとBCMの違い

BCPと似た用語に「BCM」があります。

BCMは「Business Continuity Management」の頭文字を取った略語で、日本語名称は「事業継続マネジメント」です。事業継続をマネジメントするという名称のとおり、BCPを実現するために下記のような取り組みを行います。

  • BCPで策定した内容の維持と更新
  • 事業継続に必要な予算と資源の確保
  • 被害の防止や軽減を目的とした事前対策
  • 取り組みの浸透を目的とした教育や訓練の実施
  • 継続的な改善の実施

厚生労働省は業務継続に向けた研修や訓練の実施といった取り組みも義務付けており、介護施設ではBCPとBCMの双方が義務化されている状況です。

出典:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」

1-2. 介護事業にBCP策定が必要な理由

介護事業そのものが施設利用者の日常生活・健康・生命を守る機能を担っていることが、介護事業にBCP策定が必要とされている理由です。

介護サービスを利用する方の中には、要支援・要介護の身体状態となっており、日常生活や健康管理などを介護サービスに依存している方がいます。万が一、介護施設が自然災害などによって事業継続困難な状況に陥った場合は、施設利用者の日常生活や健康が脅かされます。人によっては生命の維持が困難になるケースもあるでしょう。

介護事業者は介護サービスの提供をできるだけ継続できるようにして、業務縮小や事業所閉鎖が必要となった場合にも、施設利用者への影響を抑えられるよう努める必要があります。

2. BCP策定で介護事業者が得られるメリット

BCP策定で介護事業者が得られるメリット

介護事業者にとってBCP策定は、下記に挙げる3つのメリットがあります。

・施設利用者の生活や生命を守れる

BCPを策定することにより、万が一の事態が発生したときにも、施設利用者に介護サービスを提供できる可能性を高められます。施設利用者の生活や生命の維持を考えている施設として、利用者や地域からの信頼を得られるでしょう。

・業務改善や資源配分の最適化ができる

BCP策定の際は、出勤可能な職員の想定数や業務の重要度を検討して、業務継続ができる計画を立案します。限られた資源を活用する計画を考えることにより、平常時における業務改善や人員など資源配分の最適化につなげることが可能です。

・税制優遇や補助金、金融支援が受けられる

政府や自治体では、BCPを策定した企業・組織への税制優遇や補助金制度を用意しています。制度要件を満たす必要はあるものの、税制優遇や補助金を利用すればBCP策定にかかるコストをある程度抑えられるでしょう。
また、BCPを策定した事業者に対して地域の金融機関が金融支援を行うケースもあります。

介護事業者のBCP策定は義務化されていることはもちろん、多くのメリットがあるため、速やかに対応することをおすすめします。

3. 介護施設のBCPに記載するべき項目は2つ

介護施設のBCPに記載するべき項目は2つ

介護施設のBCPに記載するべき項目は、「感染症対策」と「災害対策」の2つがあります。

以下では入所系施設の例を挙げて、「感染症対策」「災害対策」のそれぞれについてBCPで作成する内容・手順を解説します。

3-1. 感染症対策のBCP

感染症対策のBCPは、下記の内容を策定します。

1 平常時の準備・対応
BCP対策の対応主体を決定し、感染防止に向けた取り組みや防護具・消毒液といった備品の確保、BCPの内容に沿った研修・訓練内容を策定します。BCP対策の定期的な見直しも必要です。
2 感染疑い者の発生と初動対応
入所者や職員に感染疑い者が発生した場合は、速やかに初動対応を実行します。初動対応では、まず施設長への報告と、身近な医療機関や受診・相談センターへの連絡など第一報を行ってください。感染疑い者はなるべく個室管理をするとともに、医療機関への受診・検査を行います。感染疑い者の居室や利用した共有スペースの消毒・清掃も実施します。感染疑い者への対応と、その他の入所者への対応を行う担当職員の確保や、勤務体制の変更も行わなければなりません。その他の入所者や職員に体調不良者がいないかの確認も必要です。
3 感染拡大防止体制の準備・確立
感染対策について保健所の指示を仰ぎ、消毒範囲や消毒内容、生活空間の区分けなどを実施します。接触者への対応も行ってください。
平常時の準備・対応で定めたとおりに、職員の業務決定や防護具・消毒液など備品の確認をします。同時に情報共有も行い、人員や物資が不足していないかなど状況の把握に努めましょう。状況にあわせて人員確保や業務内容の調整も行います。また、過重労働・メンタルヘルスへの対応や、情報発信のタイミングも決める必要があります。

出典:厚生労働省「業務継続計画(BCP)感染症編(介護サービス類型:入所系)」

入所系施設で感染疑い者が発生した場合、入所者や職員、それぞれの家族にまで感染が広がる可能性があります。平常時の準備をしっかりと行うとともに、非常時に迅速な対応が取れるよう対策を決めておくことが重要です。

3-2. 災害対策のBCP

災害対策のBCPで決める内容は下記のとおりです。

1 平常時の準備・対応
建物・設備の安全対策を行うとともに、ライフライン(電気・ガス・水道・通信など)が停止した場合の対策を策定します。被災時における必要物資の備蓄と、トイレなど衛生面の対策、万が一の場合に備えられる手元資金の準備も必要です。
2 緊急時における対応の決定
まずは緊急時の初動対応として、BCP発動の基準や職員個人の行動基準、BCPの対応体制・対応拠点を決定します。人命の安全確保対応では、利用者・職員の安否確認と、施設内外での避難場所・避難方法の検討が必要です。人命の安全確保ができた後に、入所系施設の重要業務について継続を図ります。継続すべき重要業務と、職員の参集基準・管理方法を決定してください。また、施設・設備の破損部分の確認など復旧対応も進めます。
3 他施設との連携体制の構築・準備
緊急時においても重要業務を継続するには、他施設と協力や連携を取ることが大切です。普段から良好な関係を作れるようにして、連携協定書による連携体制も構築しましょう。被災後にスムーズな連携が取れるよう、共同訓練や入所者・利用者情報の整理といった事前準備を行ってください。
4 地域との連携の検討
被災時における災害派遣福祉チームへの職員の派遣や、福祉避難所の運営など、地域との連携を行う場合は各種ガイドラインに沿った準備が必要です。

出典:厚生労働省「業務継続計画(BCP)自然災害編(介護サービス類型:共通)」

自然災害によって入所系施設が被災した場合、事業を一時的にでも中断しなければならないケースもあります。復旧後は徐々にサービス提供を復活させる必要があるため、業務の優先順位などをあらかじめ定めましょう。

4. BCPを策定するときに押さえるべきポイント

介護事業者がBCPを策定するときには、以下のポイントを押さえることが重要です。

●事前の対策(今何をしておくか)

  • 設備・機器・什器の耐震固定
  • インフラが停止した場合のバックアップ

●被災時の対策(どう行動するか)

  • 人命安全のルール策定と徹底
  • 事業復旧に向けたルール策定と徹底
  • 初動対応

① 利用者・職員の安全確保・安否確認

② 建物・設備の被害点検

③ 職員の参集

出典:厚生労働省「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」引用日2024/6/24

施設利用者に提供する介護サービスの内容をまとめたケアプランなど、介護業務に必要なデータやツールはバックアップを取る必要があります。バックアップは事業所が被災した場合にも無事に残るように、クラウドサーバーに保管するとよいでしょう。

また、災害や感染症拡大の際に、介護施設の職員同士や利用者との連絡・安否確認が速やかに行える体制づくりも求められます。インターネットを介した連絡手段の準備だけでなく、インターネットがすぐに使用できない場合にも利用できる衛星回線などの通信手段も用意しておくと安心です。

まとめ

BCPを策定すれば、感染症や災害が発生したときにも、サービスを提供できる体制を維持でき、施設利用者の生活と健康を守れます。利用者が安心して生活を続けられるだけでなく、緊急時に事業継続が可能なように体制を見直すことは、業務改善や資源配分の最適化にもつながるでしょう。

介護事業者に対するBCP策定の義務化にあたって、国は税制優遇や補助金、金融支援などの制度を用意しています。災害が起きたときに連絡を取り合える通信手段の導入や、利用者に関する重要データのバックアップを取る施策などを通じて、効果的なBCP策定に取り組んでください。

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※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。