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「まなびのミライ~学校交流会2024~」開催レポート【特別講演編】

「まなびのミライ~学校交流会2024~」開催レポート【特別講演編】

2024年09月20日掲載
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。

2024年8月2日、「まなびのミライ~学校交流会2024~」を開催した。第3回目の開催となる今年度は「学校DXと未来人財の育成」をテーマに東京と大阪の2カ所に会場を設け、オンラインによる同時中継にて実施。全国から88校105名の教職員の皆さまにご参加いただき、大変盛況な会となった。
当日のコンテンツ内容から「特別講演」「パネルディスカッション」を抜粋してお届けする。

~パネルディスカッション編 はこちら~

特別講演編では、一般財団法人活育財団 代表理事 日野田 直彦氏による「ミライの学校の創り方」および、関西大学 副学長 岡田 忠克氏による「関西大学の現状と新たな取り組み」の講演内容をご紹介する。

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特別講演①:ミライの学校の創り方

<講演者プロフィール>

日野田 直彦 氏
一般財団法人活育財団 代表理事
元最年少民間人校長(当時36歳:箕面高校)

活育財団 HP: https://katsuiku.org/

東京会場の特別講演に登壇したのは、学校改革の先駆者として知られる日野田 直彦氏。まずスライドに2050年の日本の予想データを映し出し、世界の状況に関するクイズを出題して「思い込みを捨て、常識をアップデートすることの大切さ」を訴えた。

「未来の人財」に求められるのは「Purpose」

「未来の人財」に求められる力の定義について語る日野田氏

「未来の人財」に求められる力の定義について語る日野田氏

日野田氏は、近代資本主義における学校の役割は「忠良な労働者の育成」だったが、現代は「組織のトップだけでなく、社員全員が同じ意識を共有すべき時代」と述べた。
このことから、未来の人財には「オーナーシップ」が最も重要であり「守破離」の概念が求められると日野田氏はいう。「教育とは本来、型を覚え、使い、最終的に破るもの」と主張。生徒自身の「Purpose(目的・意図)」に気づいてもらうために教育やDXがあるのだと訴えた。

話題はグローバル人材に移り、日野田氏は「英語を話せるからグローバル人材ではない」と強調。「言語に関係なく、自分の目標や貢献したいことを明確に持ち、言語化できる。それがグローバル人材だ」と定義した。

ここから講演は「世界がいかに目まぐるしく変化するか」という方向へ展開。世界の急速な変化にも言及し、現在は存在しない仕事に就く可能性や、2050年には新興国のGDPが日本に追いつく予測を示した。大人は危機感を覚えるだろうが、逆に若い世代にとっては他国に追いつくチャンスと捉えられるという。続けて「教師が現状を伝え、これからを生きる生徒たちにチャンスがあることを教えていくべきではないか」と警告。「『ほな、やってみなはれ』の精神で、失敗してもいいから挑戦しようと思える環境が必要です」と主張した。

日本教育の課題とミライの学校教育

日野田氏は過去に地域4番手の大阪府立箕面高校で校長を務め、海外トップ大学へ生徒を進学させた。新しい取り組みに対して「いかがなものか」という意見には「やりたいことがあれば教えてほしい」「意見していいのは生徒の命に関わることのみ」「失敗したら教師同士で助け合おう」と呼びかけ、教師一人ひとりとの対話を続けたことで校内がチャレンジできる場に変わっていったと経緯を語った。

最後は日本の教育に関する議論へ着地した。インターナショナルスクールや国際バカロレアと比較して日本の教育は「守破離に則っていて先生方のレベルは高いが、仕事を増やす一方で減らすのは苦手。先生方の自由度が低い」と日野田氏はいう。続けて「各教育方法にはそれぞれ長所と短所があるので組み合わせることが重要。午前中は基礎学習、午後は実践的学習というカリキュラムを組むことで、基礎と実践のサイクルを繰り返していくことにより生徒が自身で行えるようになる」と話した。

終盤に差し掛かると、日野田氏は「学校改革や教育DXには、子どもたちの柔軟な発想が必要」と持論を述べた。生徒のイノベーションをバックアップすることで教師はリスクヘッジとマネジメントに徹して、後ろからそっと見守り応援する。そうすると教育でワクワクすることができる。さらに枠からはずれてワクワクするには、まず枠となる教育が必要である。同氏は「偏差値の高い学校に進学させるのが目的ではなく、生徒たちに人生の舵を取る力を身につけてもらう。DXはそのためのツールであり、気づきの幅を広げる手段です」と語った。

最後に「日本は課題先進国だからこそ希望がある」と切り出し、「課題を解決できたら世界を変える勇者になれるかもしれない。こんな面白い国はないですよ」と前向きな言葉で講演を締めくくった。

特別講演②:関西大学の現状と新たな取り組み

<講演者プロフィール>

岡田 忠克 氏
関西大学 副学長 学長補佐 理事
人間健康学部教授 教育推進部長

関西大学 HP: https://www.kansai-u.ac.jp/

大阪会場の特別講演では、関西大学の副学長を務める岡田 忠克氏が登壇。冒頭で簡潔に同大学の概要を紹介し、本題のDX・ICTツールについて語った。

ICTツールを導入する際、学内では「学生の主体性を低下させてしまうのでは?」といった懸念があったという。しかしICTを活用した授業を受けた生徒が入学するため、学校DXは避けて通れない流れであり、教育の内容についても見直していかなくてはならないと述べた。続けて岡田氏は、大学でDXを推進する難しさにも言及。大学の教育には統一された学習指導要領がなく、教授や講師の授業のスタイルは多岐にわたる。また学内には複数のキャンパスがあるため、開講しているクラスは当然多く、全体的な学習の成果をまとめるためには自ずとICTツールの活用が欠かせなくなると述べた。

大学におけるDX推進・ICTツール活用の事例

関西大学LMS

ここで岡田氏は関西大学のLMS(学習管理システム)の概要を紹介。ICTツールの整備と活用により、動画を見ながらネットで調べレポートを書くなど、複数の画面を一つに集約でき、講義に集中しやすくなると説明した。さらに、動画教材の使用状況などの教育データを収集し、中学校や高校とは違う形で教育の質の改善に活用している例も挙げた。

さらにLMSとキャリア支援についても話題を展開。きたるべき就職活動に向けて「なぜ大学で学んでいるのか・卒業後に何を成し遂げたいのか」を学生が在学中に振り返ってもらうことが大切だと強調し、ポートフォリオ機能を取り入れキャリア支援と学習支援を連動させていると岡田氏は語った。また、関西大学では一部の授業に限りオンラインで参加できる環境を整え、キャンパス間をつないで学びを拡充させる取り組みを行っている。またGSC(グローバルスマートキャンパス)を実現するため環境を整備し、海外の大学とリアルタイムでの双方向授業を実施。時差の問題はあるものの、さながら留学の疑似体験ができるようになっている。

次に、岡田氏は「オープンバッジ」制度について説明。これはいわばデジタルの修了証で、プログラムを達成した学生に授与され、学ぶ意欲を維持するのに役立っている。また、教学IRの取り組みについても言及し、各学部に専任職員を配置してデータ分析を行い学部間の連携の中で教育の質の改善を行っていると述べた。そのほかの取り組みとして関西大学では、授業アンケートの回答内容の累積と分析を行い、フィードバックを行っている。そうすることで学生自身が不足している能力を自覚し、学生生活の指針としてデータを活用できるという仕組みだ。学部によって結果に差が出てくるため、指導内容の改善にもつながっている。

学生の気づきにつながる機会を提供するためDXを推進

また、学内で毎日開催されるさまざまな教育プログラムを一覧にまとめ、2024年度から学生に提供を開始した。学生自身が必要なプログラムを選んで参加することで主体的な学びにつながるだろうと岡田氏は期待をにじませた。さらに、大学として学生の気づきにつながる機会を提供することで背中を押したいと考えており、その一環として大阪・関西万博のプロジェクトに参加しているという。専攻にかかわらず、活動を通して気づきを得てほしいと述べた。

ビジネスデータサイエンス学部

ここで講演の内容は2025年4月に新設予定の「ビジネスデータサイエンス学部(仮称)」へ移った。岡田氏は「難しい数学や理念を知らずとも情報活用をする中で気づきを得てさまざまな学習につなげる、アクティブラーニングを中心としたプログラムを考えている」と語った。

岡田氏は最後に、「アクティブラーニングを推進することは本当に難しいことだが、現状の環境もうまく活用しながら試行錯誤を続けていけたらと思います」とまとめて降壇した。

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最後に

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