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「まなびのミライ~学校交流会2024~」開催レポート【パネルディスカッション編】

「まなびのミライ~学校交流会2024~」開催レポート【パネルディスカッション編】

2024年09月20日掲載
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。

2024年8月2日、「まなびのミライ~学校交流会2024~」を開催した。第3回目の開催となる今年度は「学校DXと未来人財の育成」をテーマに東京と大阪の2カ所に会場を設け、オンラインによる同時中継にて実施。全国から88校105名の教職員の皆さまにご参加いただき、大変盛況な会となった。
当日のコンテンツ内容から「特別講演」「パネルディスカッション」を抜粋してお届けする。

~特別講演編 はこちら~

パネルディスカッションでは、イベント初の試みとして、東京会場と大阪会場をつなぎ双方向のディスカッションが行われた。テーマは「未知のテクノロジーに対して教師はどう向き合うべきか」「今後子どもたちに必要となる力は何か」の2つ。それぞれ前半・後半に分けてご紹介する。

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登壇者情報

<モデレータープロフィール>

  • 愛光中学・高等学校
    ICT推進室長
    和田 誠 教諭

<パネリストプロフィール>

【東京会場】

  • 一般財団法人活育財団
    代表理事
    日野田 直彦 氏

  • 城北中学校・高等学校
    教頭
    清水 団 教諭

  • 東奥義塾中学校・高等学校
    学校DX推進室長
    井上 嘉名芽 教諭

【大阪会場】

  • 関西大学
    副学長
    岡田 忠克 氏

  • 日本大学三島高等学校・中学校
    教頭
    大川 幸祐 教諭

  • 樟蔭中学校・高等学校
    中高ICT主幹
    川浪 隆之 教諭

★日野田氏と岡田氏の特別講演の内容はこちら

テーマ①:未知のテクノロジーに対して教師はどう向き合うべきか

パネリストの自己紹介を終えると、和田氏はさっそくスクリーンに二次元コードを映し出した。そのコードを端末で会場の先生方に読み取ってもらい、生成AIに関するアンケートに答えてもらいながら本題に突入した。

モデレーターの和田氏から話題を振られている井上氏(一番左)

和田氏はまず井上氏に話題を振り、未知のテクノロジーへの向き合い方について意見を聞いた。同氏は「東奥義塾では、教師が積極的に生成AIに触れて生徒に使い方を教えています」と回答。ファクトチェックの重要性や個人情報の取り扱いなど、実際に授業でツールを操作しながら教えることが大事だという。井上氏は「少しずつ環境を整えて学校全体で推進するようにしている」と述べた。生徒が生成AIに関して自主的に学習が行えるように家庭教師用のプロンプトを開発し、他教科の先生にも「生成AIを使える生徒」を教える前提で研修を実施していると語った。

そこで和田氏から「先生や生徒の中で、生成AIへの反発はなかったか?」と質問があり、井上氏が回答。「生徒たちは新しいモノに挑戦できるので、とても楽しそうな様子だった。先生方については、よい結果が出たときとそうでないときで明らかに反応が違った。研修時には指導する側のサポートが重要だと実感した」。

続いて指名された大阪会場の大川氏は、「我々の学校では、全体的な取り組みとしては生成AIを導入していません。しかし個人の意見として、真剣に向き合い"戸惑おう"と考えています」と回答。続けて「教育現場では、前例のないことをやろうとすると反対されがちです。3年前にキャッシュレス学園祭を始めたときも同じ状況でした」と述べた。大川氏は、未知のテクノロジーに関しては戸惑う場面もあるだろうが、詳しい人に教えを請いたいと言って発言を終えた。

和田氏からはさらに「過去に戸惑った経験はあるか?」と質問があった。大川氏は9年前にiPadを導入した際の経験を参考に、こう回答した。「これが本当に最適解なのか、ほかによいデバイスはないのか。前例や正解がない中で戸惑いましたが、やったことが筋道や正解となっていくのだと思う。拒むのではなく前向きに挑戦していきたい」。

戸惑った経験について語る大川氏

次に東京会場の日野田氏は、「未知のテクノロジーを使うことが目的ではなく、チャレンジするための手段として捉えるべき。生成AIの主流はChatGPTですが、別のツールを使っても大丈夫。失敗したらまた挑戦すればいいし、『使っているうちに上手くいく瞬間があればいいな』くらいでいいと思っている」とコメントした。

そこで和田氏は「先生方は失敗をよく思わない傾向にあるが、その点はどうか?」と日野田氏に質問。同氏はアクティブラーニングを実施したときの経験から、「どうしてもやりたくない人には無理強いしない。まずは失敗してもいい雰囲気や失敗を応援する環境づくりをしている」と答えた。さらに和田氏が「生徒にはどのように伝えるか?」と質問を重ねると、いかにも日野田氏らしい回答が返ってきた。「生徒には『失敗する人間が一番偉い』と前向きな声がけをします。失敗した人を責めても意味がないですから」。

そして前半の最後に指名された樟蔭中学校・高等学校の川浪氏は、「ほかの先生方がおっしゃったように、チャレンジがすべて。教育の根本は『プロトタイピング』で、失敗ありきで挑戦し仲間と話し合いながら1つの答えに導いていくことは人間だからこそできることだ」と端的に述べ、前半を締めくくった。

後半に差し掛かる前に、和田氏はChatGPTの実演を披露。冒頭に登場したアンケートの結果を打ち込んで分析させると、ほんの数十秒で結果が出力された。続けて「先ほどの結果を受けて、先生方にどのようなアドバイスをすればいいか」と問うと、複数の具体的な対応策が提示された。

テーマ②:今後子どもたちに必要となる力は何か

会場の先生方が生成AIの性能を体感したところで、2つ目のテーマである「今後子どもたちに必要となる力は何か」のディスカッションに突入。和田氏は再び川浪氏を指名した。

2つ目のテーマ冒頭で指名された大阪会場の川浪氏(スクリーン)

川浪氏は「教育はデジタル化しているが、アナログも重視したい。そこに人間らしさが出ます」と切り出した。以前に新任の先生の授業を見学したことを例に「小道具を駆使している方がいて『これやな』と思いました。アナログな活動をスムーズに進めるためにICTがある」と語った。中にはICTに否定的な先生もいるため、アナログも愛しつつバランスを取るべきだと主張。改めて「プロトタイピング」の重要性を強調し、3Dプリンターでのモノづくりを例に「まずやってみる」ことから学びにつなげていると言葉を結んだ。

続いて清水氏は、ChatGPTに質問した結果から「学び続ける力」が最も重要だと感じたと振り返った。「自ら学ぶ意欲を持ち続けてほしいし、学びたいという気持ちを大切にしてほしい」という。学びとは根源的な欲求であり、年齢に関係なく誰しも持っている。しかし何らかの理由で制限されているとしたら、生成AIが殻を破る手助けとなるかもしれない。清水氏は「子どもたちは将来的に生成AIが普通に在る社会での生き方を問われる。ならば最新の技術を学べる環境を整えたい」と言い、DXハイスクールでの取り組みに言及。高校3年生の生徒全員にChatGPT-4o(Omni)のライセンスを配布し、専門家を招いて授業を実施した際の感想を明かした。生徒たちは教師が想像した以上に喜んで生成AIを使いこなしており、清水氏は「すごい時代になった」と驚いたという。

※ ChatGPT-4oとは、Open AIが2024年5月にリリースした最新のAIモデルです。

ChatGPTを使う授業の中でゲームを作り上げた生徒について話す清水氏

次に大阪会場の岡田氏は、生成AIを取り巻く状況は中高と大学で変わらないと述べた。関西大学でも生成AIの活用について議論はあったが、使わざるを得ないという結論が出たという。ただし生成AIは手段であり、何を目的にどんな場面で使うべきか考えながら学生に利用してもらいたいとも付け加えた。例えばレポート作成時にAI頼みになるのは望ましくない。大学としては、学生にAIと対話しながらも自立して決断する力を身につけてほしいと訴えた。

さらに和田氏から「実際に学生がAIを使って作成したレポートを読むと、どう感じるか?」と質問が飛ぶと、岡田氏は「AI任せで書いたレポートには必ずボロがある。記載されている文献が存在しない、文脈にそぐわない専門用語が出てくるなど、目を通せばすぐにわかる。生徒自身を評価できるような課題を考える必要がある」と答えた。

後半の終盤、和田氏は東京会場の日野田氏を指名。同氏は日本の教育で驚いたこととして「同調圧力」の話を引き合いに出した。あるワークショップで「変な動きをするロボットを作りましょう。自由に好きなようにしてください」と指示したところ、子どもたち全員が同じようなロボットを作ったのだという。この事例から、子どもたちの意識を変えていかなくてはならないと警告した。日野田氏はもう一点、コンピューターやAIが決して万能ではないことを念頭に置くべきと持論を展開。機械にも意思があるはずだと私見を述べ、デジタルに寄り添いながら試行錯誤するのが大事だと結論づけた。

60分のパネルディスカッションはあっという間に過ぎ、和田氏が「今回は『マインド』や『学び続ける』『子どもたちに対する考え方』など、新たな視点から再確認できるワードが多く、私自身も興味深く60分を過ごすことができました。」と場を締めくくって終了となった。

~「まなびのミライ~学校交流会2024~」特別講演編 はこちら~

最後に

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