DX推進とAI導入の関係性は?AI導入事例や活用のポイントも解説
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務形態を根本から変革することを指します。現代の急速な技術革新とともに、企業がDXを推進する意義はますます高まっています。DXの推進は、生産性向上や競争力強化、レガシーシステムからの転換、そして働き方改革にもつながるでしょう。
DXの実現には、AI技術の進展が大きく寄与しています。当記事では、DXの基本概念、必要性、AIがもたらす効果について詳しく解説します。
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1. そもそもDXとは?
DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、デジタル技術を活用したビジネスモデルや業務形態の変革を意味します。この概念は、「ITの広まりが人々の生活をよい方向に変化させる」という考えに基づき、教育、医療、政府、製造業などさまざまな分野で広く浸透している言葉です。
企業がDXを進める際は、デジタル技術を用いて著しく変化するニーズに対応し、競争上の優位性を確立することを目指します。DXが成し遂げる変化には、商品やサービスといった企業が提供するものだけでなく、業務体制、組織、企業文化、業務プロセスなど企業活動の変化も含まれます。
1-1. DXが必要な理由
DX推進のための取り組みは、企業の将来にとって重要なテーマと言えます。DXが必要な理由として、以下があげられます。
・生産性を向上させるため
デジタルツールの活用は業務効率を上げ、生産性の向上につながります。デジタルツールによって業務の自動化やスムーズな情報共有が可能となり、作業時間が大幅に短縮されます。人員とコストに余力が生まれ、これまで手が回らなかった業務にもリソースを割けるため、企業の成長を期待できるでしょう。
・企業の競争力を高めるため
デジタル化が進んだ社会の競争を生き残るには、DXを推進し従来の企業体制をアップデートすることが欠かせません。顧客はデジタルツールを活用した快適なサービスの利用を求める傾向が強く、DXを推し進めてニーズに素早く対応する必要があります。またデジタル技術を活用すると、マーケティング精度が向上し、市場での優位性と競争力を高められます。
・レガシーシステムから脱却するため
DXは、過去の技術で構築されたレガシーシステムからの脱却を後押しします。古い技術のままではセキュリティリスクがあったり、業務が非効率的になったりするため、新しいシステムへの移行が必要です。また経済産業省が示唆する「2025年の崖」では、レガシーシステムを運用し続けると2025年以降に年間12兆円の経済損失が発生する可能性が想定されています。DXは2025年の崖問題に対処する助けとなります。
・働き方改革につながるため
デジタルツールによる業務の効率化は、社員への負担を軽減し、職場環境を向上させます。またオンラインで業務を行える仕組みがあると、テレワークやオンライン会議が可能となり、働き方の幅が広がります。より良い職場環境の実現は、社員のエンゲージメントを高め、人員の流出リスクを低減できるだけでなく、交通費や出張費など経費の削減にもつながるため、企業にとってもプラスとなるでしょう。
2. AIとは?
DX推進に関係が深い技術として「AI」があげられます。AIを定義するのは難しいものの、人間の思考プロセスと同じように動作するプログラムを指すのが一般的です。人工知能とも呼ばれ、人間の思考や判断を模倣する技術と言えるでしょう。
近年注目を集めているのは、AIによる機械学習と深層学習です。機械学習では統計学のように、過去のデータからパターンやルールを分析し、データの識別・予測の精度を向上させます。深層学習は機械学習の手法の1つで、パターンを探す際に何に注目するとよいのかをコンピューターが自ら学んでいき、自動的にデータ抽出の精度向上を行える技術です。
さらに、AIには取得したデータから画像や音声などを作り上げる「生成AI」もあります。AIは学習した内容からデータの識別・抽出を行うのに対し、生成AIはデータに基づいてそれに似た新たなコンテンツを作成する技術という点で異なります。
AIによる機械学習と深層学習は、画像認識や音声認識、言語解析などさまざまな分析に活用でき、ビジネスでも有用です。以下ではAIが行えることを詳しく紹介します。
2-1. AIでできること
AIを活用すると、以下のようなことが行えます。
・画像認識
画像または動画データにある人や文字、物を識別できます。特定の文字が含まれる画像を抽出したり人の顔を検出したりすることで、データの検索や認証が可能です。深層学習により、高精度かつスピーディな識別が実現しています。
・音声認識
音の中から人間の音声を認識し、テキストデータへの変換を行います。身近なものだとスマートフォンの音声入力機能があげられるでしょう。議事録作成や問い合わせ内容の記録など、手作業では時間の取られる業務を自動化できます。
・言語解析
言語解析とは、音声やテキストを言語として理解し、内容に基づいた動作を行う技術です。音声認識と言語解析を組み合わせると、音声による自動アシスト機能や文章作成、要約、自動翻訳などが行えます。コンピューターが曖昧な言い回しも正確に理解して正しい返答をするには高い技術が求められるため、今後の発展が期待できる分野です。
・データ処理
データを高速で解析し、精度の高い分析結果を出すことが可能です。人間では処理しきれない量のデータも瞬時に処理し、内容を学習します。たとえば検索エンジンでは、これまでのユーザーの行動からユーザーが望んでいると思われる情報を分析し、検索結果の上位に表示させます。
・数値予測
過去の数値データをもとに今後の数値の移り変わりを予測する技術です。販売実績や備品の消費ペースから必要な商品や部品数を予測し、発注業務に反映できます。適切なタイミングで必要な数の発注が行え、在庫ロスを避ける助けになります。
・異常検知
異常検知では、通常時に蓄積されるデータを学習し、これまでと異なる動きを感知します。人の目では見逃してしまうような些細な変化から故障・不具合の兆候を検知したり、いつもの行動とは異なる動きからクレジットカードの不正利用を識別したりできます。異常にいち早く気づき、トラブルを未然に防ぐのに活用できるでしょう。
3. DXとAIの関係性
AIはDXを推進する手段の1つです。代表的なデジタル技術とも言えるAIは、DXの実現を後押しします。
AI活用がもたらすメリットの1つは、顧客体験の向上です。AIによって顧客のニーズ分析や利便性を追及することによって、顧客の満足度を高められます。たとえば顔認証機能にAIを活用するなら、セキュリティを強化し、ロック解除をスムーズに行えるという新しい価値を提供できます。また、閲覧傾向を分析し好みに合わせた商品を薦める機能によって、よりよい購買体験を味わってもらえるでしょう。
さらに、AIは人間では分析しきれない量のデータを処理し、作業や予測の精度を上げられます。過去から現在まで大量のデータが蓄積されていくと、人の手で管理・処理することが難しくなります。一方で、AIはデータの高速処理を得意としているため、大量のデータも瞬時に処理することが可能です。解析するデータ量や解析頻度が多ければ多いほど学習が進み、人の知識や経験で行うよりも、高度な分析もできるようになり、効果的なマーケティング戦略を練ることができます。
AIは企業の価値を高め、新たなビジネスチャンスを広げるためにも有用です。企業の状況や業務内容にあわせてAIを取り入れることで、生産性を上げて競争における優位性を保つというDX推進の益が得られるでしょう。AI導入とDXは切り離せない関係性にあり、DXを成し遂げるために欠かせない手段と言えます。
4. DXにおけるAI導入の事例
AIを活用したDX推進にはメリットが多く、さまざまな方法で事業にAIを取り入れられます。ここでは、DXの達成につながるAIの活用方法として、5つの事例を紹介します。
4-1. 無人決済システム
無人決済システムの導入によって、これまで従業員が行っていたレジ業務をAIのサポートのもと行えます。
身近な事例は、スーパーやコンビニのセルフレジです。また無人店舗に活用されることもあります。精算は、顧客自身による商品のスキャンやカメラでの画像認証、センサーで商品に付いているICチップを認識するといった方法が用いられています。
少ない人手で店舗を運営できるため、人手不足の解消や人件費のコスト削減につながるでしょう。その分の経費や人員をマネジメント業務に充てられ、生産性の向上も期待できます。
4-2. 需要予測
どのくらいの需要があるのか予測する技術は、農業、飲食店、タクシー業界などさまざまな分野での活用が可能です。
農業では生育から出荷までのデータを管理し、生産量を予測するシステムが開発されています。飲食店では積み重ねたデータから、時間帯別の来店客数やメニューごとの注文数を予測し、食材準備とスタッフの配置に役立てています。
タクシー業界で取り入れられているのは、人口統計データと運行データを用いた乗客数予測です。経験が少なくても需要の多いエリアと時間帯が分かり、先行してタクシーを配置できるため、乗客の待ち時間短縮が見込めます。
予測結果を運営方法に反映させることは、効率的な経営だけでなく、顧客の満足度の上昇につながります。
4-3. 外観検査
AIは製造現場での外観検査でも活用できます。画像解析を活用し、製品の汚れや傷、異物混入の有無を検出します。
人の目視による確認は、判断が確認者の主観に左右される可能性があり、誤判定が生じかねません。その点、AIによる外観検査は一貫した判断を下せます。検査を重ねてデータを蓄積することで、精度も向上していくでしょう。人による作業とは異なり24時間体制で検査できるため、作業の効率化を図れます。
4-4. RPA
RPAとは「Robotic Process Automation」の略で、ロボットによる業務自動化ツールのことです。指示されたルール通りの作業を繰り返すRPAにAIを組み合わせると、指示に対して最適な処理を判断できるようになります。
ある銀行では書類のデータ入力にAI搭載のRPAを活用しています。異なる書式の書類でもどこに必要な情報があるか判断し、自動入力することが可能です。AIによってイレギュラーが発生する業務でもRPAでの自動化が図れます。
4-5. AIカメラ
撮影した画像から人・物の検知や解析を行えるAIカメラは、顧客の動向分析、在庫管理、監視などに用いられます。人件費の削減やセキュリティ強化が期待できるでしょう。
AIカメラを導入した無人店舗では、専用アプリケーションの二次元コードで入退店するとレジを通らずともアプリ内で決済が行われます。カメラが手に取った商品を認識し、自動的に会計する仕組みです。関心を示した商品など店内での行動パターンの分析も可能で、効率よく顧客のニーズを調べられます。
また監視の分野では、農家向けに果実泥棒を検知するAIカメラが開発されています。畑で不審な動きがあった際にリアルタイムで通知され、犯罪の記録はもちろんのこと、予知防犯にも役立ちます。
5. DXでうまくAIを活用するためのポイント
AIを取り入れたからといって、必ず成果をあげられるとは限りません。DXを達成するには、適切な方法でAIを導入する必要があります。ここでは、DX推進を成功させるための注意点として、導入時に覚えておくべきポイントを解説します。
5-1. データを収集・管理する
機械学習をベースとするAIは、ビッグデータがあってこそ力を発揮します。既存の業務システムからデータを抽出し、保持しているデータ量を確認しましょう。少ない場合は、業務時にデータを蓄積するところから始める必要があります。
また量はもちろんのこと、データの質も精度を左右する重要な要素です。たとえば、分析に不要なデータだったとしても、AIは学習すべき情報として取り入れてしまいます。解析結果に影響を与えるため、必要なデータだけをピックアップしなければなりません。データの質を上げ、AIが分析しやすい形にまとめて管理しましょう。
5-2. ロードマップを引く
AI導入の目的を定め、目標を達成するまでのロードマップを作ることが大切です。AI導入には以下の4つのステップを踏むとよいでしょう。
・構想
AIができることを知り、導入で何を成し遂げたいのかビジョンを明確にします。
・設計
どの部分に導入するか、導入体制や予算を考え、必要なデータを準備します。
・検証
モデル構想を練り、本当に価値があるのか限られた範囲で試してみます。AIはすべて完璧にこなせるわけではありません。どの程度の精度があれば業務に活用できるのか基準値を決めておくと、実装に適しているのか判断しやすいでしょう。
・実装と運用
システムを実装し、業務への活用を始めます。定期的に問題がないか評価し、必要に応じて調整を施します。
5-3. AI人材を採用・育成する
AI技術に関する豊富な知識や経験を持った人材は、AIの効果的な運用に不可欠です。機械学習や深層学習などAIの特性を理解し、AI技術をビジネスに応用するノウハウを熟知している人材を確保しましょう。
自社で人材育成する際は、eラーニングやDX研修など教育プログラムを提供し、サポート体制を整える必要があります。外部からAIの専門家を招いて研修やセミナーを実施するのもよい方法です。知識を得た後は、実際にAIを使った実務経験を積んでもらいましょう。
社内から人材を見いだせない場合は、AIに知見の深いアドバイザーやコンサルタントを採用するのもおすすめです。外部のサポートを得ながら徐々に内部体制を整えていけるため、DXを達成しやすくなります。
5-4. セキュリティ対策を行う
さまざまなデータを扱うAIにはセキュリティリスクも存在するため、対策を講じる必要があります。データ分析に用いる顧客情報や画像に含まれる機密情報が、サイバー攻撃により盗まれるかもしれません。また通常とは異なるデータが与えられたとき、システムが誤作動を起こす恐れもあります。
セキュリティ対策を行うためには、リスクやシステムの脆弱性をあらかじめ把握しておくことが大切です。リスクを考慮して使用するデータの取捨選択を行い、また、あらかじめ策定したAI利用時のセキュリティガイドラインに則り運用することで、安全性を保ちながら、AIを活用する環境が実現します。
5-5. トライ&エラーを繰り返す
導入には、トライ&エラーが付きものである点を覚えておきましょう。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)のサイクルであるPDCAを回して、徐々に改善していく必要があります。
特に、AIは運用開始後ある程度データを学習してから本領を発揮します。実装してみると、準備していたデータだけでは期待したような解析が行えないことが判明するかもしれません。小規模から運用を開始し、課題を見つけたなら目標とした精度になるまで改善を重ねるという継続的な努力が求められます。
AI導入の成功には、すぐに結果がでなくても諦めない気持ちと失敗を責めない雰囲気作りが欠かせません。同時に、精度が改善しない場合に撤退を決める条件も決めておくとよいでしょう。
まとめ
AI技術は、データの高速処理や予測分析、画像認識や言語解析など、多岐にわたる分野で活用可能です。AI技術を使いながらDXを進めることで、企業は生産性を高め、新たなビジネスチャンスを創出することができます。
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