サステナブルとは、環境や社会の持続可能性を指す言葉です。人類の経済活動が発展するにつれ、環境破壊や経済格差の増大、性差別といったさまざまな問題が生まれました。環境破壊や経済格差などによって経済活動がダメージを受けることなく、発展を持続可能にするためには、企業が責任ある行動を取る必要があります。
この記事では、サステナブルの意味や注目が集まる背景、企業がサステナブルな社会を目指す取り組みをするメリットや、オフィスでできるサステナブルな施策を解説します。
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1. サステナブルとは?
サステナブルとは、「持続可能な」「持続力のある」などを意味する言葉です。英語の「sustain(持続する)」と「able(できる)」が組み合わさった「sustainable」の日本語読みが「サステナブル」です。
サステナブルという言葉は、経済活動と並行して環境問題や労働問題などの解決に努め、持続可能な社会を目指す取り組みなどを表現する際に使われます。「サステナブルな社会の実現」「サステナブルな商品」といった表現です。
今日の概念で用いられるようになった契機は、国連の環境と開発に関する世界委員会(WCED)が1987年に公表した報告書「Our Common Future」にあります。報告書では、次世代と現世代のニーズをともに満たす開発が持続可能な開発であるという旨を主張しています。
報告書の公表以降、国際的な会議などで持続可能な開発を行うための行動計画を定めるなど、サステナブルな社会を目指そうという認識が世界的に広まりました。こうした流れを受け、社会的責任を果たすためにサステナブルな取り組みをする企業も増えています。
出典:外務省「地球環境」
2. サステナブルに注目が集まる背景
サステナブルに注目が集まる背景には、世界で起こっているさまざまな問題があります。自然環境や労働環境、格差に関わる問題です。以下では、5つの具体的な問題を取り上げ、それぞれの概要を解説します。
2-1. 気候変動の問題
気候変動によって平均気温の上昇や異常気象の増加が顕著になると、人々の健康や生活、食料の生産性などに重大な影響を及ぼします。気候変動の主な要因は、石油や石炭などの化石燃料の使用によって発生する温室効果ガスです。
気候変動で平均気温が上昇すると、干ばつや森林火災、海面上昇や洪水が頻繁に起こるリスクが高まります。発展途上国に暮らす人々は特に影響を受けやすく、気候変動のために自国では暮らせない人々が増加するという予想も出ています。
気候変動から地球を守るためには、温室効果ガスの排出量削減や再生可能エネルギーへの転換に努めるなど、適切で迅速な対策を講じることが必要です。
2-2. 大気汚染・海洋汚染の問題
大気汚染とは、工場の生産活動や自動車や飛行機の利用などを通じて大気に排出される物質が原因となって起きる汚染です。一方の海洋汚染とは、人々が排出したさまざまな物質が海に流れ込むことで起きる汚染です。
代表的な大気汚染は酸性雨や光化学スモッグ、PM2.5です。PM2.5とは、工場や自動車などから排出される極小粒子の汚染物質です。PM2.5は肺の奥深くまで入り込む可能性があり、健康に害を及ぼしかねません。
海洋汚染で特に問題となっているのは、プラスチックごみによる汚染です。プラスチック自体は分解されにくく、海中に長い期間残り続ける傾向があります。このため、生態系や漁業、観光など幅広い分野への影響が危惧されています。
2-3. 生物多様性減少の問題
生物多様性減少の問題とは、異なる多くの生物が共生共存し、成り立っている地球の自然界で生物の種類が減少している状況を指します。人間活動を原因として生物の種類が絶滅するスピードは加速しており、自然状態の100倍から1,000倍のスピードとも言われています。
生物多様性減少が進行する理由は複合的です。例えば、乱獲で生物自体の数が減り、開発によって生物の生息地が奪われれば、生物多様性減少は進行します。外来種の持ち込みによる生態系の破壊や地球温暖化、人による手入れ不足も生物多様性減少の理由です。
生物多様性減少を食い止めるための世界的な対策も進んでいます。野生動物の国際取引を規制する「ワシントン条約」、湿地の保全やワイズユースを求める「ラムサール条約」などです。
2-4. 世界的な経済格差の問題
世界的な経済格差とは、人口増加や旧来の階級制度、紛争や内戦などが原因となって生じる経済的な格差を指します。経済格差は国家間のみならず、1つの国内での地域間、男女間などでも生じている深刻な問題です。
日本ユニセフ協会によれば、2021年には世界の富裕層10%が全体における約76%の富を所有しています。経済格差は教育や健康、政治への参加など経済以外の格差にも通じており、貧しい人々が貧困から抜け出すことは容易でない状況です。
世界的な経済格差を解消するには、国際社会が協力してさまざまな対策を講じる必要があります。具体策としては、貧困層の子どもたちに対する教育の提供や支援、所得の再分配、社会的包摂などです。
2-5. ジェンダー格差の問題
ジェンダー格差の問題とは、宗教や法律、制度の障壁などが原因で起きる、ジェンダー間の雇用や賃金の格差、経済的な不平等などです。ジェンダーという言葉は、男性と女性の性別そのものに加え、性別で定められている社会的な属性や役割、機会などを包括しています。
世界経済フォーラムが2024年に経済や教育、健康などのデータから算出した世界のジェンダー・ギャップ指数によると、男女が完全平等に最も近い国はアイスランドです。日本は、146カ国中118位という結果でした。
男女間の賃金の格差や国会議員の比率といった数値を明確にして格差を改善するジェンダーパリティの活用は、ジェンダー格差解消への対策として近年注目を集めています。
3. サステナブルに関連する言葉との違い
サステナブルに関連して広く使われるようになった言葉がいくつかあります。以下では、「サステナビリティ」と「SDGs」の2つを取り上げ、それぞれの意味やサステナブルとの関係について解説します。
3-1. サステナビリティ
サステナビリティとは、「持続可能性」を意味する言葉で、英語表記は「Sustainability」です。サステナビリティは名詞、サステナブルは形容詞です。例えば、「企業のサステナブルな取り組み」、「サステナビリティに取り組む企業」などと使い分けできます。
近年は「サステナビリティ経営」という概念も浸透しています。企業が環境と社会、経済の観点からサステナブルな取り組みを推進するという考え方です。コーポレートサイトにサステナビリティ経営の具体的な内容を公表している日本企業も少なくありません。
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3-2. SDGs
SDGsとは、サステナブルな社会を実現するための国際的な目標のことです。「持続可能な開発目標」を意味する英語の「Sustainable Development Goals」の略称で、日本語では「エス・ディ・ジーズ」と読みます。
SDGsは、2015年に国連加盟国193カ国が採択した17のゴールと169のターゲット、200以上の指標から構成されている目標です。貧困や飢餓の解消や不平等の是正、環境保護など多岐にわたる目標を2016年から2030年までの15年間で達成することを目指しています。
サステナブルは「サステナブルな取り組み」のように、人々の行動や状況などを形容する言葉として使われ、具体的な内容を示してはいません。SDGsはサステナブルな社会を実現するための手段であり、具体的な目標を示している点がサステナブルと異なります。
4. 企業がサステナブルな社会を目指す取り組みを行うメリット
企業がサステナブルな社会を目指す取り組みを行うことで、得られるメリットは少なくありません。取り組みによって得た数々のメリットは企業の成長にも大きく貢献します。ここでは、さまざまあるメリットの中から4つを取り上げ、それぞれについて紹介します。
4-1. 企業のイメージ・ブランド力が向上する
サステナブルな社会を目指す取り組みを継続していけば、企業のイメージやブランド力は着実に向上します。平和で豊かな社会の持続を望み、持続させるための取り組みに関心を抱いている消費者は多く、サステナブルな活動や経営がポジティブに受け止められるためです。
サステナブルな活動や経営によって企業のイメージが向上すると、世間からの認知度が一層上がります。認知度が上がれば、企業が扱う商品への関心や購買意欲が高まり、ブランド力も向上します。結果として、企業の利益向上につながるという好循環が生まれるでしょう。
4-2. コストを削減できる
コストやエネルギーを削減する・業務の無駄を省いて働きやすい環境を作る、といった企業の取り組みは、サステナブルな社会につながります。
環境保全を意識したサステナブルな取り組みを実践するには、資源やエネルギーの消費量を減らして効率化を図る必要があるため、無駄なコストの抑制・削減ができます。資源の消費量が少なくなれば、資源の廃棄量も少なくなるため、廃棄に伴うコストの削減が可能です。
労働環境の改善策として業務のデジタル化や効率化を推進すると、残業時間は減り、光熱費や人件費などのコストも抑制できます。働きやすい環境下にいる従業員の満足度は高まり、離職率が下がり、新たな人材採用や人材教育などのコストを削減できる点もメリットです。
4-3. ステークホルダーからの評価が上がる
企業が利益のみを追求することなく、サステナブルな取り組みを通して社会的責任を果たしていれば、株主や消費者、従業員といったステークホルダーからの評価が上がります。ステークホルダーからの評価は企業の経営を左右する大きな要素であり、軽視できません。
ステークホルダーの評価が上がり、社会から広く信頼を得ることに成功すれば、財務や株主が安定して堅実な経営が可能となります。さらに、取引先の拡大や商品の売上増加、従業員のエンゲージメント向上など、結果として企業の利益を向上させる要素も付随してきます。
4-4. 新たなビジネスチャンスが生まれる
サステナブルな社会を目指す過程にはさまざまなニーズや課題があり、新たなビジネスチャンスが潜んでいます。サステナブルな取り組みを積極的に行っている企業には、持続可能な社会についての知見を活かして顧客のニーズや課題に対して応えるというビジネスチャンスが舞い込みやすくなります。
サステナブルな取り組みに関わる新たなビジネスチャンスをつかむため、場合によっては自社同様にサステナブルな取り組みをしている他社と協働する状況も生まれるでしょう。新しいビジネスやパートナーシップを通して、企業が成長する見込みもあります。
5. 企業が実践できるサステナブルな社会を目指す施策
企業が実践できるサステナブルな社会を目指す施策は数多くあります。施策を検討する際のポイントは、社会のために貢献するとともに自社を持続的に成長させる施策かどうかを見極めることです。以下では、2つの施策について詳しく解説します。
5-1. 環境保護・社会貢献商品の開発・販売
環境保護や社会貢献ができる商品の開発と販売は、企業が自社の事業を通して実践できる施策です。環境保護や社会貢献を念頭に置いている商品は、サステナブルな社会に関心がある消費者に受け入れられやすく、売上がアップする可能性もあります。また、値段や性能といった差別化が難しい製品でも、環境保護や社会貢献を打ち出していれば新たな価値を付与でき、ブランディングにつながる点もメリットです。
商品の開発と販売は、リサイクル素材や植物由来原料の利用、消費エネルギーの削減など、さまざまな観点から手がけることができます。多くの消費者が購入する商品に成長すれば、商品を販売している企業自体のイメージアップにも結びつくでしょう。
5-2. 事業活動での環境負荷の低減
企業が自社の事業活動を通して環境負荷の低減する施策を実践することでもサステナブルな社会を目指せます。事業活動に必要となる資源やエネルギーを転換したり、削減したりすることで、環境負荷の低減は実現可能です。
例えば、生産工場で使用しているエネルギーを再生可能エネルギーに転換し、使用する水量を削減できれば環境負荷を低減できます。また、営業などで使用している社用車をエコカーや電気自動車に切り替えれば、CO2の削減に貢献します。
企業の事業活動におけるCO2の排出量を測定して年間の排出量を公表するなど、事業活動に関する情報発信を積極的に行うことも、企業が果たせる社会的責任の一環です。
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6. オフィスで実践できるサステナブルな社会を目指す4つの施策
オフィスでサステナブルに注目が集まる背景にあるのは、利潤追求型の経営などが原因で深刻化した環境問題や労働問題です。問題解決に取り組み、環境や労働者を保護することで、サステナブルな社会を目指せると同時に企業も成長できるという認識が高まっています。
以下では、オフィスで実践できるサステナブルな社会を目指す4つの施策を取り上げ、それぞれについて詳しく解説します。
6-1. 省エネ対策に取り組む
省エネ対策として電力使用量をできる限り抑え、CO2など温室効果ガスの排出を削減することは、サステナブルな社会を目指す施策の1つです。電力使用量を減らせれば、オフィス運営に必要なコストを削減できます。
省エネ対策としてまずできることは、照明設備の見直しです。より省エネ性能が高いLED照明へ切り替えるとともに、照明を間引きするなどの方法を取るとよいでしょう。また、季節にあわせて空調設備の温度設定を最適化し、サーキュレータを活用すれば空気の循環が良くなり、省エネ対策となります。
使用していない部屋の照明を切る、省エネモードを活用するなど、従業員に省エネの意識を浸透させることもポイントです。
6-2. 環境に配慮したオフィス用品を採用する
環境に配慮したオフィス用品の採用は、比較的手軽にできる施策です。オフィス家電や事務機器など電気を消費する製品をエネルギー効率の良い製品に切り替えれば、電気料金を削減できるだけでなく、環境にも配慮できます。
また、筆記具や家具を見直し、再生紙やリサイクル素材でつくった家具などを採用するのも、サステナビリティ意識をアピールする1つの手段です。
ほかにも、社内で使用しているカップやストローを従来のプラスチック製から紙製や再生可能素材の製品へと変更する方法もあります。従業員にマイボトルやマイ箸の持参を推奨し、環境に配慮する姿勢を示す企業も増えています。
6-3. ペーパーレス化・電子化に取り組む
ペーパーレス化や電子化の取り組みは、サステナブルな社会を目指すための重要な施策です。紙は木材を原料につくられているため、ペーパーレス化によって紙の消費量を減らせれば、森林の保護につながります。
オフィスで紙を使用していると、プリントや送付、廃棄といったコストと手間がかかるうえ、保存するスペースも欠かせません。ペーパーレス化が実現できれば、紙の使用に伴うコストと手間、スペースが不要となります。
電子化を導入して書類や帳簿などを電子データで管理することで業務の効率化が図れ、従業員の負担を軽減できるというメリットも生まれます。
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6-4. 働きやすいオフィス環境を整備する
従業員の働きやすさを考慮したオフィス環境の整備は、サステナブルな社会を目指す取り組みの1つです。従業員がストレスをため込まず、伸び伸びと働ける環境が整っていると、業務が円滑に行われ、企業への貢献度も高まるでしょう。
具体的な整備としては、従業員のストレスを緩和する植物を置いたり、休憩時にリラックスやリフレッシュできるオフィスカフェを設けたりするなどの方法があります。従業員が自由に働き場所を選べるフリーアドレスを取り入れることもおすすめです。
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まとめ
サステナブルな社会を目指す取り組みを企業が行うと、自然にエネルギーコストを削減できるほか、働きやすい職場環境の実現につながります。さらに、企業イメージやステークホルダーの評価もアップし、新たなビジネスチャンスも生まれるでしょう。
オフィスで省エネ対策に取り組み、環境に配慮したオフィス用品の利用やペーパーレス化の推進、働きやすい環境整備を行うことは、サステナブルな社会の実現の第一歩となります。
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