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【広島開催】 「まなびのシンカ - ICTでシンカする学校のカタチ -」イベントレポート(前編)

【広島開催】 「まなびのシンカ - ICTでシンカする学校のカタチ -」イベントレポート(前編)

2024年11月13日掲載
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。

2024年8月20日、「まなびのシンカ - ICTでシンカする学校のカタチ -」を広島で開催した。

前半は、ルーテル学院中学・高等学校 学校長 鶴山克郎校長と、日本マイクロソフトのパブリックセンター事業本部 GIGAスクール政策室の栗原太郎氏にご講演いただいた。
後半には、近畿大学附属広島高等学校・中学校福山校の鳥生浩紀教諭と広島国際学院中学校・高等学校の田中満彦教諭にも加わっていただき、パネルディスカッションを行った。

当日の様子を前後編に分けてご紹介する。前編は、鶴山校長の「ゼロトラスト導入後の効果と見えてきた課題」および、栗原氏の「マイクロソフトが考える教育改革に対して取り組む大義 教育現場での生成AIの活用と、Microsoft 365 の活用事例」の様子をお届けする。

~ 後編はこちら ~

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登壇者情報

<プロフィール>

学校法人九州ルーテル学院 ルーテル学院中学・高等学校 学校長
鶴山 克郎 校長

ルーテル学院中学・高等学校は「感恩奉仕」をスクールモットーに掲げるキリスト教主義の学校。鶴山校長は、過去は総務部長として入試実務、教務部長として成績処理のすべてを行っていた。校内LANの整備や教員のパソコン調達などIT環境の整備を推進し、2022年より校長を務めている。
学校HP:https://www.luther.ed.jp/

講演1:ゼロトラスト導入後の効果と見えてきた課題

日本マイクロソフト株式会社
パブリックセンター事業本部 GIGAスクール政策室
栗原 太郎 氏

利活用支援の専門家として教育現場の DX を牽引し、 次世代の教育環境をつくるための戦略と実践に尽力。 慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、 聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校教諭(倫理)、日本ヒューレット・パッカード株式会社 IT コンサルタントを経て2020 年より現職。

講演2:マイクロソフトが考える教育改革に対して取り組む大義

講演1:ゼロトラスト導入後の効果と見えてきた課題

ゼロトラスト導入後の効果について説明される鶴山校長

ゼロトラスト導入後の効果について説明される鶴山校長

最初の講演は、「ゼロトラスト導入後の効果と見えてきた課題」をテーマに、ルーテル学院中学・高等学校 学校長 鶴山校長が登壇。

2023年12月に開催された「まなびのミライ in Hiroshima 2023」で講演した、ゼロトラスト環境構築の歩みについて話したあと、ゼロトラスト環境の現状と、古い機材の再活用について講演した。

データ管理はNASの共有フォルダから「SharePoint」へ

鶴山校長はこれまでに、顧問を務めていた弓道部の活動成績処理 や入試業務における成績管理などを担当し、2022年に校長となってからは校内のインターネット環境整備やゼロトラスト化を推し進めてきた。授業プリントのペーパーレス化や電話対応の業務改善などを実行してきたほか、ゼロトラスト実現に向けたセキュリティ環境の構築にも力を入れてきた。

そして現在は、非常勤講師も含めた教職員全員にパソコン、iPadの貸与が完了。以前はNASに設置した共有フォルダを利用してデータの管理や共有を行っていたが、現在は「Microsoft SharePoint」を活用している。「学内に複数あるスキャナからの読み込みが可能になったので、紙の資料もデータで保管できるようになった」と鶴山校長はそのメリットを話す。

今後の課題と展望について説明する鶴山校長

今後の課題と展望について説明する鶴山校長

また、こうしたゼロトラスト化の推進について、約6割の教職員から「業務を効率的に進められるようになった」と好意的な反応があり、「パソコンのローカル環境やUSBメモリにデータが残らないため、紛失などに対する不安がなくなった」という意見もあった。

今後の課題としては、各教科の部署でまだまだ「SharePoint」の活用が進んでいないことを挙げた。現在「SharePoint」のチームサイトの作成は、教務部や進路部など特定の部署が中心となっているが、「各教科で教材の共有をしてもらいたい」との狙いもあり、今後は使いこなせている教員を中心に構成した「ICT推進化委員会」から各教科への説明を予定しているという。

校務の効率化には「BLEND」を導入し、生成AIの活用も検討

ほかにも、校務の効率化にはフルクラウド統合型校務支援システム「BLEND」を導入。2023年度から利用を開始したWeb出願に関しては、システムの移行を実質2カ月で完了し、「入試業務にかかる時間が半減した」という。そのほかの業務についても、当初は2024年10月からの移行を予定していたが、高校3年生の調査書や中学の通知表の作成を早めに行いたいとの学内の要望に応えスケジュールを前倒しし、8月から教務・進路システムが利用できるようになった。

また、生成AIを活用した授業の準備も進めている。文部科学省の暫定ガイドラインを周知したうえで、興味のある教員を中心に、多角的にチェックしながら試験導入を検討している段階だという。例として 「Microsoft 365 Copilot」「ChatGPT」「Gemini」の3つの生成AIチャットツールを挙げ、それぞれの長所・短所を把握したうえで、「プロンプト(対話型のAIツールにおいて、ユーザーが入力する質問のこと)が非常に重要なので、その知識を教員間で共有できるようにしたい」と話した。

当日使用されたスライド(⑤ 生成AIを活用した授業等実践準備)の抜粋

当日使用されたスライド(⑤ 生成AIを活用した授業等実践準備)の抜粋

学校に眠る、古い機材も再利用

ICTを推進するうえで欠かせないのが、パソコンやiPadをはじめとした機材の導入。鶴山校長は、校長室で実際に使っている機材を紹介しつつ、古い機材も有効活用していると話した。

当日使用されたスライド(3.まなびの新化...古い機材の再利用)の抜粋

当日使用されたスライド(3.まなびの新化...古い機材の再利用)の抜粋

例えば、全校集会では、マルチスイッチャーの「ATEM Mini Pro (Blaskmagicdesign)」を使用し、マイクやカメラの切り替えを楽に。配信用の「SurfaceLaptopGo」はZOOM配信などに活用しているという。

今後は、同様の機材を放送室に設置し、生徒や教員が学校情報動画を自由に作成できるようにして、学校SNSを通じて発信する予定。また、「学校パンフレットにも二次元コードを印刷することで、いつでも最新の情報を見られるようにしたい」と今後の展望を語った。

※映像配信時の切り替えやエフェクトを加えるための機器

講演2:マイクロソフトが考える教育改革に対して取り組む大義 教育現場での生成AIの活用と Microsoft 365 の活用事例

教育現場での生成AIの活用について説明する栗原氏

教育現場での生成AIの活用について説明する栗原氏

続いて、「マイクロソフトが考える教育改革に対して取り組む大義 教育現場での生成AIの活用とMicrosoft 365の活用事例」をテーマに日本マイクロソフトの栗原氏が登壇。栗原氏は教員として働いていた頃、教員同士の同僚性を育むことや、業務のICT化に力を入れており、当時の経験が現在に活きていると話す。講演では、実際に教員時代に感じていた課題をICTにより解決した事例や、マイクロソフトの企業文化と教務改革の共通点、生成AIの活用などについて次のように話した 。

電話当番や出張申請など、日々の雑務をICTで簡略化

教員時代、栗原氏が大切にしていたのが、生徒中心の学びを大切にした"探究の教育"。しかし、こうした教育を実現するためには教員同士が協働する時間や、生徒と向き合う時間が必要不可欠だ。そこで、これら2つの時間を生み出すため、日々の雑務の自動化に注力してきた。

例として挙げたのが、出欠連絡などを受ける電話当番だ。栗原氏が当時勤めていた学校では電話当番を持ち回りで担当しており、当番の人は始業時刻より30分早めに来て時間外労働をする必要があったという。「欠席連絡を担任に入れたり、机にメモを残したりとやることが多いうえ、メモを紛失することもあり効率的とは言えなかった」と栗原氏は振り返る。

そこで、「Microsoft Teams」「Microsoft Forms」を導入し、電話当番を廃止。保護者は「Forms」を通していつでも出欠連絡をすることができ、「Forms」に入力された内容は自動的に「Teams」を通して担当教員に直接届く仕組みをつくった。欠席連絡はまとめて「Excel」で出力することもできるようになり、利便性も向上した。

そのほか、出張申請や保護者との面談日程の調整、コロナ禍での体温管理など、さまざまな雑務においても業務改善を実施。こうした"名もなき校務"をアプリなどを使って自動化することで、業務量の削減に成功した。

当日使用されたスライド(電話当番を廃止した仕組み説明)の抜粋

当日使用されたスライド(電話当番を廃止した仕組み説明)の抜粋

生成AIを教育現場でどう取り入れるか

最後に、生成AIの教育への活用の可能性について、「Microsoft 365 Copilot」を例に説明。「Microsoft 365 Copilot」では、Word資料の要約やExcelデータの自動集計、データの多角的な分析、思考の壁打ちなど、さまざまなことができる。

生成 AI を教育に取り入れるとどう学びが変化するのか。今回のイベントで栗原氏は「自分の問いをたくさん出していく」「問いや考えを整理する・構造化する」「個の学びや知見を整理する・興味が出て調べていく」の 学びの循環における3 つのシーンに分け、生成AIがどう学びを変えていくのかを説明していった。

生成 AI を教育に取り入れることは非常に有意義だが、「データが保護されているか」「AIの答え方をどうするか」「どのデータを参照するか」の 3 つは検討してほしいポイントだと栗原氏は話す。「学校で導入する際は『データが保護されているか』をツール選定時に必ず見てほしい。また、AI の答え方に関わる部分では、すぐに答えを出す AI、 回答を共に考える AI、 質問して深掘りする AI など、用途に応じた答え方のカスタマイズが可能であるとした。「参照データは インターネットの情報だけでなく、 百科事典などの特定の事典を参照先に指定することができます。3 つの検討ポイントを考えることでAIは多様な役割を果たすことができる」 と締めくくった。

当日使用されたスライド(生成AIを使う時に考えるべきこと)の抜粋

当日使用されたスライド(生成AIを使う時に考えるべきこと)の抜粋

後編では、パネルディスカッションの様子をお届けする。

~ 後編はこちら ~

最後に

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