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社内ネットワークとは?構築方法や検討事項などを詳しく解説

社内ネットワークとは?構築方法や検討事項などを詳しく解説

2024年11月29日掲載
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。
社内ネットワークとは?構築方法や検討事項などを詳しく解説

社内ネットワークは、企業内で使用される複数の電子機器を相互に接続し、データのやり取りを円滑に行うための重要なインフラです。サーバーやパソコン(PC)、プリンターなどの機器を繋ぐことで、従業員は自身のPCから業務に必要なシステムやメールにアクセスできます。

社内ネットワークを構築する際には、LANやWANの選択、セキュリティ対策、機器の配置など、慎重な計画と設計が求められます。当記事では、社内ネットワークの基本的な仕組みや必要な機器、構築手順について詳しく解説します。

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1. 社内ネットワークとは?

社内ネットワークとは?

社内ネットワークとは、サーバーやPC、プリンターなど、社内で使用する複数の電子機器を繋ぐネットワークのことです。社内システムをとおして、従業員は自身のPCからメールや業務システムなど複数のサーバーにアクセスできます。また、社内ネットワークを通じてインターネットにも接続できることが一般的です。

1-1. 社内ネットワークの仕組み

社内ネットワークを構成する要素には、主にLANとWANの2種類があります。LANとWANの違いは、以下のとおりです。

  • LAN
    LAN(Local Area Network)は、1つのオフィスやワンフロア、学校、一般家庭など、比較的狭いエリアを繋ぐネットワークです。クローズドなネットワークのため、LAN内部でやり取りされるデータは、原則として利用者の意図しない形で外部に公開されることはありません。LANには、ケーブルやハブを利用する有線LANと、機器から無線で親機(アクセスポイント)に接続する無線LANがあります。有線LANと無線LANは、目的や設置環境に応じて組み合わせて使うことができます。
  • WAN
    WAN(Wide Area Network)は、LANよりも広範囲を繋ぐネットワークです。本社と支社など、遠隔地にある拠点同士でネットワークを構築する際によく用いられます。WANを導入する場合、VPNや通信事業者が提供するWANサービスを利用する方法が一般的です。LANと比較すると、導入や運用にコストがかかりやすい傾向があります。

WANは、各オフィスやフロアにあるLANを結びつける存在とも言えます。LANとWANは併用されるケースが多いです。

2. 社内ネットワークに必要な機器

社内ネットワークに必要な機器

社内ネットワークの構築には、主に以下の6つの機器が必要です。

  • ルーター
  • LANケーブル
  • ハブ
  • サーバー
  • アクセスポイント
  • セキュリティ機器

ここでは、各機器の概要や役割を1つずつ解説するため、導入時の参考にしてください。

2-1. ルーター

ルーターとは、異なるネットワークの間に存在し、データを中継することで相互のネットワークを接続する役割を持つ機器です。ルーターには、主に以下のような種類があります。

  • 有線LANルーター:固定回線を利用して、複数のデバイスを有線で接続する。
  • 無線LANルーター:Wi-Fiルーターとも呼ばれ、無線で複数のデバイスを接続する。
  • モバイルWi-Fiルーター:モバイル回線を利用し、持ち運び可能な形でインターネット接続を提供する。
  • ホームルーター:コンセントに電源プラグを挿すことでWi-Fi通信を可能にする。

複数の端末をネットワークに接続する場合、有線・無線問わず何らかのルーターの設置が必要です。有線LANルーターを使う際は、ルーターからLANケーブルやハブを仲介してサーバーやPCを接続します。

無線LANルーターはWi-Fiルーターとも呼ばれ、単独で親機となってスマホやPCなどの複数端末を無線で接続できます。ホームルーターは基本的にコンセントに電源プラグを挿すことでWi-Fi通信を可能にし、モバイルルーターは単体で持ち運べる仕様となります。

無線LANルーターは固定回線を利用するものと、モバイル回線を利用するものが存在します。モデルや価格帯によっても異なりますが、ルーターはデータ中継に加えて、IPアドレスの割り当てやネットワークのトラフィック管理、セキュリティ機能を持つものがあるため、適切な設定とセキュリティ対策が重要です。

2-2. LANケーブル

LANケーブルは、機器同士を有線で繋ぐ際に用いるアイテムです。ケーブルの一方の端をルーターやハブにつなぎ、もう一方の端をPCなどに繋げば、端末をネットワークに接続できます。

近年は、無線LANを使用して社内ネットワークを構築する方法が主流です。しかし有線LANを使用すれば、無線LANのような複雑な設定が不要で通信も安定しやすいため、あえて有線接続を選択するケースもあります。また、有線接続は物理的なアクセスが必要なため、無線LANと比較してセキュリティリスクが低いといわれています。LANケーブルは簡単に抜き差しができるので、状況に応じて社員同士で共有が可能です。さらにLANケーブルにはCAT5e、CAT6、CAT6a、CAT7などの種類があります。それぞれのケーブルは通信速度や帯域幅が異なるため、目的に応じた選定が重要です。

2-3. ハブ

ハブには一般的に「スイッチングハブ」と「リピーターハブ」の2種類があります。これらは複数のLANケーブルをまとめて接続させるための収束装置です。リピーターハブが受信したデータを全てのポートに送信する単純な機能であるのに対して、スイッチングハブはデータを解析して宛先となるポートにのみデータを送信するため、複数デバイスによる同時通信を可能とし、リピーターハブと比較したときネットワーク効率が高いです。そのため「スイッチングハブ」を採用する企業がほとんどです。

ただし、ハブはセキュリティやパフォーマンスの面で限界があるため、より高度なネットワーク管理を行いたい場合、追加のスイッチやルーターの導入も併せて検討することが望ましいです。

2-4. サーバー

サーバーは、社内で使用するメールの送受信を管理するメールサーバーや、データの保存やほかのデバイスと共有をするためのファイルサーバー、ホームページなどのWebサイトコンテンツを提供するWebサーバーなど、さまざまな役割を持ちます。サーバー上に保管したデータは、端末(ユーザー)からの要求に応じて提供される仕組みで、このほかにも、データベースサーバー、アプリケーションサーバー、仮想サーバーなど各種業務に応じた機能を提供しており、ビジネスには欠かせない機器といえます。

サーバーを導入する場合、自社で専用の機器を用意する、外部の業者からレンタルする、クラウドサービス上に構築するなど複数の方法が考えられます。導入時は、予算や目的にあわせて適した方法を選びましょう。

また、導入後は定期的なメンテナンスやバックアップを行い、システムの安定性とデータの安全性を確保することが求められます。

2-5. アクセスポイント

アクセスポイント(AP)は、Wi-Fiなどの無線電波を送受信するために用いる機器です。スマホやタブレットといった、Wi-Fi接続可能な機器をネットワークに接続する際に使用する中継機器になります。

LANケーブルを使ってルーターに有線接続すると、ルーターから送信されたデータを電波に変換して、端末に向けて発信する仕組みです。複数台のアクセスポイントを設置すれば、広いオフィスや異なるフロアなど、比較的距離が遠い場所でも無線通信ができるようになります。

2-6. セキュリティ機器

社内ネットワークでやり取りされる通信データを、サイバー攻撃や情報漏洩の被害から守るためのセキュリティ機器も必要です。具体的には、セキュリティソフトやUTMを使用して、不正アクセスやウイルス感染などへの対策を行います。

UTM (Unified Threat Management)とは、マルウェア対策やファイアウォール、Webフィルタリングや不正侵入検知・防御システムなど、複数のセキュリティ機能をあわせ持つ機器の総称です。社内ネットワークと社外ネットワーク(インターネット)の境界に設置して、外部からの攻撃の監視・防御などを行います。

3. 社内ネットワークを構築するには?

社内ネットワークを構築する際、実際にどのように導入を進めたら良いか分からないケースも多いでしょう。ここでは、社内ネットワークの構築手順を、4つのステップに分けて詳しく解説します。

3-1. 現状把握

最初に、現時点での社内ネットワーク環境を把握して、問題点やポイントとなる情報を洗い出しましょう。現状把握で整理すべき情報の例は、以下のとおりです。

  • ネットワークをつなぐ拠点数
  • ネットワークをつなぐ端末の台数
  • オフィスのフロア数・レイアウト
  • オフィスの利用形態(固定デスク・リモートワークなど)
  • 業務上必要なシステムの内容
  • 将来的に必要になると考えられるシステムの内容
  • 情報セキュリティ対策の方針
  • 現状のネットワーク通信の課題・改善点

一度社内ネットワークを構築すると、システムの追加や手直しには大きな負担がかかるため、初期段階で検討事項をすべて洗い出すことを心がけましょう。現状を正しく把握することが、適切な社内ネットワーク構築のカギとなります。

3-2. ネットワークの設計

現状把握で洗い出した問題点やポイントをもとに、ネットワーク設計を行います。例えば現状の通信環境ではレスポンスが悪い、といった問題点がある場合、機器(ハードウェア)の性能を上げる、帯域幅を増やす、ネットワークを適切に設定する、などの解消方法が考えられます。

また、機器同士の通信ができない場合は、ケーブルの断線や、ポートの故障、同一のIPアドレスが複数機器に割り当てされている可能性、ファイアウォールによって通信がブロックされているといったことも考えられます。固定デスクで作業する社員が多い場合は有線LAN、ノートPCやスマホをよく使う場合は無線LANなど、利用形態を考慮して設計に反映させることも大切です。

ネットワーク構成を考える際は、社員の要望や実現可能性、コスト、通信の安定性、使いやすさなど、多数の要素を考慮してバランスの良い設計を行いましょう。自社での設計が難しい場合は、業者に相談するのも1つの手です。

3-3. ネットワークのテスト

設計をもとに社内ネットワーク構築を終えたら、ネットワークが正常に動作するかどうかのテストを実施します。テスト内容は、主に以下のとおりです。

  • 単体試験:装置単体を見て、正常に動作しているかチェックする
  • 機能試験:使用する機能が正常に動作するかチェックする
  • 正常性試験:複数の端末を接続して通信を行い、ネットワークの正常時の状態をチェックする
  • 障害試験:ネットワーク障害が起きた場合を想定して動作をチェックする
  • 移行試験:旧環境とネットワーク移行後の環境が混在する場合に、移行途中でもネットワークが正常に動作するかチェックする

テストの結果、動作に不備があると判明した場合は、原因を究明して修正を行いましょう。

3-4. マニュアル化

テストを終えたら、運用ルールや管理方法をマニュアルにまとめてください。マニュアルがあれば、システム障害が起きた際の対応が分かりやすくなり、トラブルに早急に対処できるだけでなく、担当者への負担も軽減できます。

マニュアルを作成する際は、システムごとに担当責任者や部署、トラブルへの対処方法を明記するとスムーズです。マニュアルの内容は誰が見ても理解できるものを心がけ、完成したら各部署に配布・周知しましょう。担当者が変わった際は引き継ぎを行い、また、マニュアルは作成して終わりではなく、必要があれば見直しや内容追加、修正を適宜加えることも重要です。

4. 社内ネットワークの構築例

続いて、社内ネットワークの具体的な構築例を紹介します。単一拠点の場合と複数拠点の場合それぞれについて詳しく解説するため、自社の状況を踏まえてチェックしてみてください。

4-1. 単一拠点の場合

単一拠点で社内ネットワークを接続する場合の構築例は、以下のとおりです。

1 ルーターを1台用意する
2 (複数フロアの場合)ルーターを設置した階以外のフロアにスイッチングハブを設置する
3 (複数フロアの場合)各フロアのスイッチングハブをルーターに接続する
4 接続する端末の台数に応じた数のハブを用意する
5 ハブを仲介として、端末をルーターに接続する

単一拠点の場合、基本的にルーターは1台あれば問題ありません。ハブの数は1フロアに2〜3つが目安ですが、接続する端末数により必要なハブの数は異なります。ハブの設置場所は、PCなど有線LANで接続する機器の近くを選ぶのが一般的です。

単一拠点かつフロアが複数に分かれる際は、フロアごとにスイッチングハブを設置しましょう。無線LAN接続を行う場合は、アクセスポイントをルーターに接続してください。

4-2. 複数拠点の場合

複数拠点で社内ネットワークを接続する場合の構築例は、以下のとおりです。

1 拠点ごとにルーターを1台用意する
2 (複数フロアの場合)ルーターを設置した階以外のフロアにスイッチングハブを設置する
3 (複数フロアの場合)各フロアのスイッチングハブをルーターに接続する
4 接続する端末の台数に応じた数のハブを用意する
5 ハブを仲介として、端末をルーターに接続する
6 VPNで各拠点のルーターを繋げ、WANを構築する

拠点間通信を行う場合でも、基本的な設計は単一拠点の場合と同じです。ただし、複数拠点のネットワークを接続するために、WANを導入する必要があります。

WANを構築する際は、専用線や電話回線を使う方法もありますが、近年はVPNを使用するケースが目立ちます。VPN(Virtual Private Network)とは、インターネット上に仮想の専用線を構築し、特定のユーザーのみが利用できるようにしたネットワークです。

5. 社内ネットワークの構築で検討したいポイント

社内ネットワークの構築で検討したいポイント

社内ネットワークの構築や見直しを行う際は、設計のミスを防ぐためにも、事前に検討すべき項目を整理することが大切です。最後に、社内ネットワーク構築を行う際に注目すべきポイントを5つ紹介します。

5-1. 自社に合うネットワーク規格

まずは、有線LANか無線LANか、会社の規模や運営体制に基づいて、自社に合うネットワーク規格を選びましょう。従業員数が多い会社や固定デスクで作業することが多い会社では、通信の安定性が高くセキュリティ性にも優れた有線LANを導入するケースが目立ちます。

一方、従業員が社内のさまざまなフロア、エリアを移動して作業する場合や、導入・管理コストを抑えたい場合は、無線LANの選択を検討するのも良いでしょう。拠点が複数ある会社では、WANの導入も検討しましょう。

また、近年ABWを取り入れる企業も増えてきており、固定席では有線LAN、その他では無線LANで接続する、ハイブリッドなスタイルを取り入れる企業もあります。

5-2. トラフィック量

業務を行う際のトラフィック量も把握する必要があります。トラフィック量とは、社内ネットワークやインターネット接続を行う際、一定時間内にサーバーや機器がやり取りするデータ通信量のことです。

道路の交通量が多くなると渋滞が発生するように、トラフィック量が増えるとネットワーク機器類の処理が追いつかなくなり、通信速度が低下する可能性があります。また、機器のキャパシティを超えたトラフィックが発生すると、通信障害やデータ損失、サーバーの機能停止といったトラブルにもつながりかねません。

過剰なトラフィックの発生によるトラブルを防ぐためには、事前に業務中のトラフィック量を把握し、適切な性能を持つ通信回線や機器を導入することが大切です。

5-3. セキュリティ

社内ネットワークを構築する際は、セキュリティ体制もチェックしましょう。近年、サイバー犯罪の手口は巧妙化しており、対策を怠ると不正アクセスや情報漏洩の被害に遭うリスクが高まります。

会社でできるセキュリティ対策としては、セキュリティソフト・UTMによるウイルス対策や通信の暗号化、ID・パスワードを用いた認証技術の導入などが考えられます。また、PCのOSや利用中のシステムを常に最新の状態にアップデートするよう、従業員に声かけを行いセキュリティ意識の醸成に務める方法も有効です。社内ネットワークの導入時は、考え得るセキュリティリスクを事前に洗い出し、一つひとつのリスクに対して対策方法を検討しましょう。

5-4. IPアドレスの確認

社内ネットワークに使用するIPアドレスは、適切に管理・確認してください。IPアドレスとは、インターネットや社内ネットワーク上で通信機器の所在を識別するための住所のようなものです。IPアドレスには、インターネット上で使われるグローバルIPアドレスと、社内システムなど特定のネットワーク上で使われるローカルIPアドレスの2種類があります。

IPアドレスの設定が必要な機器が複数ある場合、同じIPアドレスを指定すると、機器が正常に動作しません。またIPアドレスは、契約中のプロバイダによる割り当て直しやルーターの再起動などの要因で、意図せず変わることもあります。IPアドレスが変わるとネットワークシステムに接続できなくなるため注意が必要です。

5-5. 外部からのアクセス

従業員がリモートワーク・テレワークを行う可能性がある場合は、外部からのアクセスを想定した準備を行ってください。具体的には、VPNを導入して通信のセキュリティ性を高める、社内ネットワークへのアクセスに関するルールを整備するといった対策方法が考えられます。業務に私用端末を使わない、パスワードは定期的に更新するといったルールを設定して遵守するだけでも、不正アクセスやウイルス感染などの被害を防ぎやすくなります。

まとめ

社内ネットワークの構築には、適切な機器の選定と配置、通信環境の最適化、セキュリティ対策の徹底など、各要素をバランスよく取り入れることが求められます。

また、ネットワークの運用中も定期的な点検やトラブルシューティングを行い、最適な状態を保つことが大切です。企業の規模や業務形態に応じたネットワークの設計を行い、トラフィックの増加やセキュリティリスクに対応できる体制を整えましょう。

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