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建設業界の現状と課題とは?解決するための対策や業界の将来性も解説

建設業界の現状と課題とは?解決するための対策や業界の将来性も解説

2024年12月23日掲載
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。
建設業界の現状と課題とは?解決するための対策や業界の将来性も解説

建設業界は、人口減少や高齢化に伴う人手不足、長時間労働、労働環境の改善などの問題に直面しています。特に、2024年の働き方改革に伴う労働時間の適正化が喫緊の課題となっており、建設業界全体での取り組みが急務です。

当記事では、建設業界が抱える多様な課題を明確にし、解決に向けた具体的な取り組みや労働環境の見直し、デジタル技術を活用した効率化策についても解説します。建設業界の働き方改革に取り組みたい方や、具体的な改善策をお探しの方はぜひご覧ください。

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1. 建設業界の現状

建設業界の現状

日本国内における建設投資額は、1992年のピーク時には84兆円に達したものの、2012年には42兆円まで低下し、同時に建設業者数や建設業就業者数も低下傾向にありました。2012年以降、建設投資額は上昇傾向に転じ、2024年には約73兆円となる見通しとなりましたが、建設業者数・建設業就業者数は微減・横這い傾向が続いています。

出典:国土交通省「建設業を巡る現状と課題」

出典:国土交通省「概要」

最近では、2020年に感染拡大した新型コロナウイルス感染症の影響を受け、飲食業や宿泊業などのサービス業と同様に、建設業界も苦境に立たされました。しかし2021年9月頃から建設業界の需要が高まり、業界全体の市場としては回復傾向にあると言えるでしょう。

一方で、建設業界では建築資材の価格高騰が大きな問題となっています。コロナ後の建築需要の高まりに伴い、木材や鋼材の価格が高騰した「ウッドショック」「アイアンショック」はその一因です。ウクライナ情勢によるエネルギーコストの上昇や、ロシアの経済制裁、中国の需要増加といった国外からの影響が、供給チェーンの混乱や国際的な価格変動を引き起こし、これが建築資材の価格高騰に大きな影響を与えています。

また、近年の急激な円安傾向も要因に挙げられます。特に海外からの資材調達に頼る企業にとっては大きな痛手となっています。

価格高騰による懸念はあるものの、自然災害被害に対する復興事業や防災事業、都市再開発など、建設業界の需要は今後も高いと考えられます。一方で、後継者不足や人手不足、労働環境などの課題を抱えている企業も少なくありません。自社の現状を把握し、課題の解消に向けて行動することで、将来的な企業の発展・成長につなげられるでしょう。

2. 建設業界の2024年・2025年問題とは?

建設業界を取り巻く環境は近年大きく変化しており、特に「2024年問題」「2025年問題」とよばれる課題が注目を集めています。ここでは、建設業界における2024年問題と2025年問題について詳しく解説します。

2-1. 建設業界の2024年問題

建設業界の2024年問題とは、「働き方改革関連法」に基づき、建設業界が2024年4月までに対応する必要があった問題・状況のことを指します。

働き方改革関連法は2019年4月に施行され、企業規模や業界に応じて順次適用が開始されてきました。建設業界では短期間での課題解決が難しいとして5年間の猶予期間があり、適用が開始される2024年4月1日までに下記の課題への対応を考える必要がありました。

【建設業界における2024年問題】

    • 時間外労働の上限規制

働き方改革関連法では、時間外労働時間(残業)の上限を「原則月45時間以内・年360時間以内」と規定されており、違反した際の罰則も定められています。

出典:厚生労働省「建設業」

建設業界では長時間労働が常態化していましたが、働き方改革関連法の適用開始に伴い、労働環境や管理体制の見直しなどさまざまな対応が求められることになりました。

    • 割増賃金の引き上げ

2023年4月より、中小企業においても、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられ、25%から50%へと改定されました。人件費増加に対する対応や、給与管理システムの改修・新規導入などの対応に追われた企業も少なくないでしょう。

2-2. 建設業界の2025年問題

2025年問題とは、2025年に75歳以上の後期高齢者の割合が急増することで生じるさまざまな課題のことを指します。一般的には社会保障費などの社会的負担の増大が懸念されていますが、建設業界では人手不足の深刻化による影響が大きな課題となっています。

国土交通省のデータによると、建設業就業者数はピーク時の1997年から減少傾向が続いており、2024年には1997年の約7割まで減少しています。

出典:国土交通省「建設業を巡る現状と課題」

出典:国土交通省「労働力調査(基本集計) 2024年(令和6年)9月分」

2025年以降は、これまで建設業界を支えてきたベテラン就業者が高齢を理由に離職するケースも大幅に増えるでしょう。

また、少子高齢化に伴う労働人口の減少も、建設業界に大きな影響を与えています。業界を問わず人手不足が深刻化している中、重労働や危険が伴う作業が多い印象で若い世代から敬遠されがちな建設業界は、採用がさらに難しくなる恐れがあります。労働環境の改善によるマイナスイメージの払拭や、デジタルツールの導入による業務効率化など、早い段階で解決に向けた打開策を講じる必要があります。

3. 建設業界が抱える課題

建設業界が抱える課題

建設業界の需要は高いものの、業界を取り巻く環境の変化や業界特有の問題など、建設業界が抱える課題は少なくありません。

ここでは、現在の建設業界が抱える6つの課題について解説します。人手不足や資材の高騰といった厳しい状況の中で企業を発展・成長させるためにも、建設業界・建築業界の現状や抱える課題を的確に把握しましょう。

3-1. 慢性的な人手不足

建設業界が抱える課題の1つとして、慢性的な人手不足が挙げられます。総務省や国土交通省のデータによると、2024年の建設業就業者数は481万人であり、ピーク時の685万人から約30%減少しています。

出典:国土交通省「建設業を巡る現状と課題」

出典:総務省「労働力調査(基本集計) 2024年(令和6年)9月分」

建設業界における人手不足の原因はいくつかありますが、建設業就業者の高齢化や若い就業者の減少、給与や雇用条件、労働時間といった待遇面の課題が挙げられます。円安の影響により、外国人労働者が減少していることも理由の1つです。

先述のとおり、建設業界の需要は近年上昇傾向にあり、これに伴い建設業界全体の業務量も拡大傾向にあります。人手不足の状態では就業者1人あたりの業務負担も大きくなるため、これを理由とした退職者が出ることで、さらなる人手不足を招く恐れも否定できません。

3-2. 高齢化の進行

建設業就業者の高齢化が進行し、若い世代の就業者が十分に増える兆しが見えないことも、建設業界の大きな課題の1つです。

国土交通省 中部地方整備局 建政部のデータによると、2021年時点の建設業界における60歳以上の技能者は全体の約4分の1(25.7%)を占めています。一方、今後の建設業界を支える29歳以下の技能者の割合は全体の12%程度です。

出典:厚生労働省「建設業の人材確保・育成に向けた取組を進めていきます」

出典:国土交通省 中部地方整備局 建政部「建設業における働き方改革」

建設業界内での高齢化の進行は、日本全体の高齢化による影響だけでなく、若い世代の建設業に対する関心の低さも影響していると考えられます。

建設業の仕事に対して、「重労働が多い」「危険な業務が多い」「給料が安い」「休みが取りづらい」という印象を持っている若い世代は少なくありません。建設業界の将来を担う若い世代の減少傾向が続き、高齢の技術者の大量離職が始まれば、建設業界はさらなる人手不足に陥るでしょう。

3-3. 長時間労働

建設業界の労働環境は年々改善されつつありますが、長時間労働が常態化している企業・現場も少なくありません。厚生労働省の調査によると、2024年2月における建設業界の月間実労働時間は162.9時間であり、全産業平均の135.1時間よりも多くなっています。

長時間労働が常態化する理由の1つは、週休2日制の採用が遅れていることです。労働環境の見直しにより4週8休とする企業も増え、2024年2月には月平均出勤日数も19.9日程度となりましたが、4週6休程度とする企業も珍しくありません。また、工期が厳しいことも、長時間労働を慢性化させる要因の1つと言えるでしょう。

出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和6年2月分結果速報等」

出典:国土交通省「建設業:令和5年度調査「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査」の結果を公表」

3-4. 若手育成の遅れ

建設業界の次世代を担う人材の育成が遅れていることも、建設業界が抱える課題の1つです。建設業界で働く若年層の割合は年々減少傾向にありますが、業界全体が次世代に伝える必要がある知識やスキル、ノウハウの量は膨大です。すべての知識やスキルを若手に継承するには、相応の年月が必要となるでしょう。

一方で、建設業界では高齢化が進んでおり、ベテラン技能者の離職ペースが、専門的な知識や熟練したスキルを若手技能者に継承するペースを上回る事態に陥っています。若手技能者への技術継承がうまくいかない現状が続けば、業界全体の品質低下や工期の長期化、労働環境の悪化といった問題の発生も免れないでしょう。

3-5. 建設業界ならではの文化・習慣

建設業界では、1つの建設工事・プロジェクトに複数の協力企業や多くの専門家が関わることが一般的であり、安定した情報共有体制の構築が難しい環境となっています。現状としては、対面での打ち合わせを建設現場で行うほうが効率的であることは否めません。図面など資料の共有も難しいため、紙ベースでの打ち合わせとなることも少なくありません。

また、建設業界では元請企業から一次下請企業、二次下請企業へと続く重層的関係が見られる現場も多く、規模や経営状況も企業によって異なります。積極的にデジタル化を進める企業もあれば、デジタル化への対応が難しい企業もあり、業界全体がアナログ的な経営から脱しにくいことは大きな課題となっています。

3-6. 建設資材の高騰

近年の建設資材の価格高騰も、建設業界が抱える大きな課題の1つです。国土交通省の調査によると、2023年2月~2024年2月の1年間で、セメントの価格は23.3%も高騰しています。同期間で生コンクリートの価格は10.4%、ストレートアスファルトの価格は6.7%も上昇するなど、他の建設資材も同様に高騰しているのが現状です。

繰り返しとなりますが、建設資材の価格高騰の原因はウッドショックやアイアンショック、ウクライナ情勢、円安などが複雑に絡み合っており、日本単独で解決できるものではありません。建設資材の価格高騰は今後もしばらく続くと考えられます。建設コストの増大や利益率の低下、納期や品質管理・施工管理に関する問題などが発生するリスクも高まるでしょう。

出典:国土交通省「最近の建設業を巡る状況について【報告】」

4. 建設業界の課題を解決するための対策

建設業界が抱える課題は多いものの、建設業界の需要は拡大傾向にあり、今後も市場の拡大が見込まれます。建設業界がさらなる成長・発展を遂げるためにも、現在の建設業界が抱える課題に適切に対処し、職場環境や労働環境を改善することが大切です。

ここでは、建設業界の課題を解決するための対策を7つ紹介します。自社が取り組むことが可能な対策からスタートし、業界全体の課題解決に向けて着実に行動しましょう。

4-1. 長時間労働・時間外労働の是正

建設業界の課題を解決するためには、まず、働き方改革関連法の基準にあわせて労働時間を是正することが大切です。労働時間の適正化を図るためにも、従業員の勤務状況を正確に把握し、改善すべきポイントを見つけましょう。

勤務状況を分析した結果、業務量に対して人員が不足している場合は、採用に関する考え方を見直す必要があります。「年齢や経験にこだわらない」「学歴は不問とする」など、広い視野をもって採用活動を進めることを検討するとよいでしょう。また、多様な働き方ができる体制を構築したり、資格取得の支援をしたりするなど、人材の流出を防ぐための対策を講じることも大切です。

4-2. 適切な工期設定・施工時期の平準化

労働時間の適正化を図るためには、適切な工期設定に向けた取り組みが不可欠です。国土交通省が策定した「建設業働き方改革加速化プログラム」では、週休2日で無理のない工事を実施することを目標としています。発注側は適正な工期設定が求められ、受注側は提案された工期のチェックや、短い工期での受注を避けるための対策が求められるでしょう。具体的な対策としては、以下のようなことが考えられます。

  • 受注前に詳細なプロジェクト計画を作成する
  • 過去プロジェクトのデータから適正な工期を算出する
  • 必要に応じて工期を延長できるような柔軟な契約条件を設定する

公共工事においては、繁忙期と閑散期で業務量に大きな差が生じることも課題となっています。国土交通省は地方自治体に対して工期の平準化を求めているため、平準化に際して人材・機材の効率的な活用を検討する必要があるでしょう。

出典:国土交通省「建設業働き方改革加速化プログラム」

出典:国土交通省「施工時期の平準化について」

4-3. 建設DX推進による業務効率向上

近年ではビジネスにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、業務効率の向上や柔軟な働き方の実現を目指す企業も増えています。慢性的な人材不足に悩む建設業界においても、工程や業務に応じたDXの推進を検討し、業務効率の向上を図る必要があります。

デジタル化が難しいとされる建設業界ではありますが、ITツールやICTツールの導入によって効率化できる作業も少なくありません。例えば、以下のような業務でデジタル技術が活躍しています。

  • 建設機械の遠隔操作
  • ドローンによる測量や現場の監視
  • プロジェクト管理システムによる業務状況の一元管理
  • 効率的で最適なバックオフィス業務の実行
  • ビデオ会議ツールを使った現場と事務所での打ち合わせ

一方で、建設業に従事する方の中にはデジタル技術に詳しくない方も多いため、注意が必要です。自社に適したツールの選定と従業員を対象とするデジタル教育の実施が、デジタル化による業務効率向上の鍵となります。

4-4. 労働環境・処遇の改善

建設業に従事する方が十分に能力を発揮できるよう、労働環境や処遇を見直すことも、建設業界が抱える課題を解決するために必要となる対策の1つです。ITツールの導入や工事前の点検、危険予知活動などを徹底し、現場をより安全な状態にした上で、給与体系や人事評価基準などの見直しも行いましょう。

従業員の給与体系や労働環境を適切に整備するためには、国土交通省が推進する「建設キャリアアップシステム」の導入がおすすめです。技能者が保有する資格や経歴などから客観的な評価ができるため、待遇を見直す際の参考になるでしょう。また、各技能者のスキルアップ計画を立てる際の材料としても活用できるため、従業員の定着率向上も見込めます。

出典:国土交通省「【CCUSポータル】建設キャリアアップシステムの概要」

4-5. 建設業界に対するイメージアップ

長時間労働の是正やDX推進による業務効率化、労働環境・処遇の改善と並行して、建設業界に対する社会的なイメージの向上を図ることも重要なポイントです。

建設業界は「危険な仕事が多い」「業務負担が大きい」など厳しいイメージを持たれる傾向がありますが、現在では労働環境の改善に向けた取り組みも多く行われています。マイナスイメージを払拭するためにも、安全性の高い現場の映像公開やSNSを活用した情報発信、インターンシップや職業体験の受け入れなど、建設業界自らが世間に対して積極的に魅力を発信することが大切です。

4-6. 女性・外国人労働者の積極採用

建設業界の人手不足を解消し、労働環境や業務効率を改善するには、多様な人材を積極的に採用することも大切です。

近年の建設業界では、建設機械の自動化やITツールの発展などにより、男性だけでなく女性も働きやすい労働環境が整いつつあります。女性人材が活躍しやすい職場環境の整備を今後も推し進めていくことで、業界全体の活性化が期待できるでしょう。

また、近年増加傾向にある外国人労働者には若い世代の方も多く、若手人材を採用できる可能性が高いという魅力があります。労働意欲が高い方も多いため、関連する法律やルールを考慮した上で人材採用を進めるとよいでしょう。ただし、外国人労働者の採用には言語の壁や文化的な違いといった課題も存在するため、職場内でのコミュニケーションやサポート体制を整えることが重要です。

4-7. インフラシステムの海外展開

現在、日本国内における建設業界の需要は拡大傾向にありますが、将来的には少子高齢化の進行による人口減少が見込まれることから、建設工事や公共事業の縮小が予測されます。一方で、海外ではアジアを中心とする新興国で都市開発やインフラ整備などの需要が高まっている状況です。日本の建設企業にとっては大きなビジネスチャンスと言えるでしょう。

このような状況を受けて、国土交通省は「インフラシステム輸出戦略」を策定・発表し、官民連携でのトップセールスや情報発信を強化しています。政府による企業支援や制度整備支援、人材の育成といった支援策もうまく活用し、相手国のニーズに適した品質の高い建設工事を提供する準備を整えましょう。

出典:国土交通省「建設企業の海外展開」

5. 建設業界の今後と将来性は?

建設業界の今後と将来性は

現在の日本の建設業界は、慢性的な人材不足や人材育成の遅れ、業界全体の高齢化、長時間労働の常態化、建設資材の高騰などさまざまな問題を抱えています。これら建設業界の問題は、働き方改革などの政府の方針や、企業・業界の努力により徐々に改善されつつあると考えられます。

今後は建設会社でもITツールやICTツールの導入や、人手不足の解消に向けた取り組みなどが進み、より多くの技能者が働きやすい環境が整備されることが見込まれます。国内だけでなく、需要の拡大が予測される海外への展開も期待されるため、建設業界は将来性のある業界であると言えます。

まとめ

建設業界では、人口減少や高齢化に伴う慢性的な人手不足、長時間労働、若手人材育成の遅れなど、深刻な課題に直面しています。これらの課題を解決するためには、デジタル技術の導入と活用、従業員の安全性を確保し、働きやすい環境を提供することが重要です。

また、人手不足解消のためには、外国人や女性労働者の積極採用も視野に入れて検討しましょう。持続的な成長を実現するためには、建設業界全体でDXを推進していくことが求められます。

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※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。