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医療DXとは?求められる背景や主な取り組み・メリットを徹底解説!

医療DXとは?求められる背景や主な取り組み・メリットを徹底解説!

2025年02月28日掲載
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。
医療DXとは?求められる背景や主な取り組み・メリットを徹底解説!

近年、医療業界においてDX(デジタルトランスフォーメーション)実現に向けた取り組みがますます進んでいます。医療DXは、医療機関の業務効率化と患者体験の向上を目指す革新的な取り組みです。データの一元管理や事務作業の自動化、オンライン診療の普及など、医療DXがもたらすメリットは多岐にわたります。

当記事では、医療DXの基本概念から、医療DXが求められる背景・導入するメリット・デメリットまで詳しく解説します。医療従事者や経営者にとって必見の内容です。

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1. 医療DXとは?

医療DXとは?

医療DXとは、医療分野においてデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する取り組みのことです。

そもそもDXとは、デジタル技術の導入・活用によって物事の仕組みや社会の在り方、生活の形などを変容させることを指します。

医療DXでは、保健・医療・介護の各段階で発生する情報を統合できるインフラ基盤を導入し、業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図ります。データを活用できる仕組みを作り、より良質な医療やケアを受けられるようにすることが医療DXの主な目的です。

2. 医療DXが求められる背景

医療DXが求められる背景

医療DXは現在注目を集めている取り組みであり、政府も医療DXの促進に力を入れています。医療DXが求められるようになった背景には、加速する少子高齢化への対応や医師の働き方改革による長時間労働の改善など、さまざまな要因が絡み合っています。

ここからは、医療DXが求められる背景を4つ紹介します。

2-1. 少子高齢化による医療業界の人手不足

内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、65歳以上の人口は3,624万人で、総人口に占める割合(高齢化率)は29.0%となっています。

出典:内閣府「高齢化の状況」

少子高齢化が進行すると、医療や介護を必要とする方が増加する一方で、医療を提供する医療従事者は確保が難しくなり、患者と医療従事者との需給バランスが大きく崩れる可能性があるでしょう。

少子高齢化が進む中で、増加する医療・介護ニーズへの対応と質の高い医療提供を両立するために、医療DXの推進が求められているのです。

2-2. 医師の働き方改革による長時間労働の是正

2024年4月に、時間外労働時間の上限規制などの内容を盛り込んだ「医師の働き方改革」がスタートしました。医師の働き方改革は、医療業界で常態化している長時間労働の是正を目的とした制度です。

医療機関は、医師の働き方改革にあわせて労働環境を見直す必要があるものの、従来的な働き方のままでは労働時間の短縮を期待できません。医師の働き方改革を実現するためには、デジタル技術によって生産性を向上できる医療DXが必要です。

2-3. 医療機関の経営悪化

日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会の3病院団体は、会員病院を対象としてコロナ禍から定期的に経営状況調査を実施しています。2024年度調査のなかでは、2022年度と2023年度を比較し、医業赤字病院の割合が74.8%から74.9%と0.1ポイント増加、経常赤字病院の割合は23.0%から53.4%と、30.4ポイントの増加がみられました。

医業赤字 ポイント増減 経常赤字 ポイント増減
2022年度 74.8% - 23.0% -
2023年度 74.9% +0.1 53.4% +30.4

経営悪化による医療機関の倒産・廃業は、地域の医療基盤の脆弱化に直結する問題です。医療DXを推進するとデータ活用によって効率的な経営ができるようになり、医療機関の経営状況が好転する可能性があります。

出典:2024 年度 病院経営定期調査 概要版 -最終報告(集計結果)-

2-4. 新型コロナウイルスの流行

2020年から流行した新型コロナウイルスの影響により、医療現場ではさまざまな課題が顕在化しました。課題の例としては、外来患者の医療情報を収集することの困難さや、院内での情報共有の遅れ、オンライン診療のニーズと普及状況の乖離などが挙げられます。

感染症の流行はいつ発生するかが分からないため、平時から対応を進めることが大切です。医療の見える化やオンラインでの医療提供を実施するための方法として、医療DXの必要性が高まっています。

3. 医療DXの基本的な考え方と令和ビジョン2030の内容

医療DXの基本的な考え方は、医療分野にデジタル技術を導入・活用して、質の高い医療を受けられるように社会や生活の形を変化させることです。

2022年5月には、医療DX推進を目的とした「医療DX令和ビジョン2030」が自由民主党政務調査会により提言されました。

医療DX令和ビジョン2030は、日本の医療分野における情報の在り方を根本から解決するために、以下に挙げる3つの取り組みを同時並行で進めるとしています。

3-1. 全国医療情報プラットフォーム

全国医療情報プラットフォームは、従来は各医療機関や自治体でバラバラに管理されていた医療情報を、ネットワークを通じて共有・閲覧できるようにするシステムです。

具体的にはマイナンバーカードを活用して、レセプト・特定健診情報・予防接種・電子処方箋情報・電子カルテなどの情報を一元化し、より良い医療の提供を目指します。

3-2. 電子カルテ情報の標準化・標準型電子カルテの検討

電子カルテのデータ規格などを標準化する取り組みです。現状では医療機関によって規格が異なるケースが多い電子カルテを、国際標準規格の「HL7FHIR」へと統一し、データの迅速な共有・活用の実現を図ります。

同時に、小規模の医療機関向けに標準型電子カルテの開発を検討しています。標準型電子カルテは、HL7FHIR規格に準拠したクラウドベースで開発される予定です。

3-3. 診療報酬改定DX

診療報酬改定DXは、定期的に行われる診療報酬改定への対応作業をデジタル化して、業務負担を軽減する取り組みです。

具体的には、すべてのシステムベンダーが利用できる「共通算定モジュール」を作成します。診療報酬改定でシステム変更が必要になった際は当該モジュールのアップデートを行うだけでよく、医療関係者やベンダーの負担を大きく軽減できます。

4. 医療DXの取り組み

医療DXは政府の取り組みだけでなく、医療機関・医療従事者側が主体となって行える内容もあります。

以下では、ペーパーレス化の推進・オンライン予約・問診・診療といった医療DXの主な取り組みを4つ紹介します。

4-1. ペーパーレス化の推進

ペーパーレス化の推進

電子カルテの導入やIT機器の導入によってペーパーレス化を推進することで、医療DXの基盤を構築できます。

カルテや問診票などの書類を紙媒体で作成している医療現場では、情報のデータ化がなかなか進まず、効率的な情報共有ができません。ペーパーレス化を推進することで情報のデータ化が進み、情報共有・活用もできるようになります。

また、紙書類の作成・管理や保管スペースの確保にかかっていたコストも削減できます。

4-2. オンライン予約・問診・診療

患者が医療機関を利用する際の予約をオンラインで行えるようにすることで、電話対応の必要がなくなりスケジュール管理がしやすくなります。

また、ウェアラブルデバイスや家庭用のIoT医療機器を用いた問診・診療のオンライン化も可能です。自宅療養や遠隔地在住の患者が通院不要になり、簡単に医療サービスを利用できるようになります。

オンライン予約・問診・診療は、感染症流行時における医療従事者の感染リスクを低減するためにも有効な取り組みです。

4-3. ビッグデータの活用

医療機関には診療記録・検査情報・処方箋情報など、患者にかかわるさまざまなビッグデータが集積されています。医療DXを実現するにはビッグデータの分析・活用が欠かせません。

ビッグデータの活用により、病気の早期発見や健康管理のサポートができます。また、新薬開発や治療・介護計画の設計にも役立てられます。

4-4. 人工知能(AI)の活用

近年著しく進歩している人工知能(AI)は、医療DXの分野においても急速に導入・活用が進んでいる技術です。AIを活用した画像診断・簡易問診サービスなどにより、診断の精度向上や医療サービス効率化が実現できます。

また、人工知能の活用によって業務の効率化・自動化もできるようになります。 例としては医師の電子カルテの入力サポート、診断書、同意書のAIによる作成サポート、看護師の申し送り事項の音声入力などにより重要な業務に集中できるようになるでしょう。

5. 医療DXのメリット

医療DXの実現に向けた取り組みを推進することで、医療機関や医療従事者はさまざまなメリットを得られます。

5-1. 医療現場の業務が効率化する

医療DXを推進するなかで、各種情報がデジタルデータ化されれば、情報の一元管理が可能になります。予約管理・書類管理といった事務作業の自動化や、問診・診療などの医療提供のオンライン化ができるようになり、医療従事者の業務負担軽減と、業務効率化が期待できます。

従来は人力で行っていた紙の書類作成もデジタル化することで、業務負荷軽減、業務効率化のほか、人的ミスの発生を防げるメリットもあります。

5-2. 人的・財政的コストの最適化と削減ができる

医療DXを推進する中で業務が効率化されることにより、単純作業に割く人手を減らし、重要な業務に人材を配置するなど、人的コストの最適化ができるようになります。

また、デジタル化により紙媒体の書類作成頻度が下がれば用紙代・印刷代といった費用を抑えることにつながります。施設の設備についてデジタル化を進めれば、空調設備や電気・ガスの使用時間など適切な管理もできるようになり、財政面におけるコスト削減もできるでしょう。

5-3. BCPを強化できる

医療DXの導入によって、医療機関のBCPを強化できます。BCP(ビーシーピー・事業継続計画)とは、自然災害などが発生したときにも事業の継続・早期復旧ができるようにするための計画です。

医療DXではクラウドの医療システムを導入したり、データのバックアップを外部に保存したりします。医療機関がある地域に災害などの緊急事態が発生した場合も、クラウド上にある医療システムやデータは無事であるために、医療サービスの提供や早期復旧を図れます。

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5-4. 患者により適切な治療を提供できる

医療DXには、患者により適切な治療を提供できるメリットもあります。医療DXの一環として、各種情報を電子データ化すると患者のカルテ・問診票といった医療データが一元管理できるようになり、診療や治療に役立てられるためです。

また、医療DX令和ビジョン2030において取り上げられている電子カルテ情報の標準化が実現・普及すれば、他院との情報共有や業務連携も円滑に行えます。他院への紹介や転院も含めて、患者にとってより適切な治療を提案できるようになるでしょう。

5-5. 患者の医療体験向上が期待できる

従来の医療提供体制では、患者が医療機関を利用する際は電話予約や受付予約を行い、診察の順番が来るまで待合室で座って待つことが普通でした。

しかし、医療DXを実現し、医療提供体制を大きく変えられれば、患者の医療体験の向上が期待できます。例として、オンラインの診療予約システムや問診システムを導入すれば、患者が電話予約や受付予約をしたり、待合室で長時間座って待ったりする必要がありません。スムーズな受診が実現できて、利用患者の満足度向上につながります。

また、タブレットを用いて画像データなどを見せながら患者に説明を行うことで、患者は医師や看護師の説明の理解度が上がり、信頼感の醸成や満足度の向上にも寄与するでしょう。

5-6. 予防医療の実現に役立つ

予防医療とは、病気の罹患を防ぐために行われる医療のことです。高齢者人口が増えている日本社会では、病気になってから治療を始める従来の医療よりも、そもそも病気を未然に防ぐ予防医療が重要であると言われています。

具体的には、以下のような取り組みが予防医療にあたります。

取り組み 詳細
健康診断、検診 定期的な健康診断や特定の病気に対し検診を行い、早期発見と早期治療を目指す
予防接種 感染症予防のためワクチン接種をし、病気発生を防ぐ
生活習慣改善 食事、運動、睡眠など、生活習慣を見直し健康維持のための指導を実施する
健康教育、啓蒙 長期のリスクや予防方法についての情報発信を行い個人が自身の健康管理ができるようサポートする

医療DXを推進する一環としてオンライン診療プラットフォームや電子カルテなどのICTツールを導入すると、遠方の患者でも負担を軽減しつつ定期的な健康チェックができたり、患者の既往歴や検査データなどの各種情報を効率的に収集・分析できたりと、予防医療の実現に役立ちます。

6. 医療DXのデメリット

医療DXはメリットばかりではなく、医療機関や利用する患者にとっていくつかのデメリットが発生する可能性もあります。

医療DXに関心がある方は、以下に挙げる医療DXのデメリットも把握するとよいでしょう。

6-1. 導入コストがかかる

医療DXを進めるにあたっては、電子カルテや管理システムといったデジタルツールの導入コストがかかります。医療機関の経営悪化が課題となる中で、ツールの導入コストがさらに経営を圧迫する可能性がある点がデメリットです。

導入コストの懸念がある医療機関は、政府や自治体が整備する補助金制度などの利用を検討しましょう。例として、電子カルテの導入で利用できる補助金には「IT導入補助金※」があります。

※ 2024年8月時点で最新の情報です。なお、KDDI まとめてオフィスはIT導入補助金に関わるご相談は受け付けいたしかねます。専門家や専用の問い合わせ先へ、直接ご相談ください。

出典:IT導入補助金2024「トップページ | IT導入補助金2024」

6-2. 医療従事者にITリテラシーが求められる

医療DXで導入したツールを活用するためには、医療従事者にITリテラシーが求められます。ITリテラシーとは、IT技術についての知識やツールを操作できる能力のことです。

ITリテラシーは個人差があり、ツールを導入してもすべての医療従事者が問題なく活用できるわけではありません。特に医療分野で使用するデジタル機器は特殊なツールであることが多く、現場は操作に慣れるまでの負担がかかります。

医療DXを推進する医療機関では、医療従事者へのIT教育を行うとともに、IT人材の確保も必要となるでしょう。また、外部の専門家に入ってもらい、伴走してもらうという方法もあります。

6-3. セキュリティ対策が求められる

医療DXによってカルテ・レセプトなどの患者情報を電子データ化すると、データの漏えい・盗難や不正アクセスなどのセキュリティリスクが発生する懸念があります。セキュリティリスクを低減して重要な情報を保護するためには、セキュリティ対策が不可欠です。

導入するツール・システムを選ぶ際は、セキュリティ性の高さを重視しましょう。二要素認証によるログインやIPアドレス制限・ログ監視、データの暗号化など、複数のセキュリティ対策が実施されている製品を選ぶことが大切です。

6-4. デジタル格差が生じる

医療機関を利用する患者の中には、オンライン上でのサービス利用やデジタル機器の入力操作に不慣れな方もいます。医療機関が医療DXの実現に向け、システムのクラウド化や、電子データ化をすることで、患者間でのデジタル格差が生じて、医療機関を利用しにくくなるケースもある点に注意してください。

医療機関は医療DXを推進するにあたり、デジタル技術が苦手な方でもなるべく使いやすいツールを選定したり、患者向けの利用サポートを充実させたりするなど、利用する患者側への配慮が必要となります。

7. 医療DXの始め方は?

医療DXを推進する際は、まずはDXの実現によって達成したい目標を設定した上で現状を分析し、目的に合ったテクノロジーやサービスを選ぶ必要があります。

以下では、医療DXで導入するテクノロジー・サービスの例を2つ紹介します。

7-1. スマートデバイスを導入する

医療DXを実現する方法の1つに「スマートホスピタル」があります。

スマートホスピタルとは、IT技術を活用して医療サービスの質向上や医療の業務効率化を目指す試みのことです。スマートフォン・タブレットといったスマートデバイスの導入も、スマートホスピタルの取り組みとして挙げられます。

スマートデバイスを導入することで、医療従事者同士の情報共有や業務の可視化ができます。さらに、スマートデバイスにナースコール連携や、電子カルテへの音声入力アプリ、院内外からの電子カルテの閲覧アプリ、インカムアプリなどを追加することで、より業務の効率化や、コミュニケーションの活性化が期待できます。

7-2. クラウドを導入する

医療機関が導入するクラウドとは、患者情報や業務データなどのさまざまな情報を集約し、一元管理できるクラウドサービスのことです。

医療機関はクラウドの導入によって、データの管理や業務への活用ができるようになります。デジタルツール、デジタルシステムの導入にあたって、サーバーなどの設備を独自に構築する必要がなく、コストを抑えて医療DXを推進できる点がクラウドの魅力です。また、医療機関は患者の個人情報を多く扱うため、セキュリティが非常に重要です。クラウドサービスを選定する際は、コスト面のみならず、セキュリティ要件を満たすものかを確認する必要があります。

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8. DX化は医療現場だけでなく教育現場でも推進

政府は医療業界における医療DX推進とともに、教育現場においてもDX化の推進を行っており、デジタル技術を活用した学習などが実施されている状況です。

8-1. NEXT GIGAによるさらなるDX化へ

文部科学省が推進している教育現場のDX化構想が「NEXT GIGA(ネクストギガ)」です。

NEXT GIGAは、子どもたちへの1人1台端末の提供と、高速かつ大容量の通信ネットワークを整備するという「GIGAスクール構想」の第2段階です。ICT教育をさらに促進して、子どもたちがデジタル端末を日常的に活用できるようにするとともに、校務のDX化によって教員の業務負担の軽減を目指します。

KDDI まとめてオフィスでは、NEXT GIGAへのサポートを一貫して行っております。詳しくは、導入検討・見積相談【総合】フォームからお問い合わせください。

まとめ

医療DX(デジタルトランスフォーメーション)は、医療業界にデジタル技術を導入して業務効率化・コスト削減・患者サービスの向上を図る革新的な取り組みのことです。医療DXには、効率的なデータ管理や事務作業の自動化、コスト削減に加え、患者への治療提供の質向上・BCPの強化・予防医療の推進など多くのメリットがあります。

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