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生成AIを教育に活用する方法とは?ガイドラインや導入メリットを解説

生成AIを教育に活用する方法とは?ガイドラインや導入メリットを解説

2025年03月31日掲載
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。
生成AIを教育に活用する方法とは?ガイドラインや導入メリットを解説

急速に発展する生成AIは、教育現場にも大きな変化をもたらすツールです。今後は、公教育をはじめとして、学習塾や企業研修などのさまざまな教育の場へ導入が進むと予想されています。

一方で、生成AIは発展途上の技術であり、課題が存在するのも事実です。そのため、文部科学省は生成AI活用のガイドラインを定め、生成AIの利活用という手段と生徒の資質向上という目的が逆転しないよう呼びかけています。

この記事では、生成AIを教育現場で活用するためのメリットや、具体的な活用方法、および利活用している事例を解説します。

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1. 生成AIと教育の関係

生成AIと教育の関係

現代社会では生成AIが急速に普及しており、教育分野においてもさまざまな利活用が可能です。現行の学習指導要領は、社会におけるAIの存在を前提として、デジタル時代に対応するための資質や情報活用能力を備えることを目指しています。

そのため、国はAI活用に必要な論理的思考力や課題解決能力などを育てる目的で、教育現場での積極的な生成AIの活用を推奨しています。生成AIを教育に取り入れると、一人ひとりの生徒に合った学びの支援に役立てられるだけでなく、教員の業務を効率化することも可能です。

現在、公教育機関ではパイロット校による生成AI導入を限定的に開始しており、成果・課題の検討段階にあります。また、民間の教育機関でも公教育にあわせて、生成AIを業務に取り入れる法人が増えています。

出典:リーディングDXスクール生成AIパイロット校(令和6年度)

1-1. 文部科学省が掲げる生成AI活用のガイドライン

教育現場における生成AIの活用には課題やリスクも少なくありません。そのため、教育機関は文部科学省が提示するガイドラインに沿ってAIを活用することが求められます。

学校教育における生成AI利活用について、ガイドラインでは以下のような考え方を基本とします。

  • 生成AIはあくまで参考の1つであり最適解ではないため、最終的には人間による判断と、成果物への責任が求められる(人間中心の原則)
  • 生成AIの利活用は児童生徒の資質と能力の育成が目的であり、生成AIの利活用そのものが目的とならないよう注意する必要がある(児童生徒の学びと生成AI)
  • 教師は一定の生成AI活用リテラシーを身につけた上で児童生徒の指導にあたる必要がある(教師の役割と生成AI)
  • 教育現場に関わる生成AI関連事業者には、学校の実態や希望を把握しながら責任ある形で事業に向き合うことが期待される(生成AI関連事業者に期待される役割)

出典:文部科学省 初等中等教育局「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」

出典:文部科学省 初等中等教育局学校デジタル化プロジェクトチーム「初等中等教育段階における生成AIに関するこれまでの取組み」

2. 生成AIを教育現場に活用するメリット

生成AIを教育現場に活用するメリット

生成AIを教育現場に活用すれば、多様なメリットを得ることが可能です。生成AIは生徒だけでなく学校教員や講師にとっての利点もあり、教育現場にさまざまなプラスの影響をもたらします。

生成AIを教育現場に活用するメリットのうち、いくつかを紹介します。

2-1. 個々の生徒の理解度や興味に合った内容を提供できる

生徒が生成AI技術を利用して学習に取り組めば、AIにより一人ひとりの学習状況や興味・関心に寄り添ったコンテンツを提供することが可能です。

生成AIはドリルなどから生徒の学習データを分析し、個々のペースに合った学習コンテンツを選定できます。自分のレベルや好みに合う学習計画の作成と教材の提供により、生徒の興味を持続させ、より効率よく学習できる環境を整えやすくなるでしょう。

また、生成AIツールによってパーソナライズされた学習体験を続けることで、生徒の学習意欲をアップさせる効果も得られます。

2-2. データ活用により教育の質が上がる

生成AIは生徒の学習ペースや習熟度を蓄積しているため、データ分析の結果を個別指導やスタディ・ログ作成に生かせるのもメリットの1つです。

生成AIが収集したデータから生徒一人ひとりの得意・不得意が分かれば、教員による個別指導もよりきめ細やかに、かつ適切な対応が可能となります。また、データを活用して学習履歴・学習評価・学習到達度などのスタディ・ログを作成して可視化することで、教育プログラムの改善や最適な学習環境の提供が叶います。

2-3. 教育に関わる業務を効率化できる

生成AIは生徒の学習活動や指導に直接活用できるほか、教育に関わるさまざまな業務を効率化できる点も大きなメリットです。生成AIの中には、既存の表計算ソフトや業務改善ツールと連携して、業務の自動化に役立つプログラムを作成したり、表やデータを生成したりできるものもあります。

生成AIを活用して出席管理や採点などのルーチン業務を自動化できれば、教師や講師の業務負担を軽減できます。限られた業務時間の中、校務や単純作業に費やす時間を短くし、教師や講師はAIに任せられない部分の仕事に集中して時間を充てられるようになります。これにより、業務効率化と生産性の向上が期待できます。

教師の業務負担が軽減されることで、授業の質の向上や、より生徒に寄り添った指導・対応につながるでしょう。

3. 生成AIの教育現場における活用方法

生成AIの教育現場における活用方法

生成AIはさまざまな業務に活用することが可能です。生成AIにより学校や学習塾の業務が効率化されれば、教師・講師の負担軽減にもつながります。

ここでは、教育現場における生成AI活用方法について詳しく解説します。

3-1. 校内向けの文章作成

生成AI利用により、校内向けの資料・文章の作成をスムーズに進められます。

生成AIはフォーマットが定まっている文書の作成を得意とするツールであるため、特に報告書や議事録を作成するのに向いています。また、音声文字起こしツールと組み合わせると、録画・録音から議事録を文書化し、さらに内容を要約することも可能です。

3-2. 授業準備の効率化

生成AIは、授業の計画や時間配分、シラバス作成のほか、さまざまな授業準備に活用できます。

たとえば授業でグループワークを実施する場合、生成AIがグループワークの設計やテーマに関するアイデアを出してくれます。また、グループワークの実施後は生徒の感想をまとめたり、振り返りをもとにしてテストのたたきを作成したりすることも可能です。

そのほかにも、授業内で行う問いの作成や、生徒の回答のシミュレーション、授業で使用する教材の作成などにも生成AIを活用できます。

3-3. 保護者などに向けた各種お便りの下書き

生成AIは学校や塾から保護者・生徒に向けた情報発信の文書作成や下書きにも向いています。

学校で使われる保護者や生徒向けのお便りとして挙げられるのは、学年だより・学級だよりや給食だより、行事案内などです。また、塾では各種お知らせや授業内容の案内、講習のお知らせなどをお便りとして配布することもあります。

生成AIでお便りのたたき台を作成すれば、教師・講師が一から文面を作成する手間を省くことができ、業務負担を減らしてスムーズにお便り作成を終えられます。

3-4. 思考を整理するためのサポート

生成AIを業務上の相談相手として活用すると、思考を整理しながら作業を進めるためのサポートに役立てることが可能です。

多くのアイデアに触れたいときや、自分の考えをまとめたいときは、生成AIを活用することで作業がスムーズになります。たとえば、生徒向けのアンケートを作成する・学生の興味を引くための簡単な問いかけを考えるなどのシーンで活用すれば、生成AIがアイデアを提供してくれます。

生成された回答をそのままで使用するのは難しいケースもありますが、生成AIからの回答を糸口にしながら、やり取りを重ねることで思考を整理することができ、教える側のパフォーマンス向上が期待できます。

4. 生成AIを教育現場に取り入れる実践例

近畿大学附属広島高等学校・中学校福山校

近畿大学附属広島高等学校・中学校福山校では、生成AIを生徒の評価に活用して業務効率向上・評価の最適化を実現しています。

同校の数学教師は生徒の評価方法に悩んでおり、生成AIを導入して評価作業を進めました。データ分析により個々の課題を明確化したことで生徒も納得できる評価を示せた上、評価業務にかかるスピードは約1.5倍アップしました。

広島国際学院中学校・高等学校

広島国際学院中学校・高等学校は、プログラミングの授業における意見交流を通じて生成AIを利活用しています。

生成AIは意見交流の参加者として意見を出す役割を担っており、より個性的な意見がでるよう細かく設定されています。生成AIの意見から生徒たちが刺激を受け、生徒自身も豊富な意見を出すことで、結果として議論がさらに深まるようになりました。

まとめ

生成AIを教育に取り入れることで、学習の個別最適化や教員の業務負担の軽減など、多方面に恩恵が期待できます。一方で、導入の際にはプライバシーの保護や著作権の取り扱いなど、デジタル社会ならではの留意点を踏まえる必要があります。

教員自らリテラシーを高め、教育目的や学習内容に応じて、主体的かつ適切に活用する姿勢が重要です。さらに、生徒への情報モラル教育やAI活用の意義を理解させる指導が加わることで、生成AIの導入効果はより高まるでしょう。

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